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女優・小島聖さん「豊かな東京の生活も、山での時間もどちらも好き」 [mi-mollet]

2018年07月20日(金) 12時10分配信

子役時代からCMや映画で活躍する小島聖さん。女優という仕事は、プライベートの過ごし方もすべてが自分の糧になる特別なもの。代わりが効かないだけに、プレッシャーも多いと思います。そんな時に出会った山登りが、小島さんを変えるきっかけに。それが最近「野生のベリージャム」という本にまとめられました。ページを進むほどに山に行きたくなり、不思議と気持ちがリセットされる、読むだけで癒される本です。今回は、ファッションセンスが磨かれた若い頃の経験から、山に出会い、結婚をして出産までの、お話を伺いました。

小島 聖/1989年、女優デビュー。1999年、映画『あつもの』で、第54回 毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。柔らかな雰囲気と存在感には定評があり、コンスタントに映像作品や話題の演出家の舞台にも多数出演。またプライベートでは国内にとどまらず、海外の様々な山に登る山好き。料理やアウトドアに関するライフスタイルでも注目を集めている。今年3月に自身初となる著書『野生のベリージャム』(青幻舎)を上梓。出演待機作に、舞台『誤解』(10月4日(木)〜10月21日(日)@新国立劇場 小劇場)の出演が控えている。
東京と山。どちらの豊かさも好き

撮影/林洋介

東京と山。どちらの豊かさも好き

神田 東京での生活と、山での時間。自分の中ではどのようにバランスを取っていますか?

小島 どんどん登山にのめり込んでいった時期には、私が住むべき場所はもっと自然が近い土地なのではとも考えました。でも仕事のことを考えたら都心に近い所に住んでいたほうがいいし、ブランド物も好きだし、美味しい物も食べたいし(笑)。東京にいながら時間ができたら自然がある所に行くバランスが、今の私には合っているのかなというところに落ち着きました。

神田 もともと好きなものは好きなまま、人生に新しいものが加わった感じですね。それでも山に行くようになって価値観が変わった部分も多かったのでは?

同じ食事を一緒にいただくと、不思議と心も通じて来る

小島 山に目覚めるきっかけとなり、何度も通ったネパールが気づきをくれました。日本と比べたら物質的に不自由さがある国です。でもその一方で、家族で食卓を囲んでみんなでご飯を食べること、街に一個しかないテレビをみんなで見ている暖かい光景にも出会いました。自分は東京ですごく豊かな生活をしているけれど、では自分にとって「本当の豊かさってなんだろう?」 と考えました。そこにいる時は自分もシンプルな生活がしたいなと思うけれど、東京に戻ったら東京的な豊かさもやっぱり好きで、その暮らしを楽しんでいる私がいる。そういう気づきの重なりの中で、確かに価値観は揺れて、変わってきた部分があると感じています。

神田 フレンチのコースだけが美味しいのではなて、自分が食べたいシンプルなごはんも同じように美味しいということに気づいた、という感じかしら。豊かさの幅が広がって、本当の自分らしい部分にも心が向くようになった。

ヨセミテ国立公園内の「ジョン・ミューア・トレイル」。メニューは乾燥野菜と日本のカレー

小島 そんな感じかな。だから余計に忙しくなりました。自然の中の暮らしも好きだし、でもちょっと着飾って行くレストランでのご飯も好きで、両方やりたいから、本当に忙しいって(笑)!

神田 贅沢な忙しさですね。 山に登っていることは女優業にも生きていると思いますか?

7年ネパールに通ううちにエベレストを目指す登山隊に参加。ほっとするあま〜いミントティー

小島 言葉ではうまく言えないけれど、生きていると感じてはいます。女優の仕事はどんな役であっても、結局演じるのは私なんですよね。私が何を経験したかという部分からしか、私はその役を引き出してこられないんです。だから登山や旅はもちろんのこと、日々の暮らしの中でいかにいろんな経験をしているかが大切なんだろうなと感じています。あと単純に歩いていると台詞が覚えやすかったり、自分の中でふわふわしていたことがまとまったりもします。それもやっぱり街を歩くのと、自然の中を歩くので違う気がするんですよね。

