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【齋藤薫】女は究極、太ったら、老けてはいけない。老けたら、太ってはいけない。 [VOCE]

2018年08月31日(金) 20時10分配信

決定的に、歳をとるのが下手な人と上手い人がいる

文/ビューティジャーナリスト斎藤薫

決定的に、歳をとるのが下手な人と上手い人がいる

若く見える人と老けて見える人……私たちはこれまでもっぱら、そういう分類の仕方をしてきた。でも今やその分類に、方向性とパワーを持ったベクトルが加わっている、という話をしよう。つまり、若く見えるか老けて見えるか、ではない。進化する人か、劣化する人か、既にそうした分類が始まっているという話を。

劣化する……美容上、絶対に耳にしたくない言葉である。最近はさすがにあまり聞かれなくなったのも、響きの中に悪意が含まれていて、人に対して使うことに世間が後ろめたさを感じたから。でもなぜ悪意? 単なる衰えとは異なり、“お直し”のやりすぎなのか、不自然な変貌を見せることを咎める意味があるから。あるいは美しかった人が、容色の衰え以上に“人として精彩を欠いたこと”へのブーイングの意味があるから。いずれにせよ劣化は、歳を重ねていく過程で、老化の宿命以上に、本人が自らを壊してしまったケースを指す。必要以上に自らを変貌させてしまったケースを指すのだ。

言い換えれば、劣化は上手に歳を取れない人が陥る結果。そう、世の中には、歳の重ね方が上手な人と下手な人がいる。これはもう決定的にいる。例えばの話、AKB48みたいな大人数のユニットが全盛期を超え、続々と卒業していったのちの姿にも、その上手下手がはっきり見えてくるはずで、つまりは20代にだって、歳を重ねる上での上手下手があるということなのだ。

ではその上手下手の分かれ道って何なのだろう。じつはこれ、結局のところ人間性。歳の重ね方が下手な人は、要するに、人としてのバランスが悪い。アンバランスだから、どちらかに偏っていってしまう。結果、必要以上に変貌する。そのことに気づきがないのもバランス感覚の悪さゆえ。逆を言えば、心のバランスのとれた人は不思議に劣化しないのだ。全く同じことは、同窓会にも言えるはず。高校卒業から10年そこそこだって、劣化する人が現れる。その原因が人としてのアンバランスだということ、みんなうすうす感じていたはずなのだ。

逆に、20代でも既に人よりずっと輝いている人は、次の同窓会ではもっと輝いている。その次はもっと。みんなとの差はどんどん開いていくばかり。つまり単に若く見えるのではない。まさしくそれが、歳の重ね方が上手い人。それこそが、進化する人なのだ。

ケイト・ブランシェットという人がいる。世に出てきた時は、いわゆる美人女優の枠内にはいなかった。29歳で主演した『エリザベス』でようやく第一線に躍り出た訳で、完全に遅咲き。でも以降みるみる存在感を強めると同時にどんどん綺麗になって、どんどん輝きを増し、文字通り進化し続けて今49歳。先日のカンヌ国際映画祭の審査員長及びプレゼンターとして登場した時の美しさと、人間としての輝きには目を見張った。100名近い女性を従えての“女性の地位向上のスピーチ”も素晴らしく、20年間進化し続けた人であるのを改めて見せつけた。単に若く見えるのではない、その美しさは全く危なげなく、衰えていく気配さえ感じない。上向きの太い矢印を持った人だから。この先もずっと進化し続けて、10年後も予想できないほど。それも、この人の人間性のなせる業なのだ。

離婚を一度もしていないから人格者、なんてもちろん言えないが、結婚離婚を繰り返すのが当たり前のハリウッドにあって、劇作家の夫とは20年以上連れ添い、4人の子供がいる。出演映画の約半分で賞を総なめする天才にして驕りなし。女優のアラばかり探しているマスコミにも悪く言われたことが一度もない。やはりバランス感覚が半端ではないのだ。知性と社会性、勇気と愛情、すべてを備えていることも一つのバランス感覚だろうか。ともかくこういう女性が、死ぬまで進化するのだという事実を知っておくべきである。

