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多部未華子「稽古はいつも “意味が分からない”(笑)」 [FRaU]

2018年09月12日(水) 10時40分配信

Photo:Aya Kishimoto

この夏、ジャン=ポール・サルトル作『出口なし』で、大竹しのぶさんと段田安則さんという、演劇界の中でもとりわけ “濃い二人” とともに、少人数芝居に挑戦する多部さん。舞台の案内には、「窓もなくドアも開かない密室に、訳ありの過去を背負った3人の男女が、互いを挑発し合いながら、それぞれの人生を語り出す」とあるが……。
“よくもまあ” と言われるところに足を突っ込んでしまったみたい(笑)

Photo:Aya Kishimoto

“よくもまあ” と言われるところに足を突っ込んでしまったみたい(笑)

――“サルトル” というと、哲学者のイメージが強いので、どうしても難解な作品を想像しがちです。多部さんが、この作品に出演を決めた理由はなんですか?

多部:たしか2年ほど前にこのお話をいただいたのですが、最初に渡されたのが昔の翻訳本で、それは、言葉遣いも古風で、読んでも意味が全く分からなかったんです(笑)。女性が二人のうち、どっちの役をやるかも伺っていなくて……。

ただ、少人数のお芝居をやってみたかったことと、大竹さんと段田さんと共演できることにワクワクしました。あとは、演出の小川絵梨子さん。私は、今まで女性の演出家の舞台に出演したことがなかったので、いろんな新しいことが詰まった舞台だなと思って。

出演を決めてから、今度は小川さんご自身が翻訳した方の台本をいただきました。そうしたら、3人の台詞のやり取りを読みながら、シンプルに “わー面白そう” と思えたんです。登場人物が、冒頭以外はずっと3人で、それがみんな過去を背負っている人たちの設定で……。全体的に、“楽しそう” って直感しました。私、普段から直感で生きているので(笑)。

Photo:Aya Kishimoto

――以前、『サロメ』(2012年)という舞台でもインタビューしているんですが、そのときは、舞台デビュー作の『農業少女』で、「千秋楽の時にやっと作品の意味が分かった」というようなことをおっしゃっていました。

多部:アハハ。そうです。だいたいいつも「意味が分からないな」と思いながらやっています(笑)。最近ちょっとは成長して、稽古中には、何となく話が分かるようになってきました。

――松尾スズキさんが主宰する「大人計画」の舞台への出演が比較的多いですが、蜷川幸雄さん演出の『私を離さないで』や、白井晃さん演出の『オーランドー』など、舞台の時は、世界観の確立されたものの中に自然にすうっと入っている印象があります。

多部:映像だと、さすがに外国人の役はできないし、いただく役のキャラクターがどうしても似てしまう。でも、舞台なら外国人とか、『オーランドー』のように性別も途中で変わってしまう人とか、一筋縄ではいかない人を演じられる。そういうある種の飛躍を、舞台では結構楽しんでますね。

――演出の小川絵梨子さんの印象はいかがですか?

多部:あ……いつも頭をかきむしっている印象! ……そういうことじゃないですよね(笑)。ただどうしても、初めて会ったときの印象が強いです。すごくタバコ臭い場所で、タバコを吸いながら頭をかきむしってたので(笑)。作品から来る印象は、男っぽい性格の方なのかな、と。
――さっきの、「大竹さん、段田さんと舞台で共演したい」ではないですが、舞台の場合、その都度その都度俳優としての “欲” が湧いたりしますか?

多部:それはあります。ただ、『出口なし』への出演が決まって、公演のチラシを見た役者さんからは、「よく、こんな濃い共演者に挟まれて平然としていられるね」というようなことを言われました。「よくもまあ、ねぇ……」みたいな(笑)。

私の中では、「とても刺激的だし、いろんな意味で勉強になりそうな数ヵ月だなぁ」という感じでいたのが、そう言われたことで、「そうか、私は “よくもまあ” って言われるようなところに脚を突っ込んでしまったのか」と初めて気がついたんです。もちろん、新しい舞台に挑戦するのは毎回怖いです。でも、周囲から「よくもまあ」と思われるような認識はなくて(笑)。

――よく俳優の方に伺うのは、舞台初日に、台詞が一つも出てこない夢を見るという話。

多部:役者あるあるですよね(笑)。私も何度もあります。台詞が一つも頭に入ってないのに、幕が開く夢は。

――そういう恐怖心はあっても、大先輩に挟まれて物怖じしないのは、根本的に度胸があるのか、よっぽど好奇心が強いのかのどちらかでしょうね。

多部:そう! 好奇心ですね! 私、何をしていても、完全に好奇心が勝つんです。なんでもやってみたいんです。危険な場所があったら、つい足を突っ込みたくなるタイプ……ですね(と、振り返って事務所スタッフに同意を求める)。何事も。

――それは……周りが大変ですね(笑)。

多部:そうだと思います(笑)。

――チャレンジした結果、前に進ませてくれた経験が、さらに好奇心を強くさせている?

多部:作品を一つ終えた時に、「何かを得られてるな」と強く実感したことはとくにないです。何かをやるときは、純粋に興味があるかないかだけ。それと直感。「どうなるんだろう?」と、予測不可能なことが起こりそうな感じが楽しいんです。

PROFILE

多部未華子 Mikako Tabe
1989年生まれ。東京都出身。02年デビュー。03年映画『HINOKIO』のメインキャストにオーディションで抜擢され、05年同作でブルーリボン賞新人賞を受賞。09年NHK朝の連続テレビ小説「つばさ」でヒロインを演じる。10年野田秀樹脚本、松尾スズキ演出の『農業少女』で初舞台を踏み、読売演劇大賞・杉村春子賞を受賞。以来、年に1〜2本のペースで舞台出演が続き、2012年には『サロメ』(宮本亜門演出)、『ふくすけ』(松尾スズキ作・演出)、2014年には『私を離さないで』(蜷川幸雄演出)、『キレイ〜神様と待ち合わせした女〜』(松尾スズキ演出)、2015年『ツインズ』(長塚圭史演出)、2016年には『尺には尺を』(蜷川幸雄演出)、2017年『オーランドー』(白井晃演出)など、そうそうたる演出家の作品に出演。2018年秋には、『TOP HAT』で初のミュージカルに挑戦する。
舞台『出口なし』

INFORMATION

舞台『出口なし』

窓もなくドアも開かない密室――。訳ありの過去を背負った3人(大竹しのぶ、多部未華子、段田安則)がそこに案内される。追いつめられた人生のデッドエンドで、3人は何を語るのか――? 実存主義を提唱した哲学者ジャン=ポール・サルトルの劇作家としての代表作。上演台本・演出を手がけるのは小川絵梨子。8月25日(土)〜9月24日(月・休)新国立劇場小劇場 9月27日(木)〜30日(日)サンケイホールブリーゼ

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