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美しさの基準は一つじゃない。美を知り尽くしたエディターが薦める 「大人が読むべき絵本」3冊 [VOCE]

2016年08月12日(金) 17時00分配信

今をときめく旬の人の、お気に入り本をご紹介!

“綺麗に見えないと。そんな強迫観念をリセット”


素敵な方にお会いするたび圧倒されるのと同時に、自分との違いに落ち込むこともある」と吐露する、美容エディターの松本千登世さん。「日本は、美しさの基準を一点に絞り込みたがることが多いですし、綺麗でいることがすごく恵まれているとされていますよね。私自身も、つい表面的に綺麗でいなくてはいけないと強迫観念を感じたときは、美容そのものが苦しくなります」

美容が面倒臭い、を超えて苦しくなる。そんなとき立ち返るのが、絵本『たいせつなこと』。花、スプーン、靴、空など日常に存在するものが登場し、それぞれの大切な役割や機能、存在意義が明らかに。「機能美って綺麗だなと思うんです。ちょっと突飛な例えですけれど、“母親”というひとつの使命を持った存在がつくる美しさは、子どものいない私には絶対真似のできない美しさ。この本を読むと、逆に“私は私でしかないし、それでいい”と思えるんです。すると、自分も周りの人も大切にでき、言葉で気持ちを伝えたくなります」

そして、絵本の持つ力をこんな風に語る。「どんな本も解釈は読み手に委ねられるものですが、絵本は特に幅があるように思います。気持ちの在り方や、体調など、受け手の状況によって言葉が意味深に響きます。まるでリトマス紙のように。村上春樹さんが新訳されて話題になった『おおきな木』は、無償の愛を描いた絵本で、登場人物は少年と木の二人。私はこれを読んで、まず親を思い出しましたが、ダメ彼と恋愛中の友人は号泣していました」

原題は『The Giving Tree』。少年に与え続ける木の人称は「She」となっていて、母性的な愛を想像させる。与えられる少年に感情移入するのか、与える木に感情移入するのか、それとも……。「本当に試される絵本。私は受けた愛をどこに返していくんだろうと、今すごく考えています。松岡享子さんが訳した『しろいうさぎとくろいうさぎ』は、白うさぎと黒うさぎの恋愛話。“黒がダメで白がいい”という概念は、色々なところであって、人種差別もそうですが、果たして本当にそうかな? と考えさせられる。この本には、自分が恋愛で迷ったときに救われたこともあるし、いじめで悩んでいる友人に勧めたこともあります」

美容の根底にあるのは、自分をかけがえのない存在として肯定することだろうか。「10人いたら10通り、100人いたら100通りの美しさがある」。松本さんが語るとキレイごとではなく真実のように響く。
“かけがえのない自分”を感じる3冊

無償の愛から覗く、人生のきらめき、残酷さ、諦め

“かけがえのない自分”を感じる3冊

 

『おおきな木』
シェル・シルヴァスタイン/村上春樹訳
¥1200/あすなろ書房

仲良しだった少年と木。成長するにつれ少年には欲と夢が芽生え、木は果てしなく与え続ける。「読んだ当時も感動しましたが、今読むと、目の前に親の顔が浮かんでしまって……。大人にこそ読んでほしい」と松本さん。

毛の色の違いに悩むうさぎの恋愛ストーリー

『しろいうさぎとくろいうさぎ』
ガース・ウイリアムズ ぶん・え/まつおかきょうこ やく
¥1200/福音館書店

黒いうさぎが願うのは、大好きな白いうさぎのそばにずーっといることだけ。「訳者の松岡享子さんに、大学在学中にゲスト講義でお会いして、初めて絵本の奥深さに気がつきました。以来、何度も立ち返る絵本です」

特別な理由がなくても自分を肯定できる

『たいせつなこと』
マーガレット・ワイズ・ブラウンさく、レナード・ワイスガード え/うちだややこ やく
¥1200/フレーベル館

「何も持っていないけれど、ふと今の幸せに感動できることがありますよね。この本を読んでいると、同じ気持ちになれるんです。簡単に言ってしまうと、今はやりの“自分は自分でいい”ということですが」

 

 

 

美容ジャーナリスト 松本千登世
1964年生まれ。美容ジャーナリスト、エディター。航空会社の客室乗務員、広告代理店勤務の経験を持つ。女優やモデル、美容研究家など多くの美容&人物取材で得た知識と視点に定評があり、女性誌を中心に活躍中。

 

(撮影:角戸菜摘)

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