ネガティブ要素は、2つ揃えては絶対いけない

一方、劣化のベクトルを背負わないために、 ぜひ知っておいてほしいことがある。マイナス要素を同時に2つ以上持たないことである。例えば、少し太ってしまった上に、不機嫌に見えたら、それだけで見事な劣化。太ってしまったら、その分だけにこやかに。増えた体重を笑い飛ばすくらいの明るさで、太った分のネガティブを消すのだ。もし不機嫌な顔で生きたいならば、逆に完璧な美貌を作っておくこと。ネガティブを2つ以上持ってしまうと、女の場合“掛け算”になり、悪意に満ちた劣化という評価を自ら引き出してしまうのだから。

そう、プチ整形のやりすぎも、やりすぎだけならまだしも、それが不自然に見えた時に、劣化になる。仕事や私生活が上手くいっていないタイミングで、美容をないがしろにするのも劣化になる。恋愛が上手くいかないなら、その分キレイになるような足し引きの計算をしていかないと、女は簡単にネガティブを2つにして、自ら掛け算してしまうのだ。するとイメージが劇変、別人格に見えてしまう。女としてまるで別のカテゴリーを生きているように。残念なことに、そういう自分にも人はすぐ慣れてしまうから、元に戻るのも至難の業。自分自身にとっても、マイナス要素が二重に覆いかぶさるのは致命的で、そう簡単には抜け出せなくなるのだ。

ところが不思議なもので、マイナス要素も一つなら、他のプラス要素にかき消される。たとえ肌が疲れていても、生き生きした表情をしていれば、肌のくすみなど吹き飛ばされるということ。一つのネガティブなら許されるのだ。そこにもう一つマイナス要素を加えてしまうから、掛け算になって、増幅する。ネガティブはネガティブを呼ぶから、もっともっと壊れていく。だから劣化は、進化と逆向きのベクトルを示しているのである。

従って女は究極、太ったら、老けてはいけない。老けたら、太ってはいけない。そういうこと。太ると、女はだいたい少し老けて見えるから。そこで提案。少しでも太ったら、まず笑顔。加えて服や髪型やメイクを意識的に派手にしよう。悲しい印象を絶対作らないために。老け感を掛け算にしないために。装いも思い切り明るく前向きに、華やかにする。そのくらい、反動をつけてマイナスからプラスへと大きく揺り戻してしまってほしいのだ。でないと、全てが一気にネガティブに向いていってしまうから。

現代最高のオペラ歌手と謳われるアンナ・ネトレプコは、美貌でも他の追随を許さないほど圧倒的な存在で、あらゆるタイトルロールを独占するような時期もあったほど。ところがある時からみるみる太り始め、コロコロになってオペラ界を失望させる。オペラ歌手にはよくあることとはいえ、何十年に一度の美人プリマドンナだけに、喪失感は大きかった。ところが本人、悪びれる様子もない。インスタでド派手なファッションに身を包み、ノリノリではしゃぎ回る。舞台でも全く臆せず、絶世の美女を高らかに歌いあげ、声は相変わらずの美女声。何なのだろうと最初は呆気にとられたファンたちも、なんだかだんだん楽しくなってきた。だんだん美人に見えてきて、改めてこの人の偉大さと魅力に気づいたからだ。やっぱり世界一のソプラノだと。結果、出番があまり減っていない。不思議だ。この人もやっぱり進化する女なのだ。これほど容姿が問われる仕事で、パンパンに太っても役を減らさないのだから。

マイナス要素が一つ生まれても、何かを諦めたり、負の世界に逃げ込んだりしてはいけない。決して力を抜いてはいけないのだ。他のマイナス要素が入ってこないように。かくして、時代は進化する女か、劣化する女か。人生をかけて進化する女へとシフトしてほしい。一生輝きを増やし続けるために。

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