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松本千登世「目指すべきは、健康より元気、綺麗より素敵」 [VOCE]

2018年07月16日(月) 11時50分配信

講談社VOCE

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。
健康より元気、綺麗より素敵

講談社VOCE

健康より元気、綺麗より素敵

あるテレビ番組の鼎談で、俳優・中井貴一さんが呟いた言葉に考えさせられました。「健康であることと元気であることは違うんですよ。健康っていうのは数値で全部測ってそれがバロメーターみたいなんだけども、それに縛られすぎて元気がない人っているんですよ」。

「健康」と「元気」の関係は、「綺麗」と「素敵」のそれに似ていると思いました。綺麗になることに縛られて、素敵じゃない人がいる。健康より元気、綺麗より素敵、私たちが目指すべき理想はここにあります。
変わらない人こそ、変わっている

講談社VOCE

変わらない人こそ、変わっている

10年以上も前に、ひと目惚れして手に入れたレザージャケット。着るほどに味わいが増すのを感じて、一生似合う運命の一枚と確信していました。

ところがある秋、半年ぶりに袖を通してみると「あれっ?」。鏡の中の自分を観察して、愕然としました。マットな革と艶を失った肌や髪が「負の相乗作用」を起こして、10歳も20歳も老けて見える。ついこの間まで似合っていたはずなのに、こんなにも印象が変わるなんて!

そして、当たり前のことに気付きました。洋服は同じでも、着る「私」は、刻一刻と変化をしてる。「一生似合う」はつねにチューニングし続けなくては、決して成立しない、と……。

尊敬するスタイリストの女性がこんなふうに語っていたことを思い出しました。「あるミュージシャンの女性が言ってたの。『変わらない人は、変わってる』ってね。私もそう思う。年齢を重ねても印象が変わらない人は、じつは変わってるのよね、微妙に」。

つねに変わらない印象を持つ人は、自分を客観的に観察し、時代の空気とうまくなじませている人に違いありません。それこそが、チューニング。1年前、1カ月前、いや10日前とも昨日とも違う自分を自覚し、見てみないふりをしないこと。そのたび、洋服やメイク、ヘアスタイルを見直して、自分を更新していくこと。それを「楽しい」と思えたら、しめたもの。そんな人に、生き生きとした表情が宿る。結果、つねに変わらない人という印象が生まれるのです。
愛情と敬意が、正義を作る

講談社VOCE

愛情と敬意が、正義を作る

ある女性のお祝いに、数人で記念になるものをプレゼントしようと、私が代表して選ぶことになりました。

高い美意識と確立されたスタイルの持ち主、どうしたら喜んでもらえるだろう? そうだ、日本の手仕事がいい。そこで、ずっと憧れている「白漆」を贈ることにしました。

恥ずかしながら私自身その存在を知ったのは、ほんの数年前のこと。まろやかなミルクティー色、吸い付くような柔らかい質感。友人を介して溜め息が出るほどの美しさに触れ、私もいつか一生ものとして手に入れたいと思っていたのです。皆に提案したところ、大賛成。その友人のおかげで、ほぼ「原価」で手に入れることが可能になりました。ところが……?

「伝統文化が未来永劫続いていくためには『利益』が重要だと思うの。僅かかもしれないけれど、私たちにできるのは、相応の価格をお支払いすることじゃないかな? ちゃんと定価で買わない?」。

はっとさせられました。こんな見方があったとは! 安く手に入ることを皆は喜んでくれるはずと何も疑問を持たなかった自分を心の底から恥ずかしく思いました。

こう指摘してくれたのは美容・医療ジャーナリストとして活躍する海野由利子さん。すべてに対して深い愛情と敬意を持ち、つねにニュートラルでフラットな人。迷ったり、落ち込んだりしたとき、「どう思う?」と聞きたくなるのはそのためなのだと再認識。

日本の手仕事を通じて気付かされた正義、これからも胸に刻みたいと思います。

 

文/美容ジャーナリスト・エディター 松本千登世

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