神田 山の他に食へも深い興味を持たれていますよね。マクロビオティックを講師になれるところまで深く学ぶなど、いつも何か夢中になれるものを持っている人。

撮影/林洋介

小島 何に夢中になるにしても自分の中では突然ではないんです。昔から好きだったものをさらに深めたくなって、という場合が多いですね。料理も昔から好きで、高校生の頃は自分でお弁当をつくっていました。マクロビオティックは習うだけでなく、実生活でも徹底して実践していた時期があって、今はそれをベースにしつつもう少し多様な食生活をしています。ずっとそれを続けないにしても経験は残るから、深くやってみるというのはいいのかなと思います。

神田 深く掘り下げたいものが見つかると人生の指針も定まっていくように思います。それが仕事と合致している人もいれば、小島さんのように仕事とは別の世界を開いていく人も。その時々で対象は変わってもいいと思うけれど、何かひとつ持っているとブレずに自分の道を進めるのかもしれませんね。
出版と出産。新しい時が動き始めてこれから

6月後半から9月の頭までベリー天国になるアラスカの荒野にて

出版と出産。新しい時が動き始めてこれから

神田 今年の3月に初のエッセイ集『野生のベリージャム』を出版されました。山と食がテーマです。山登りを始めてからの10年間の集大成ですね。自然の美しさとともに小島さんの心の動きも感じられ、山に行きたくなる本当に丁寧で、素敵な一冊。ふだんはシャイな小島さんの素顔に近いような文章が心地よかったです。

小島 山登りのきっかけとなったネパールの話や、ジョン・ミューア・トレイルというアメリカ・ヨセミテにあるトレッキングルートを20日間かけて歩いた話をまとめました。本にまとめてみるといろいろな所に行ったなという感慨とともに、新しい10年がすでに始まっていることも感じられて不思議な感覚です。本の出版と同じタイミングで子どもが生まれたこともあり、私の中では確実にこれまでの10年とはまた違う時間が流れ始めている。遊び方にしても生活にしても、子どもがいたら自然と変わっていくでしょうしね。

神田 今までのように好きなときに山や旅に出るというわけにはいかなくなりますよね。

小島 自分の中で折り合いをどうつけるかを、今まさに勉強しているところです。これまでは天気が良かったら、ふらっと1人で車を運転して八ヶ岳まで行ったりしていたけど、0歳児と2人だと少し腰が重くなってしまったり。でも、山も旅もいくつになっても続けられるものではあるので、まずは家族と行ける範囲で続けていきたい。先日も奥秩父の西沢渓谷まで家族3人で行ってきたところなんです。

登山のときの必需品の帽子と古着のネルシャツ

神田 お子さんが生まれたことで、気持ち的に変わったと感じることはありますか?

小島 先日、出版フェアを開催していただくことになり、今までに読んだ本や旅に持って行った本を30冊あげるという仕事がありました。それで家にある本棚の中を見ていて、レイチェル カーソンの『センス・オブ・ワンダー』を久しぶりにぱらぱらとめくってみたんです。そのときに「知ることよりも感じることが大切だ」というフレーズに行き当たって。ハッとしました。頭で考え過ぎるよりもとにかく試してみるというのは大事だな、と。子どもの仕草などを思い浮かべて、すごく腑に落ちました。生活が変わると、入ってくる言葉も変わるんですね。

神田 確かに子どもはなんでも舐めたり触ったりして、物を覚えていく。次に色が見えるようになって、これが何か、認識ができるように。ひとつひとつ段階を経て覚えていくことも、私たち大人が忘れていた行為だよね。

小島 公園でシートの上に寝かせておいたら、自分で草や葉っぱに手を伸ばして、触ったり口に入れたりして。触れることでいろいろ感じているんだなぁって。そういうことを大人目線ではなく、一緒に楽しんでいけたらいいなと思っています。

神田 小島さんなら1つ1つのことを、新しい発見とともに楽しんでいけそうですね。最後にこれからこうしていきたいというイメージはありますか。

小島 “変わらず”ですね。仕事が好きなので女優の仕事は続けたいし、子どもと一緒に自然の中を楽しんでいきたいです。あとは柔軟に、豊かにいられたら。こうあろうと決めすぎていると私も子どももたぶん辛くなってしまうし、柔軟さがあったほうが生活が楽しいんだろうな、と感じています。

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