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【人生相談Q&A】38歳女性。夫を亡くし、これからどう生きればいいかわかりません [mi-mollet]

2017年06月08日(木) 14時00分配信

クウタさんからの質問
Q. 夫が亡くなって、これから何を楽しみに生きていけばいいのか分からない。

先日、夫を病気で亡くしました。子供はいません。今まで、いつも一緒でした。通勤も休みの日も常に2人で過ごしてきました。これから何を楽しみに、何のために生きていけばいいのでしょうか。まわりの人は普段の生活に戻っていますが、私は戻れません。(39歳)

特別ゲスト 金子稚子さんの回答
A. どうかゆっくりと 決して焦らずに心のままにまずは過ごしてください。

正直、言葉がありません……。私も同じ経験をしていますので、比べられることではありませんが、少しはお気持ちが分かるつもりでいます。そのうえで、私の経験をお伝えさせていただこうと思います。

まず周囲のことですが、これは考えなくていいと思います。たしかに「私だけ取り残されている」という焦りも生まれますし、周りは「生き甲斐を見つけろ」などと励ましてもしてくれますが、こういったことは全部無視していいです。それよりも今は心身を休めることに集中することが大事です。ただ、頭痛がひどいなど身体的な不調が出ている場合は、迷わず医療機関にかかってくださいね。

最近は「グリーフケア」という存在が、少しずつ知られるようになってきました。大切な人を失ったとき人は、悲しみだけでなく、怒り、恐怖など、様々な強い感情に支配されたり、体調不良になったりと、様々な状態に陥ることがあります。これは人として当たり前のことで、むしろ健康的な反応と言えるものです。そのことはクウタさんにも知っておいていただきたいと思います。この複雑な感情に寄り添い、死別の経験と向き合えるように支援をするのがグリーフケアです。今はグリーフケアをおこなうところも増えていますので、ピンときたものに参加されるのも良いかもしれません。

ただ当時の私は、グリーフケアの情報は一切見ませんでした。というより、見たくなかったのです。それよりも私は、「このどうしようもない悲しみを何とかしたい!」と強く思ったのです。そこで思いつく限り、いろいろなところへ行きました。たとえば般若心経の講座を受けたり。それも一つではなく、仏教の様々な宗派の話を聴ける講座に行きました。そこには様々な思いを抱えて来られている方がいて、少しずつですが、冷たく固まっていた気持ちが緩むようなこともありました。

もう一つやったことで良かったのは、自然の中に滞在したことでした。以前、東洋哲学の先生から「病気には転地療養」と聞いていたため、三泊四日程度ですが、自然が深い山の中にこもったのです。自然の力はとても優しく、でも力強く私を支えてくれていると感じ、本当にいろいろなことに気づかされたのです。このことはまた別の機会にお伝えさせていただけたらと思うのですが……。ともかくこれにより夫のいた日常から離れられたこと、またちょっとした農作業体験をし体を動かすこともできて、心と体が少し動いたと感じたのです。私の場合、夫との死別後は、心も体もまったく動かず、冷たく固まってしまっていたのですね。あとから「あれは冬眠だったのかな」と思ったほどです。でも、自分が「ふと思った」「心が動いた」、そんな場所に出かけることを少しずつ繰り返していくうちに、冷たく固まっていたものがちょっとずつ解けていったのです。

私がもう一つ意識していたのが、食べる、飲む、歩く、聞く、といった日常の動作を丁寧に行うことです。先のことなど、考える必要はありません。目の前の、必要最低限の動作を意識するだけです。最初はややもすると潰されそうになる強い悲しさ、苦しさに、ともかくも耐えるしかなかったのですが、こうしたごくごく普通の日常動作を丁寧に意識して行うことで、悲しみだけを感じ続けているようで一瞬の“隙間”のような時間があることに気づきました。たとえば当初は食べ物の味がまったく分かりませんでしたが、それでもある日、自分がリンゴを噛む「シャリシャリ」という音にふと気づいたり……。そんな小さな小さな“隙間”の時間ですが、日常動作を丁寧に意識していくと、その時間が少しずつ増えていきました。悲しみを何とかしようとするのではなく、こうした“隙間”が増えていくことを意識することで、強く激しい感情との自分なりの向き合い方が分かってきた……という感じでした。

本当は、会ってお話ができると一番いいのですが……。私は大切な人を失った方とお会いする機会を多くいただいていますが、できるだけ早い段階で誰かと納得できる対話ができた人というのは、死別経験に向き合えるようになるのが比較的早い気がしています。死別による強い感情を抱えているときは、自分が納得できる形で安心してゆっくり話を聞いてもらえる、ということがきっと大事なのですね。ですから誰かとお話をしたり、私のように様々な講座に通ったりしたとしても、「違うな」と感じたらニコやかにすぐに立ち去ってください。そこで頑張る必要はまったくありません。

最後に、少し先輩の立場から私の考えを述べさせてください。私は、死別とは喪失ではなく変化だと思うのです。つまり、亡くなった方と新しく関係を結び直すということだと。だから私は今も夫が応援してくれていると感じていますし、私のように感じる死別経験者もたくさんいらっしゃいます。そういった世界観もあるということ、今はまだ余裕がないかもしれませんが、クウタさんともいつか共有できる時が来たら……と願っています。焦らず、共にゆっくり進んでいきましょう。
いかがですか?
金子稚子さんの回答、ぜひご参考になさってください。

PROFILE

金子稚子(かねこわかこ)
1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。

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