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内山理名「頑張り過ぎの働く女性に、深呼吸をしてもらえたら」 [FRaU]

2018年10月19日(金) 16時40分配信

Photo:Akina Okada 

涙が止まらなかったのだそうだ。子供もなく、ましてやシングルマザーでもない内山理名さんが、初めて『single mom 優しい家族。 a sweet family』の台本を読んだとき――。

今回、彼女が演じたのは、北海道のニセコに住むシングルマザーの空愛美実(そらまなみ)。愛娘と二人暮らしをしながら、仕事が決まらず、貧しく、惨めな生活をしている女性の役だ。贅沢はさせてあげられないけれど、娘への愛情だけはたっぷり注ぐ愛美実。そんな彼女は少女時代、シングルマザーだった母と衝突が絶えず、中学生のときから3年間、母と引き離されて暮らすという、つらい過去を抱えていた。

あらすじだけを追うと、まるで暗く重い話のように感じられるかもしれないが、映画自体は、北海道の大自然の中で人の優しさが交錯する、心温まる作品に仕上がっている。

 
同情や共感ではなく、 一人の女性の生き方に惹かれました

©single mom優しい家族。製作委員会

同情や共感ではなく、 一人の女性の生き方に惹かれました

――映画を拝見して、まるでドキュメンタリーのようだと思いました。シングルマザーのリアルな日常というのを、実際に目にすることはないのですが、「ああ、きっとこんな感じなのかな」と、すごく素直に受け入れられたというか。内山さんの演じた愛美実の佇まいが、お腹いっぱい食べることもままならない感じがよく出ていたのも、映画に引き込まれた理由の一つですが、今回、役のためにダイエットはなさったんですか?

内山:撮影が夏でしたし、自然と少し痩せたのかな。もちろん、役として多少減量は意識しましたが、体力まで奪われてしまうようなハードなものではありません。あとは、監督がシングルマザーの取材に行ったときの映像を事前に見せてもらっていて、そこから自分なりのイメージが湧いていましたね。

――ドキュメンタリーと言っても、実際にシングルマザーの生活の中にカメラが入り込んで撮影されたとしたら、その人はカメラを意識してしまって、映画のような映像は撮れないと思うんです。映画というフィクションなのに、よりリアルな感じがしたのが、面白かった。ひもじさのあまり、おせんべいの袋に残った粉を最後までキレイに舐めちゃう。そういうディティールの描写が秀逸でした。

内山:あのシーン、実は私が監督に提案したんです(笑)。子供の頃、おせんべいの粉を舐めてるだけでも嬉しかったことを思い出して。

「おやつはこれだけよ」って渡されると、子供って、ちゃんと最後まで味わい尽くすじゃないですか。だから、リハーサルの時に思いついて、「こういうのどうですか?」って言ってみたんです。

Photo:Akina Okada 

――そうだったんですか。ところで、映画のチラシに、台本を読んで、“今の私だったら出来るかも” と思ったとありましたが、“今の内山理名” というのは、女優として、どんな局面にいるんでしょう?

内山:あらためて、“今の私” が “どんな状態ですか?” って聞かれると答えられないんですが、いろんな経験をして辿り着いた境地、とかでは全然ないです(笑)。

台本を読んだときの感情を大事にしたら、あのコメントが口から出ていたというか。「今、こういう感情になれているなら、きっと演じられる」という直感でしかない。実際に台本を読んだら、シングルマザーへの共感というより一人の女性の生き方として胸を打たれたんですね。心が動かされた。

この気持ちなら出せるかもしれない。そんなふうに強く “演じたい” と思える役と出会えるのは、本当に数年に1回ぐらいしかない。だから今は、この役に選んでもらってありがとうございますという感じですね。

完成した映画を観ても思ったんですが、シングルマザーは大変とかそういうことではなく、人と人との助け合い、見えないところでの結びつきや絆が描かれている映画です。

私が一番身につまされたシーンは、頑張ってる人って、周りから「頑張れ」って言われると傷つくんですよね。映画にもそういうシーンがあって、どこで胸がグサッとしたり、ヒリヒリしたりするかを探ることで、自分を知ることにも繋がってくる。

Photo:Akina Okada 

――たしかに、血縁関係だけじゃない家族の在り方とか、人との繋がりや助け合えるコミュニティの大切さなど、いろいろ考えさせられる映画でした。社会への問題提起もある映画に出たことで、何か考え方に変化は?

内山:私は今まで演じた役で人生が変わるような大きな影響を受けたことはないかな……。プライベートの生活の生まれた感情でしか、人生観は変わることはない。でも、この映画を通して私の視野が開けた部分があったとしたらそれは、“シングルマザー” って、たしかに生きるのに精一杯なんだけれど、だからといって “シングルマザーはこういうもの” と一括りにはできないってことです。

それぞれに違う性格と背景があって、愛美実は、すごく悩む子ってわけでもない。何かをやれば出来ちゃうんだけど、やらない人なんです。そういう人っていると思うし、女優も、シングルマザーも、会社員も、主婦も、みんなその肩書きに属性なんてなくて。誰もが人それぞれ違う。だから、括りやすい肩書きに、ステレオタイプなイメージを押し付けるべきじゃないんだな、とつくづく思いました。

PROFILE

内山理名 Rina Uchiyama
1981年11月7日、神奈川県生まれ。1998年の単発ドラマ「美少女H」(CX)の主演で女優デビュー。翌1999年、野島伸司脚本「美しい人」(TBS) などの出演を経て、2003年『卒業』で映画初主演を果たす。2005年「大奥〜華の乱〜」にて連続ドラマ初主演を務め、2008年の蜷川幸雄演出『リア王』では舞台にも進出。以降、幅広い女優活動で培われた確かな演技力で数々の話題作に出演。 2017年には、『マチ工場のオンナ』でNHKの連ドラに初主演を果たし、現在、NHK BSプレミアム「雲霧仁左衛門4」に出演中。紀行番組のナビゲーターやドキュメンタリーのナレーションを務めるなど活躍の場を広げている。全米アライアンスRYT500を取得し、ヨガインストラクターとしても活動している。
INFORMATION

©single mom優しい家族。製作委員会

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映画『single mom 優しい家族。a sweet family』


北海道のニセコで、愛娘エミリー(長谷川葉音)と二人暮らしをしながら、仕事を探している愛美実(内山理名)。彼女が役所に相談に行くと、町役場の職員で同じくシングルマザーの犬塚優子(石野真子)と出会う。一方、エミリーも、人と関わることを拒絶して生きてきたミニカー職人の大西鉄二(木村祐一)と少しずつ心を通わせ……。

核家族化が進み、近所付き合いも疎遠になった現代日本では、かつてあった町ぐるみでの子育てなど、望めないのが実情で、シングルマザーの職探しは困難を極める。シングルマザーが幸せに生きる道はないのか。劇団マツモトカズミ主宰の松本和巳が、シングルマザーを取り巻く状況を目の当たりにし、自らメガホンを取った本作。社会貢献の新しい取り組みとして、収益の一部が、シングルマザー世帯の子供たちのために寄付されることになっている。2018年 10月6日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。

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