• > 人生の大先輩へのラブレター[高頭佐和子・大谷道子] [おとなスタイル]

人生の大先輩へのラブレター[高頭佐和子・大谷道子] [おとなスタイル]

2017年06月04日(日) 10時00分配信

今回の読書家は高頭佐和子さんと大谷道子さん。

細いのにしなやかで折れない柳の木のような強さと美しさを持っている―。
明治の終わりから、大正、昭和の初めに生まれた女性たちが、ひときわ輝いて見えるのはなぜだろうか。
シスターの渡辺和子、元首相・三木武夫夫人の三木睦子、作家の瀬戸内寂聴、元『暮しの手帖社』社主の大橋鎭子ら『日本女性の底力』(白江亜古著・講談社+α文庫)に登場する27人の女たちは、心折れるようなことがあっても何度でも起ち上がって、前へ進もうとする。
インタビューには、彼女たちの心身からにじみ出た宝物のような言葉がぎっしりと詰まっている。

勇気、考えること、凛とした生き方、それらはどこから来るのか。
彼女たちの言葉を受け取ると、後世に生まれた私たちは、なぜこんなにも励まされるのか。本の読み手となった、“今を生きる”女たちに聞いてみた。

27人27様の人生に触れ、何を思ったのか―。
各界の読書家に、心に響いた言葉とエピソードを寄稿してもらいました。

質問事項
Q1.『日本女性の底力』で、印象深かった方はどなたでしょう?
心に残ったエピソードや言葉を教えてください。
Q2.この本を読んで、初めて知ったことや興味深い事柄はありましたか?
Q3.この本の感想を教えてください。
今の女性の自由は、この方々のおかげと、感謝したくなる

高頭佐和子さん/書店員。本屋大賞実行委員

今の女性の自由は、この方々のおかげと、感謝したくなる

A1.
最も印象に残ったのは、渡辺和子さんです。
9歳の時、二・二六事件で機関銃に撃たれた父親の最期をたったひとりで看取るという凄惨な別れを経験していらっしゃいます。それを「愛は長さじゃない、深さなんです」という言葉で語れる、生き方に心打たれました。
同じくカトリックのシスターであり医師の須藤昭子さんが、ハイチで結核治療の医療活動を行っている時にクーデターがあり、患者たちが自分を守ろうとしてくれたことに幸せを感じたという言葉にも感動しました。「人間って、お互いに助け合って、お互いが尊敬し合って、愛し合って生きていくんです」
ある意味ありきたりな言葉ですが、その後もハイチで活動を続けた須藤さんの言葉には力があります。
岩波ホール支配人の高野悦子さんが留学先のパリで猛勉強し、自分ならではの知恵も働かせて映画学校を首席で卒業した話もすごい! 映画館を運営する上で、「自分が信じたことをやるだけ」と言葉にできるのも、それだけの努力をしてきているから。やらない言い訳ばかりしている自分を深く反省しました。90歳を超えても現役芸者として活躍していたみな子さん。一番幸せを感じる時はと聞かれ……「そりゃあ、呑んでるときよね」。
私も最期までお酒を呑みたいです(笑)。みな子さん、憧れちゃいます。

A2.
ホスピスケアを広めた季羽倭文子さんのお話に出てくる「レッドブランケット」のこと。
初めて知った言葉です。ホスピスケアについてもっと知りたいと思うと同時に、仕事をする上で大切なことを教えられた気がします。

A3.
彼女たちのおかげで、女性が自由に生きられる今の社会があるんだと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。どの方にも共通するのが、平和を願う気持ちです。この素晴らしい女性たちにお礼ができるとしたら、自分にできるやり方で真摯に働き、人を大切にし、平和を願う気持ちを忘れないことではないでしょうか。いただいた勇気を大切に、生きていこうと思います。

■Profile
たかとうさわこ/書店員。本屋大賞実行委員。現在は丸善ラゾーナ川崎店に勤務。次回「本屋大賞」ノミネート作品は2017年1月に発表予定です。今年は何に投票するか、全国の書店員と共に迷い中です。皆様もどうぞお楽しみに。
彼女たちの素直でストレートな言葉を聞くなら、50代の今です!

大谷道子さん/ライター、編集者

彼女たちの素直でストレートな言葉を聞くなら、50代の今です!

A1.
自分でもインタビューをした経験のある田辺聖子さん、佐藤初女さんの記事は、とくに興味深く読みました。
田辺さんは、あの可愛らしい笑い声が聞こえてくるようであり、佐藤さんにお会いしたとき、やはり〈まずは食べてくださいね〉と言われたのを思い出したり。白江亜古さんの文章を読んで、「この人のここに注目されたのか」という、自分ではできなかった発見を感じ取れたのも、職業柄、収穫でした。
朝倉摂さん、大橋鎭子さん、高野悦子さん、関民さんなど、今はお会いすることのできなくなった方々の声も、貴重だと思います。

A2.
それぞれに才能を備え、それ以上に不断の努力を重ねてこられた女性たちですが、どの方も、必ずしも何もかもに恵まれていたわけではないことが、読んでいくとわかります。
家庭的に不遇だったり、戦争でしんどい思いをされたり、望む職業に就けなかったり、結婚生活が破れたり。それでも絶望することなく、偶然と必然をチャンスに結びつけた。その瞬間が訪れるのは、決して若いときだけではないというのも、勇気づけられることでした。
あとは、「ユーモアは身を助く」は、どの方の人生にも共通していると感じました。笑うのも才能のひとつである、ということ。

A3.
実在の人物でも、その人が掲載された誌面でも、「会う」という経験には、ふたつのタイミングが作用します。相手の方にとってのそのときと、自分にとってのそのときです。
『日本女性の底力』に収録されているのは、レディの品格(と実績)を身につけられた大人と、大人の入り口に立って迷う人たち、その出会いとしては最高のタイミングではないでしょうか。彼女たちの、素直で、率直で、ストレートな言葉と佇まいは、50代という円熟の(でもちょっと未熟さも残した)時代の周辺にいる女性たちには、得難いものであると感じます。
この声、「聞くなら今!」ですよ。

■Profile
おおたにみちこ/1969年鳥取県生まれ。雑誌や書籍、広告媒体で執筆。関わった近刊に『日本の365日 季節の道しるべ』(日本気象協会/マガジンハウス)、『日めくりムーミン谷の毎日のことば』(講談社)などがある。
心に響いた言葉

相磯まつ江

心に響いた言葉

「敗戦で最大の得をしたのは女性です」

関民

「十分ではなくて、十二分にやれば、ことはなんでも成就します」

須藤昭子

「人間って、お互いに助け合って、お互いが尊敬し合って、愛し合って生きていくんです」

三木睦子

「戦争を起こすのは、きまって男性です」

 

『おとなスタイル』Vol.6 2017冬号より
撮影/森川昇、三木麻奈

【関連記事】

NEWS&TOPICS一覧に戻る

ミモレ
FRaU DWbDG
  • FRaU DWbDG
  • 成熟に向かう大人の女性へ
  • ワーママ
  • Aiプレミアムクラブ会員募集中!

このページのTOPへ戻る