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荻上チキとトミヤマユキコが語る「ディズニープリンセス」 [FRaU]

2016年11月06日(日) 17時00分配信

多様性と対話を重視するディズニーのプリンセスの現在地

FRaU2016年11月号より

多様性と対話を重視するディズニーのプリンセスの現在地

荻上チキ(以下、荻上) 基本的にディズニーはより自由や個性を肯定する方向に進んできました。『アナ雪』以降、「幸せや承認を調達する装置は恋愛だけじゃない」というのが、むしろスタンダードに。プリンセス作品ではないけれど、『ベイマックス』や『ズートピア』にもその傾向はあると思います。

トミヤマユキコ(以下、トミ) 私としては、非モテに優しい映画になっているなと感じます。恋愛至上主義ではなく、互いの違いを認めつつ、自立した個人として生きていけたら最高に幸せだよね、恋愛はオプションでいいよね、という描き方が心地いい。

荻上 今はさらにそれが進んでいて、現在ディズニーチャンネルなどで放送しているアニメ『ちいさなプリンセス ソフィア』という作品は、個人的には『アナ雪』よりも、もう2歩くらい先に行ってる作品だと思います。

トミ 『アナ雪』の先がもうあるの!?

『ちいさなプリンセス ソフィア/ひみつのとしょしつ』

荻上 主人公のソフィアは、もともとシングルマザーの家庭で育った女の子。なんだけど、お母さんが王様と結婚することになり、お姫様を目指して「プリンセスアカデミー」という学校に通っている。そこにはアジアや中東、アフリカなど、いろいろな国から生徒が集まっていて、それぞれのプリンセス像を目指して行きましょうという物語。1話完結で、毎回いろいろな困難が起こると、ソフィアの身につけているペンダントが光り、異世界からお助けがやって来る。それが何と、白雪姫やシンデレラといった歴代のプリンセスなんですよ。で、何をしてくれるかというと、一緒に話をして帰って行く。

トミ カウンセリング!?

荻上 そう、もっと言えば「ガールズトーク」をするだけ。これが例えば「ポケモン」とかだと「呼び出して解決してもらう」という展開になるんだけど、そうじゃない。違う人生観を経た、例えば白雪姫が「私のときはこうしたわ。あなたにもその力があるはずよ」なんていぶし銀のアドバイスを与えることによって、ソフィアが「じゃあ私はこうする」と自分で答えを出して問題を解決していくというストーリー。

ともすればシンデレラなんて古いとされがちだけど、あの時代を生きた人にはそれなりの経験値があるんですよね。しかも、他にもオーロラ姫やジャスミン、アリエルにベル、ラプンツェルにムーランにメリダなど、歴代のプリンセスが次々に登場する。ここもディズニーファンにはたまらないところで(笑)

トミ めちゃくちゃいい話!

荻上 いろんなプリンセス像があって、どのプリンセスが好みかというのではなく、どのプリンセスの生き方も全部肯定するという姿勢が明確なんですよ。何か困ったときには誰かが解決してくれるのを待つのではなく、それぞれの人生観を持ち寄って対話をすることによって、自分なりに合意点を模索していく。それが成長なんだよってことを、5歳から10歳くらいまでの子どもたちに与え続けているというのが、最新のディズニーアニメーションのリアリティ。

今の社会では、自分と異なる人を個性として認めていくのが必要なスキルで、そういった多様な個性の共存をシンプルに教えてくれる。これが今のディズニーが進んでいる方向だと感じます。

トミ そう考えると、『アナ雪』は改めてすごい作品ですね。

『スティッチ! パーフェクト・メモリー』

荻上 さらなる源流は『リロ アンド スティッチ』にあると個人的には感じていて、特にアニメーションシリーズは本当にオススメ。この作品では、宇宙からいろんなエイリアンがやって来て、最初は必ず暴走するんですよ。でも、例えば何でも切っちゃうエイリアンには芝刈りの役割が与えられ、何でも凍らせちゃうエイリアンにはアイスクリームショップで働く役目が与えられる。つまり、「周囲が特性を受け入れ、それぞれが居場所を見つけていく」という構成。

荻上 シリーズが始まったのは2003年ですが、その想像力が『アナ雪』を経て『ソフィア』につながっているように感じます。

トミ プリンセス像の更新を続けて行くディズニー作品の歴史、実に面白いですね。今後どのようなプリンセスが登場するのか、私も注目していきます。

(C)2016 Disney

『ちいさなプリンセス ソフィア/ひみつのとしょしつ』 DVD発売中/デジタル配信開始 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(C)2016 Disney

『スティッチ!パーフェクト・メモリー』 DVD発売中/デジタル配信中 発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン


PROFILE

荻上チキ
1981年兵庫県生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治・社会・文化まで幅広く論じる。著書に『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』(幻冬社新書)など。TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』メインパーソナリティ。

トミヤマユキコ
1979年秋田県生まれ。研究者・ライター。早稲田大学などで少女マンガを中心とするサブカルチャー関連講義を行う。『ESSE』や『文學界』などで連載。著書に『パンケーキ・ノート おいしいパンケーキ案内100』(リトル・モア)がある。


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