松本千登世「凜々しさ×柔らかさ=女力」 [VOCE]

2018年09月01日(土) 21時10分配信

文/美容ジャーナリスト・エディター松本千登世

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。彼女の美容エッセイから、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。
凜々しさ×柔らかさ=女力

講談社VOCE

凜々しさ×柔らかさ=女力

美しい大人たちが集うヘアサロンとして定評のあるAMATA。オーナーの美香さんは艶やかな黒髪の持ち主で、美髪の秘密は言わずもがな、ひとりの女性としてスキンケアから暮らしぶりまで、そのずば抜けたセンスは、つねに注目の的。何よりトップレベルのサロンを作り上げるプロデュース力は「究極の『女将』」と称されるほどで、なるほど、スタッフ指導の徹底ぶりにも私たちを気持ちよくさせてくれる細やかな気遣いにも、ただただ感心させられるばかり。

つい先日、サロンに伺ったときの話。会計を済ませた私を見送ろうと駆け寄ってきてくれた美香さんが、私を見るなり「これ、すごく素敵! どこのバッグ?」。才色兼備で、自分らしくて、長く愛せるバッグを探していること。でも、まだこれといった候補に出会えていないこと。私のバッグを見てぴんときたこと。その一部始終を半ば興奮気味に語ってくれました。

私は私で、とても使いやすいし、時間が経つごとに味わいが増すみたい、そうそう、大きさや色のバリエーションも豊富だから、ぴったりのものがきっと見つかるはず、と勧め、買いに行くなら一緒に行こうかな、なんて盛り上がりました。すると……?

「写真を撮って、旦那さんにメールで送ってもいい? 買ってもいいかどうか聞いてみる!」。正直、驚かされました。ここまでのサロンを育て上げるのに、この人はさまざまな場面で誰より潔く、そして頼もしく決断を下してきたはず。ところが、「たかが」と言っては失礼だけれど、バッグをひとつ手に入れるのにご主人に相談するなんて……。

そのあり方がなんだか輝いて見えました。凜々しくてスタイリッシュな女性がふと見せた、隣にいる男性を自然と立てる柔らかい姿勢に、感動を覚えたのです。「だめって言われることないんだけど、ね」と浮かべた照れ笑いもまた、妙に女っぽく見えたもの。「凜」と「柔」を兼ね備えたこの人の「女力」には敵わない、そう思ったのです。
幸せ上手? 幸せ下手?

講談社VOCE

幸せ上手? 幸せ下手?

ある連載でずっと一緒にページを作ってきたモデルの女性。写真での表現を通して目指すべき女性像を熱く語り、その延長でプライベートについてもあんなことがあった、こんなふうに感じたと報告し合う仲でした。

その彼女が結婚。出会いから彼の話は聞いていて、優しさを物語るエピソードを耳にしては、幸せにしてくれそうと私たちも心から応援している人でした。

結婚後、久しぶりに会った彼女は、それまでにも増して穏やかな表情をしていて、ふわりと幸せオーラに包まれている。どう? 楽しい?

「『優しい』の裏は『優柔不断』。『決断力がある』の裏は『自分勝手』。彼が変わったわけじゃないのに、言葉や行動が同じでも、その裏を見てしまう……。結婚って、人をわがままにするんだって、気付きました」。

彼女が言いたかったのは、こういうこと。恋愛しているときは、その人のよい側面を捉えようとする。欠点さえも、愛すべき個性のように見えるもの。ところが、結婚して一緒にいることが当たり前になると、なぜか、感じ方が変わる。「何が食べたい?」に対する「何でもいいよ」の答えが、前はなんて優しいのだろうと好ましく思っていたのに、今は、どうして決めてくれないのと、優柔不断さに苛立つのだって。

「でも、ね。同時にこうも思ったんです。人は、同じことでもどっち側を見るかによって『幸せ度』が変わるんだなって。自分の努力次第で変わる。それが結婚して、学んだこと……」。

はっとさせられました。見方も捉え方も感じ方も、じつはすべて自分でコントロールできるもの。とかく私たちは、自分の幸せを、相手に何かを望んだり、相手のせいにしたりして、決めたり計ったりしがちだけれど、それは間違い。

そう、自分が心地よくなれたり優しくなれたりする側面に目を向けられる人が、幸せ上手。つねにそんな女でいられたらいいのに……。彼女に私が学んだこと。
「家族に相談してみるね」

講談社VOCE

「家族に相談してみるね」

ゆっくり会おうよ、そうメールをくれた彼女は、大学時代、寮で一緒に暮らした親友。大学を卒業してほどなく結婚、ずっと家庭を守っている美しき主婦で、3人の子どもを育てる母親でもあります。学生のころから、しかも私より年下なのに、何が起こってもにこにこ笑って「大丈夫、大丈夫」と言う女性。その人以上にその人の人生を憂い、その人以上にその人の幸せを喜ぶ、そんな彼女に何度癒され、励まされたことか。

そして「今度の土曜日はどう?」と、具体的に話が進んだとき、彼女は嬉しいと言いながらも、こんなひと言を添えました。「家族に相談してみるね」。

正直、驚きました。長く自分の都合だけでその日の予定を決めてきた私にとって、相談する相手は「手帳」だけ。ひとりで生きている人はもちろん、結婚していようと子どもがいようと、この日はどう?と聞けば、即刻決まる、それがどこか常識になっていたから。急に、彼女のあり方が、眩しく思えました。

結果的にその土曜日、私たちは久しぶりに会い、長い時間、語り合うことに。私を知るご主人は「ゆっくりしておいでよ」と再会を喜び、子どもたちは「私たちも会ったことのある人?」と私に興味を持ってくれたそうです。幸せそうに語る姿に、彼女が家族ひとりひとりに寄り添っていて、家族の中でしなやかな「軸」になっていることを思い、不思議と胸が熱くなりました。

そういえば、寮の部屋で何気ない会話をしていたとき、20歳の彼女は「子どもは、社会にお返しするもの」と言いました。もしいつか子どもを持ったら、いずれその「人間」が与えられた使命に気付き、果たせるように、丁寧に誠実に育てたい、と。この言葉の重みが、今になってよくわかります。

子どもに対してだけじゃなく、彼女は、自分の人生に関わる人すべてに、その人が「生きやすい」ように寄り添う人。だから彼女に触れ合う私たちは、このうえなく心地いい。私も目指したいと思います。周りにしなやかに寄り添える女性を。

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