• > 風吹ジュン × 松浦弥太郎「50代からは習慣をなくしていこう」 [おとなスタイル]

風吹ジュン × 松浦弥太郎「50代からは習慣をなくしていこう」 [おとなスタイル]

2016年12月07日(水) 09時00分配信

15年来の友人である風吹さんと松浦さん。

本物を見極める、研ぎ澄まされたセンスの持ち主であるおふたりが考えるシンプルとは?
捨てること、減らすことだけではないシンプルライフの価値を語っていただきました。
ふたりが考える“おとなのあり方”とは?

風吹ジュンさん

ふたりが考える“おとなのあり方”とは?

【センス問答】50代からの選び方

風吹ジュンさん
「50代は自分の再発見。最後の自分探し、好きなことをしました」

松浦弥太郎さん
「習慣をどんどんなくしていこうと思っているんです。いつも身軽でいたいんですね」

いつも身軽でいたい。人に答えは求めない

松浦 僕は、『暮しの手帖』をやっていたときは編集長だったでしょう。そういう肩書とかポジションがすごく落ち着かなかったんですよ。今は、肩書もなく、名刺も持たないので、その意味では、すごく自由ですね。

風吹 名刺も持たないんですか。

松浦 習慣をどんどんなくしていこうと思っているんです。だって、仕事の場合、大概、名刺交換する前にコンタクトを取れているから会っているわけでしょう? ということは、互いに連絡手段は持っている。だとすると名刺って不要じゃないですか。

風吹 なるほど。確かにそう言われればそうですね。

松浦 いつも身軽でいたいんですね。状況が変わったら「あ、わかりました。じゃ、また会いましょう!」っていう感じの身軽さは、特にこれからの僕らの年代には必要な気がする。「絶対ここから動きたくない」みたいなことは、時間がもったいない。

風吹 ああ、わかります。私も振り返れば、習慣を減らそうとすることだらけだったような気がする(笑)。まあ、私の場合、この仕事自体、毎回、相手も内容も質も変わるので、大体、習慣は持たないですよね。何かに寄りかかりすぎないようにしようと言うか、いつも一匹であることはすごく意識しています。

松浦 あ、それは僕も同じです。そこは、正直に生きることと背中合わせなのかもしれないですね。

風吹 やっぱり、自分は自分である

という意識がないと、気持ちをキープできないと思うんです。周りに合わせることばかりじゃなくて、そこはきちんと選択して泳いでいかないと。だから、松浦さんみたいに、10年いた場所から転職して、新しいことを始めて……という生き方を見ていると、この先何があるんだろうって、こちらまでワクワクします。逞たくましいなあと。でも、そうあるべきだと思う。特にこれからの時代は。

松浦 うん、そうですよね。

風吹 自分に正直に動いたときは、万が一間違った場合でも、責任とれるんですよ。人のせいにしなくていい。人にアドバイスもらったとき、よく「違うんだけど。相談していないんですけど」って私言うの(笑)。「お話ししているだけ」。答えは人に求めない。意見は聞きたい。意見は聞きたいんだけど、指示はされたくないんです。すごくわがままだけど、この生き方って、自分にすごく忠実でちゃんと歩いていける気がする。

松浦 そうね、わかります。たぶん、これは、風吹さんも一緒だと思うんだけど、いい言葉がほかに見つからないのでそのまま言うと、偉くなりたくないんですよ(笑)。いつも1年生でいい。本当に好きか嫌いかだけ、個で立つ覚悟って言うのかな。それは大事にしたいと思いますね。

松浦弥太郎さん

【センス問答】おとなのあり方

風吹ジュンさん
「“大人げない”と娘に言われたのは50代。いつも一匹であることは意識しています」

松浦弥太郎さん
「自分もずっとひとりでやってきました。偉くなりたくない。いつも1年生でいい」

何が好きで何が嫌いか本当のものが見えてくる

風吹 うちの犬が今、目が見えなくなってしまったんですよ。歳をとってね。でも目は開いてて、何かを考えているような不思議な目をするんです。それで「そばにいるよ」という感じのときは、空気でわかって尻尾も振る。そういう穏やかだけれども、すべてわかっているような様子を見ると、いろんなものを見過ぎないことも大事なのかなと思うんです。ものがあり過ぎるので、目に思考を奪われてしまっているというか。

松浦 確かに、少なくとも、もう便利なものに飛びつかないようにしたい、というのはありますね。

風吹 一度、そういうふうに社会は汚染されましたよね。私も台所道具なんかを考えてみても、いろいろな機械や道具が出ていますけど、やっぱり昔の道具で素朴な作り方でやると一番おいしくできたりするんです。必要なものって見えてきますね。

松浦 僕もね、今さらではあるんですが、最近また読書に目覚めているんです。特にあまり読まずにきた小説に。そうすると、自分が何が好きで何が嫌いか、何が嬉しくて何が悲しいのかみたいなことが、はっきり見えてくるんですよ。改めて自分を発見していく、そういう時間の過ごし方ってすごく豊かだなと思います。

風吹 いい時間ですよね。だんだん自分がわかってくるんでしょうね。

松浦 僕ね、今何が一番楽しいかなって、家族だったり、友達と会って、ご飯食べたりしながら大笑いしているときだなと思うんです。結局、幸せってそういうことかなって。それだけでいいのかなと。

風吹 友達も決まってきますよね。いろいろ出会いはあったけど、もうこの人たちなんだなって。本当のことが見えて、大切なものだけが残っていく。シンプルってそういうことなのかもしれないですね。

 

■Profile
風吹ジュンさん
ふぶき じゅん
1952年富山県生まれ。’75年ドラマ『寺内貫太郎一家2』で女優デビュー。’91年映画『無能の人』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞ほか多数受賞。NHK連続テレビ小説『あさが来た』、TBS系『家族ノカタチ』など出演作多数。『団塊スタイル』(Eテレ 毎週金曜午後8時~)では、司会を務めている。

 
松浦弥太郎さん
まつうら やたろう
1965年東京都生まれ。文筆家。『COWBOOKS』代表。18歳で渡米、執筆活動を始める。’06年より2015年3月まで『暮しの手帖』編集長を務める。現在はクックパッド(株)にて新メディア「くらしのきほん」を運営。『くちぶえサンドイッチ』『今日もていねいに。』『日々の100』など著書多数。

『おとなスタイル』Vol.4 2016秋号より
(撮影/若木信吾)

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