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【がん治療Q&A】2年前に母ががんと診断。治療法がないと言われるのに、検査を受け続ける意味ってあるの? [mi-mollet]

2018年10月14日(日) 14時10分配信

マコさんからの質問



Q. 治療法がないのに検査を受け続ける意味ってあるのでしょうか? 



80歳になる母ですが、2年前に肺がんという診断を受けまして、半年に1度検査を受けています。結果を伺うたびに、「これ以上悪化したとしても手術もできないし、治療法はとくにありません」と先生からお話があります。先日も同じようなお話を聞いた帰り道に、母が「治療法がないなら検査を受ける必要はないんじゃないかなぁ」と言ってきました。私も確かにそうだなぁと思ってみたり、現在の症状を知ることも大事なのかなぁとも思ってみたり。返事ができませんでした。おそらく検査の度に現在がんであること、治療法がないことを告げられるのが、自覚症状がないだけに精神的にしんどいのではないのかと思います。どのように母に返事をしてあげるべきでしょうか。(49歳)

特別ゲスト 樋野興夫先生の回答



A. 大切なのは正論ではなく配慮。 「見守っている」という気持ちを伝えてください。



検査を受けてがんであることが分かった、でもいろいろ問題があって治療法がない、だけど検査は続けましょう、という状態でおられるのですよね。マコさんのお母様のようなケースは、実は非常に多いのです。治療法がなくとも現状を知ることは大切です。が、それ以上に「治療できないなら検査は必要なの?」と聞かれたときどう答えるか、そちらのほうがもっと大切な問題なのです。

がん治療というのは日進月歩です。マコ様のお母様がこれまでどのような治療をされてきたのかは分かりませんが、おそらく新しい薬を用いたとしても効果が見られない、そこで医師は「せめて検査だけでも」と伝えているのが本音でしょう。しかし医療に携わる身からしますと、「来てください」と向き合い続ける意思がある医師というのは、まだ良いと思うのです。「治療法がありません」とだけ告げて患者さんを放り出す医師も少なくありませんから。

ですが患者さんにとっては、毎回「治療法がありません」と突きつけられるのはショックがありますよね。検査を受けることに何の意味があるのか……と。マコさんのおっしゃる通りで、その問いに答えはないのです。私はこのようなとき、「曖昧なことには曖昧に答える」ことを信条としております。グレーゾーンの問いに確信を持って答えられるのは、愛しかありません。「アナタのことを見捨てない」「大切に思っている」ということを伝えられれば、相手はその思いに気づいて「検査を受けよう」という気持ちになることでしょう。

大切なのは、「正論より配慮」なのです。マコさんのお母様の問いに正論で答えれば、おそらく「お母さんの好きにしたらいいよ」という言葉になるでしょう。ですがこういった正論は、相手を傷つけることもあります。そうではなく、「どんな選択をしても私は見守っているよ」という思いを伝えれば、お母様の気持ちも大きく違ってくることでしょう。子どもというのは時として、「ああしなさい、こうしなさい」と余計なお節介を焼きがちです。そうではなく、見守るという“偉大なお節介”を焼いてほしいと私は思うのです。

PROFILE

樋野 興夫(ひの おきお)1954年、島根県生まれ。医学博士。順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座教授。一般社団法人がん哲学外来理事長。医療現場と患者の間にある「隙間」を埋めるべく、全国各地で講演をおこなうなど精力的に活動している。著書は『がんばりすぎない、悲しみすぎない。「がん患者の家族」のための言葉の処方箋』(講談社)、『がん哲学外来へようこそ』(新潮新書)など多数。

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