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静かな感動を呼ぶ仏映画『夜明けの祈り』。戦時下の女性たちの連帯を描く [mi-mollet]
2017年08月05日(土) 13時00分配信
戦時下の実話をもとにした映画は数多く作られていますが、『夜明けの祈り』を観て、1945年のポーランドでこれほどまでに惨いことが起こっていたという事実を、はじめて知ることになりました。舞台となっているのは、雪に包まれた町。赤十字の施設で働くフランス人医師のマチルドは、助けを求める修道女と出会います。負傷した兵士たちの手当てをしているマチルドは別の施設へ行くことをすすめますが、屋外で祈り続ける修道女に心動かされ、修道院を訪れることに。そこには戦争末期のソ連兵の蛮行によって妊娠した修道女たちが暮らしていました。その日から、マチルドはひとりでこっそりと修道院へと足を運ぶ日々をはじめますが……。
マチルドははじめ、立派なことを成し遂げた聖人君子というよりも、どこか他人を寄せ付けないようなムードを持つ女性として描かれています。そんな彼女が命令に背き、ソ連軍の危が迫るなかでなぜ修道院に通い続けたのか。神と結婚した修道女は妊娠したことに戸惑い、院長はその事実を隠蔽しようとします。マチルドが持つ医師としての信念と修道女が持つ信仰は、たやすく手をつなげるものではありません。けれども彼女たちの目の前には、新たな命がある。起こった事件はあまりにも過酷なものですが、この映画はそれをただ嘆くだけではなく、その現実を前にして女性たちがぎこちなくもたしかに連帯していく様を丁寧に描いています。
希望そのものともいえるヒロインを甘さを抑えて演じたのは注目の若手女優、ルー・ドゥ・ラージュ。これまで『ココ・アヴァン・シャネル』『ボヴァリー夫人とパン屋』など官能が匂い立つような作品を手がけてきたアンヌ・フォンテーヌ監督が実話に挑み、新たな世界を切り拓いています。宗教や思考が違う者同士の争いがやむことのない今、この映画で描かれているテーマはとても現代的なものだといえるかもしれません。陰影あふれる修道院の内部、そして雪のほのかな灯りを捉えたのは、フランスを代表する撮影監督カロリーヌ・シャンプティエ。宗教画のように厳かな美しさに満ちた映像が一筋の光を感じさせ、今年のフランス映画祭では観客の投票によって選ばれる「エールフランス観客賞」を受賞しています。