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貧血はなぜ起こる? 間違いだらけの貧血改善食事法 [VOCE]

2018年06月11日(月) 11時00分配信

なかなか治らないイメージがありますよね。

女性に多いと言われる貧血。その症状はめまいや頭痛、集中力の低下など幅広く、深刻な場合は日常生活に支障が出ることも。貧血はなぜ起こり、どうしたら防ぐことができるのか? 基本知識を工学博士の後藤日出夫先生に教えてもらいました。

教えてくれたのは

後藤先生
工学博士、分子化学療法研究所代表。米国ボルグワーナーケミカル社中央研究所などで各疾患の発生原因や治療方法を研究し、独自の疾病体質改善食事療法にたどり着く。後に「分子化学療法研究所」を発足。著書に『アレルギー・炎症誘発体質の真実』(理工図書)、『女性の9割が 鉄マグ欠乏症』(健康ジャーナル社)など。

鉄が全身に酸素を運んでくれる

貧血には「再生不良性貧血」、「溶血性貧血」、「鉄欠乏性貧血」など様々な種類があります。ですがほとんどの人が悩まされているのは、鉄分の不足による「鉄欠乏性貧血」。では一体なぜ、鉄分が不足すると様々な不調が引き起こされるのでしょう?

「血液中の赤血球は、ヘモグロビンというタンパク質を含んでいます。このヘモグロビンは鉄イオンを持っているのですが、鉄イオンは、肺など酸素が多いところでは酸素を取り込み、酸素が少ないところでは酸素を解き放つ、という性質を持っています。つまり全身に酸素を運ぶという重要な役割を担っているので、鉄分の不足は私たちの健康に直接的な影響を与えるのです」

酸素は全ての細胞に必要不可欠であり、そのため鉄不足になると、特に酸素を多く必要とする“運動時”や“脳”に障害や悪影響を及ぼすようになります。

「運動といっても激しいものではなく、いわゆる日常の動作において支障が出るようになります。立ちくらみ、息切れ、動悸、疲れやすい、といった症状が起こるのは、そのため。また脳にも影響が大きく、鉄不足によって神経過敏、注意力散漫、頭痛といった不調も出てくるでしょう。他にも異食症といって、土や氷をかじるといった特徴的な症状を示すこともあります。これは、土に鉄分が含まれているから。そのため太古の時代は、鉄分が不足すると土をかじっていたのです。氷には鉄分は含まれていないのですが、恐らくガリガリと土をかじる感触と似ているため、鉄分が不足すると本能的に似た行動を取ってしまうのではないか、と言われています」

私たちの鉄分知識は勘違いがいっぱい!?

それほどまでに私たちの体が必要とし、本能的にも欲してしまう鉄分。では一体、どのくらいの鉄分を摂っていれば不足状態にならないのでしょう?

「鉄の必要量は、性別や年齢、運動量などによって異なりますが、健康な成人男性で1日に約1mgが失われる、とされています。ただし女性は月経による鉄損失がありますから、男性より0.5mg程度、損失量が多いでしょう。そのため健康な場合でも鉄欠乏性貧血を起こしやすいのです。いずれにしても、失われた鉄分は食事で摂取し補給する必要があります。ところがこの鉄分補給において間違った鉄の吸収率や食知識が氾濫しており、一向に鉄欠乏性貧血が治らないという人が多いのです」

鉄吸収率の何が間違っているの?

レバーなどに含まれる動物性のヘム鉄は、小松菜などに含まれる植物性非ヘム鉄より吸収率が高いと思っている方が多いですが、最近の研究ではこれは全く逆で、鉄欠乏時はヘム鉄より非ヘム鉄の方が吸収率は高いということが分かってきました。そのことを考慮して、厚生労働省作成の『鉄の1日当たりの摂取量一覧表』も、日本人の標準的食事内容をベースに、吸収率を15%として計算した数値が表示されています。つまり、一般に認識されている『1日約10mg』という鉄の必要量は、既にこの新しい吸収率データが考慮された数値なのです。でも巷では、根拠が定かでない『ヘム鉄の吸収率が20%程度、非ヘム鉄5~2%程度』という情報が広められています。その結果、『非ヘム鉄を含む野菜となるとバケツ一杯分食べる必要がある』と信じている人までいるのが現状です」

