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いのうえひでのりが語る、『髑髏城の七人』秘話 [おとなスタイル]

2017年04月13日(木) 09時00分配信

巨大なセットと一体になり物語を追いかける

撮影/野波浩

巨大なセットと一体になり物語を追いかける

スピーディーな演出から繰り出される華麗なアクション。カタルシスに溢れたストーリー。全力でぶつかってくる役者たちを、観客も全身で受け止める―。観る者を間違いなく“ご機嫌”にするのが、「劇団☆新感線」の舞台。
昨年、旗揚げから堂々の35周年を迎えた彼らが届けるのは、今も昔と変わらないそんな躍動感に他ならない。
その中心に立ち、熱狂を生み出しつづけてきたのが、演出家のいのうえひでのりさん。
東京・豊洲にオープンのアジア初360度回転シアター「IHIステージアラウンド東京」こけら落とし公演を控え、

「大変ですよ、これは。思い詰めるとブルーになるので、今は楽しいことだけ考えています(笑)。この劇場の最大の魅力は、何といっても巨大なセットが作れるというところ。映画のオープンセットみたいな場所の中心に回転する客席があり、それが映画のように切れ目なく、物語と俳優を追いかけていく構造になっています」

勝負の一作に選んだのは、同劇団の当たり演目として名高い『髑髏城の七人』。戦国末期の関東の荒野を舞台に、生きる目標を見失った若者たちが、混乱に乗じて立ち上がった邪悪な勢力と対峙し血闘を繰り広げる一大活劇には、これまで古田新太、市川染五郎、小栗旬、森山未來などの多彩なキャストが参加し、再演のたびに絶賛を浴びてきた。が、1990年の初演時は、何と結末すら決まらないまま(!)上演された、いわくつきの作品だったという。

「そんなことだから当然、締まらないエンディングになって、『これ、つまんねえなぁ』って(笑)。でも、7年後にもう一度やってみたら、意外と面白かったんです。たぶん当時は、自分たちのやりたいことに、スキルが追いついていなかったんでしょうね。何でもないヤツらが巨大な天に向かって戦いを挑む、というのが基本線ですが、演じる役者が変わると芝居の色合いが変わる。その回ごとに、観客の面白がり方も違ったりするんです」
「あの人たちも頑張ってる」そう思ってもらえたら

いのうえひでのりさん

「あの人たちも頑張ってる」そう思ってもらえたら

独自性を磨き、第一線で走り続けた35年。
それは、変化する演劇界の中で模索した歳月でもあった。

「昔は、表現のスタイルとして『この劇団でやりたい』というのがありましたが、今は個人やユニット型の活動が多い。作品も、いわゆる小劇場で作られる緻密でミニマムな芝居がある反面、アニメ的な世界を具現化する人たちもいる。そういう中で、自分たちの芝居を続けて、劇場すごろく(小劇場から大劇場へ、徐々にステージを移していく)みたいなことをやっているのは、たぶん僕らが最後じゃないかな」

若い劇団員を新規採用しないのは、「学校の先生と生徒のような関係になると、大事なことが伝わらないから」。そこにも、ポリシーが貫かれる。

「そうは言っても、僕を含めて皆、年は取ってきましたからね(笑)。だから、若くて波長の合う役者さんを見つけては、その人に参加してもらって刺激を受けています。今回、はじめて参加してくれる(山本)耕史君や成河君も、そういう人たち。僕自身、仕事のやり方はそう変わらないけれど、昔は全部自分でやらないと気が済まないようなところがあったのが、今はだいぶなくなったかな。気力体力を補うには、やっぱり普通に、飲んで帰って寝るっていうこと。でも、昔みたいには飲めなくなってきましたね。確実に」

舞台上で受け継がれる、青春の熱。それが、往年のファンを魅了し続け、若き信奉者を増やしている。

「ファンの方々の年齢層の高さも、自慢ですよ(笑)。でも、シンパシーを覚えてくれている人もいるんじゃないでしょうか。『あの人たちが頑張ってるから、自分たちも』って。そう思ってもらえたら、うれしいですね」
ONWARD presents 『髑髏城の七人』Season花 Produced

2017年3月30日(木)~6月12日(月) IHIステージアラウンド東京

ONWARD presents 『髑髏城の七人』Season花 Produced

傷だらけの若者たちが繰り広げる、哀しくて愛しい青春群像劇。浪人・捨之介役には小栗旬が再登板。「花」以降、2018年にかけて「鳥」「風」「月」と4バージョンが連続上演される。
作/中島かずき 出演/小栗旬、山本耕史、成河、りょう、青木崇高、清野菜名、近藤芳正、古田新太ほか。

 
■Profile
いのうえひでのりさん
[劇団☆新感線 主宰・劇作家]
1960年福岡県生まれ。大阪芸術大学在学中の’80年に「劇団☆新感線」を旗揚げ。以降、劇団内外で多くの作品の演出を手がける。日本演劇協会賞、千田是也賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。近作は『Vamp Bamboo Burn』。

 
『おとなスタイル』Vol.6 2017冬号より
(撮影/森本洋輔)

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