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【家族問題Q&A】末期がんの母が前向きになれる環境を整えてあげたい [mi-mollet]

2018年08月13日(月) 14時00分配信

しいかさんからの質問

Q.
末期がんの母が
少しでも前向きになれる環境を
整えてあげたいのですが……




年明けに、70歳になる母に末期がんが見つかりました。抗がん剤の内服治療をして落ち着いていましたが、先日悪化が認められるように。私は看護師で、一昨年、母と同じマンションに引っ越し、できるだけそばにつきそい、夕食も毎晩ともにしています。母は、孫である私の娘と過ごす時間が一番幸せそうです。私は、今の日々の時間を大切にしつつも、「何かしないと」と焦る気持ちもあります。またこれまで出会ったがん患者さんには、前向きに闘病する方もたくさんおられました。落ち込む母が少しでも前向きになれる方法はないか、そうすれば免疫力も上がるのに……と思うのですが、無理強いするのも……と思ったりします。金子さんとご主人はどのようにして前向きに病と向き合えたのか、アドバイスいただきたいです。また不器用な父は優しい言葉や態度で母に接することができず、母も諦めてはいるのですが、そんな父母の関係もどうにかできないものかと悩んでいます。(39歳)

特別ゲスト 金子稚子さんの回答

A.
お母様、お父様、娘さん……
皆、個々に向き合われているはず。
その思いをつなぐ“杭”になれると良いですね。




お母様のこと、大変お辛いことと思います。しいかさんは看護師さんとのこと。それゆえ知識と経験の蓄積があると思いますが、お母様が前向きになれるよう働きかけるということは、あまり考えなくてもいいのかな、と思います。というのも、それはお母様の問題であり、お母様はお母様なりに向き合われていると思うからです。それは家族に関しても同じで、お父様も、お父様なりに配偶者を失うということについて向き合われていることでしょう。しいかさんもまた然り。そして、個々に向き合った思いというのは、共有できないものです。そこを無理に繫ごうとすると、かえってこじれてしまうこともあります。それよりも、個々に向き合うその時間を大切にしていただきたいと思うのです。

ただ、家族の話を聞くことは大事です。ですから、お母様やお父様が「思いを外に出したい」と思ったときのために、しいかさんにはいつでも聞けるポジションにいてほしいのです。一番悲しいのは、「この人に話しても仕方ない」となってしまうことだと思いますから。では、話せる相手になるか話せない相手になってしまうか、その境界線はどこにあるのでしょう? 私は終活ジャーナリストとして多くの患者さんとそのご家族に接してきて、それは“してあげたい”の度合いにあると感じています。“してあげたい”が強すぎる人には、実は患者さんは胸の内を打ち明けられないものです。というのも、その“してあげたい”という矢印の方向は、患者さんではなくその人自身に向いていることが多いから。つまり、してあげることで自分が満足したい、という思いが潜んでいるのです。きついことを言って申し訳ありませんが……。

患者さんは、用心深く見守ってくれている人、待ってくれている人に、「話したい」という気持ちになるようです。しいかさんも「大切なお母様の気持ちだから理解したい」と見守っておいでですが、そのメッセージがお母様に伝わるかどうか……。しいかさんは看護師さんですから、どうしても「前向きになれば免疫力も上がるのに」などと思ってしまうのでしょう。でも、私も夫の看病を通して感じたのでよく分かるのですが、それはあくまで本人が向き合うこと。お母様はしっかり向き合われていると思うので、お母様を信じてあげてほしいのです。そして、お父様も……。

もちろんお母様は向き合われている中で、感情が揺れ動くでしょうし、爆発することもあるでしょう。私はそんな夫にとっての、動かない“杭”になろうと決心しました。常に変わらず夫の隣にいて、「言いたいときには聞かせて」と接していたのです。しいかさんが、お母様の心の帰ってこられる場所になれるかどうかは、今が正念場だと思います。「娘だからこそ時には感情をぶつけてもいい」と思ってもらえるかどうか……。それには、「お母さんが辛いのも受け止めたい。一緒に考えたい」などと、余白を残したメッセージを伝えられるのが良いのではないでしょうか。

同時に、お父様の気持ちも受け止めて、聞いてあげてください。男性は、感情の出し方が分からないという人が多いものです。そして、娘さんも幼いなりに何か感じるところはあるはずですので、娘さんの気持ちも聞いてあげて。そうやって皆の思いを聞くことは、家族関係を築き直す、という行為でもあるのです。それができれば、万が一のことがあった後が全然違ってきます。悲しい未来にも、きっと少し光が差すことと思いますし、それは何より家族を遺していく方の思いでもありますから……。

いかがですか?
金子稚子さんの回答、ぜひご参考になさってください。

PROFILE

金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)『死後のプロデュース』(PHP新書)『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。

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