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増田明美さん×現代俳句協会特別顧問「季節を味わう俳句」対談 [おとなスタイル]

2016年05月01日(日) 09時00分配信

俳句は一瞬を切り取る写真によく似ています

実は15年前から俳句を続けているという増田明美さん。

俳句は一瞬を切り取る写真によく似ています

宇多先生(以下敬称略) 今回の題で詠んでくださった句、増田さんらしくてとてもいいですね。

増田さん(以下敬称略) ありがとうございます。

宇多 「たすき受け」っていうのは駅伝のことね。

増田 はい、冬の風物詩ですし、駅伝は日本で誕生しました。

宇多 沿道で応援の人たちが凍えながら待っていて、たすきを受けた瞬間に走者が勢いよく走り出すシーンが目に浮かびますね。少しだけ添削するとしたら、「猛ダッシュ」と「落葉舞う」という、動きのある言葉がふたつあるので、どちらかに絞ったほうがいいでしょう。この場合は「猛ダッシュ」を立たせたほうがいいわね。だからたとえば「たすき受け 落葉の中を猛ダッシュ」にするとか。

増田 ステキです!

宇多 俳句は写真に似ています。選手か舞う落葉か、どちらにもフォーカスするとぼやけるので、被写体を絞ってシャッターを切ったほうが、映像がよりクリアに浮かび上がるのです。

増田 俳句を始めて15年ほど経ちますが、今もこうした言葉の並べ替えで、俳句がブラッシュアップされることを勉強させていただいています。ところで、俳句の楽しみに吟行(ぎんこう)がありますが、宇多先生は吟行には行かれますか?

宇多 私は皆さんとご一緒もしますが、半日時間があったらひとり吟行をするんですよ。これが楽しい。駅から適当にバスに乗っちゃうの、行き先を決めずに。ちょっとした旅行気分ですよ。デパート吟行もおすすめなのよ。

増田 楽しそうですね。私は句会も楽しみなのです。

宇多 俳句って座の文芸と言われるように、句会が楽しいの。お仲間がいるというのはいいわよ。いろいろな刺激も受けるでしょう?

増田 私はマラソンを引退してから句会に参加するようになったのですが、毎回幸せな気持ちに包まれます。自分が作った句が選ばれるかとドキドキしたり、選んだ句にこれはすごいと感動したり。黛まどか先生から褒めてもらうと、自分に自信が持てて、機嫌がよくなるのもスポーツと似ていると思います。

宇多 そうなの。年齢を重ねても何かを始めるって楽しいわよ。私も去年まで、ある大学の日本文学史の聴講に行っていたの。クラスメイトがみんな若いのよ(笑)。あれは勉強になったわね、とても楽しかった。

増田 先生、すばらしいです! いくつになっても学ぶ姿勢って大切ですね。宇多先生をお手本に、私も50代になっても新しいことにチャレンジしたいです。

宇多 いくつからでもいいの。俳句を始めるのに年齢も、学歴も、体重も関係ありません(笑)。

増田明美さん

たすき受け
猛ダッシュに舞う
落葉かな   ──増田明美さん

「冬の風物詩と言えば駅伝が思い浮かびます。特にお正月の箱根駅伝は、国民的行事と言えるのではないでしょうか。毎年ドラマがあって、2日間のレースから目が離せませんね。この句は、選手が猛ダッシュで駆ける着地の力強さで、落葉が舞うようすを表現しています」

<増田明美さん プロフィール>
スポーツジャーナリスト。1982年にマラソンで日本最高記録を作り、1992年に引退するまで数々の記録を樹立。俳人・黛まゆずみまどかさんとのテレビでの共演がきっかけで15年ほど前から俳句を始める。

宇多喜代子さん

この道の
落葉の上の
落葉かな   ──宇多喜代子先生
「いつも通っている駅までの道。2本のケヤキの大樹が四季それぞれに表情を変え、通行人の目を楽しませています。ことに春の新芽、夏の日蔭、秋の紅葉、冬の落葉は私の季節カレンダーです。落葉しきりの初冬、朝の落葉の上に夕べの落葉が重なって、冬がもう始まっています」

<宇多喜代子さん プロフィール>
俳人。現代俳句協会特別顧問。『名句十二か月』(角川選書)、『里山歳時記 田んぼのまわりで』(日本放送出版協会)など著書多数。作家の故・中上健次氏とも親交が。日本の農事や歳時記に造詣が深い。
おとなスタイルVol.2 2015冬号より

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