このような理由もあり、実は私たちがおこなっている貧血改善の食事法には、ほとんど効果がないものがいっぱいある、と後藤先生は言います。そこで、代表的な“勘違い貧血改善食事法”について教えてもらいました。

1「貧血にはレバー」という勘違い

「レバーには鉄分が多く含まれている、と思っている方が多いと思います。ですがレバーなら何でも良いというわけではありません。比較的多い鉄分が含まれているのは、豚と鶏のみ。牛レバーは100gあたり4.0mgしか含有していません。豚と鶏のレバーであっても、水分量を除いた100g固形分での含有量を見ると、小松菜やサラダ菜と同じくらい。全体的に肉類に含まれる鉄分量は、皆さんが思っているほど多くないのです。ここで、『でも肉の摂取量が多いアメリカは、あまり貧血が問題になっている印象がないような? 』と思った方も多いでしょう。実はアメリカ人も貧血の人は多いんです。そこでアメリカは、小麦に鉄を加えるという改善策をとっています。決して肉をたくさん食べているから、というわけではないのです。ですから貧血だからといって、好きでもないレバーを無理して食べる必要はありませんよ。同じ動物性食品なら、天然の鮎が比較的多くの鉄分を含んでいます。とくに鮎は非ヘム鉄が豊富なコケをエサにしているため、内蔵には豚レバーの5倍近くの鉄分を含有されているのです。貧血に悩まれているなら、天然の鮎をまるごと食べることをオススメいたします」

2「鉄分の多い果実といえばプルーン」という勘違い

「なぜか“鉄分といえばプルーン”という情報が広まっていますが、実はプルーンに含まれる鉄分量は非常に少なくて、100gあたりわずか0.2mg。鉄分が少ないと言われるスイカや夏ミカンと同じくらいなのです。果実類で比較的鉄分を多く含むのは梅。とくに梅干しや梅肉エキスはクエン酸も含まれており、これが鉄分の吸収率を上げてくれるので非常にオススメです」

3「ほうれん草には鉄分が多い」という勘違い

「ほうれん草を食べた途端パワーアップするアニメ『ポパイ』の影響か、ほうれん草には鉄分が多いというイメージが定着していますよね。ですが、これはほうれん草に対する過大評価。ほうれん草の100gあたりの鉄分含有量は2.0mgで、野菜類の鉄分含有量としては平均的なのです。しかもほうれん草には鉄分の吸収を阻害するシュウ酸が多く含まれているので、実際の鉄吸収量はもっと少ない可能性があります。野菜類で鉄分含有量が比較的多いのは、パセリが100gあたり7.5mgとダントツ。他にはつるな(3.0mg)、小松菜(2.8mg)、ふだんそう(3.6mg)、大根葉(3.1mg)など。鉄分を補給したいなら、このあたりの野菜をたくさん摂ることをオススメいたします」

4「乳製品にはほとんど鉄分がない」という真実

「『鉄分が多そう』という漠然としてイメージだけで、貧血に良いと勘違いされている食品はいっぱいあります。その代表が乳製品。牛乳にはほとんど鉄分は含まれておらず、チーズでも100gあたり0.3mgとごく微量。仮に吸収率を30%とすると、1日に必要な1mgの鉄分を摂取するためには、1kgものチーズを食べなければならないのです。また海草類やきのこは、鉄分含有量じたいは多いのですが、吸収率となるとほぼゼロ(ただし、アサクサノリのように非常に表面積の多いものは別)。もちろん他の栄養素があるので食べても意味がないとは言いませんが、鉄分の補給という点では効果がない、とお伝えしておきます」

「鉄分が多そう」ではなく、本当に鉄分含有量の多い食材を摂らなければ貧血改善にはつながりませし、またいくら鉄分含有量は多くてもきちんと体に吸収されなくては、改善効果も薄いもの。そこで第二回では、「吸収率を上げる鉄分の摂り方」についても教えてもらうことに。ぜひご一読ください!

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