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瀬戸内海に浮かぶ宿「ガンツウ」で贅沢なクルーズ旅 [FRaU]

2018年07月28日(土) 10時30分配信

ファーストクラスの船旅をぜひ体感してください。

ラグジュアリーなクルージングを提案する「ガンツウ」。内装、食事、全てが上質であることにこだわり本当の心地よさを極めた時間と空間を体験しました。
流れる海と島の景色船だけで完結する旅。

呉と松山の間に浮かぶ鹿島へ上陸。

流れる海と島の景色船だけで完結する旅。

一般的に、旅とはどこかに行くことをいう。海外でも国内でも、移動は速いほど、旅先での滞在は長いほど良い。現代人の休暇は短い。ロスがないよう効率的にスケジュールを組むのが常だ。

しかしそれとは全く別の旅もある。2017年秋に就航した「ガンツウ」での旅がその一つ。ガンツウとは、母港である尾道から出港し、2泊3日から3泊4日、瀬戸内海を航海する船。ルートはいくつかあるが、今回は西回り。尾道水道を通り抜け、しまなみ海道沿いから呉へ。宮島沖・大三島沖で錨泊し、戻る。

2日目の朝7時、宮島の厳島神社を参拝。

離島や本島にテンダーボートで移動し、散策するなどのアクティビティも用意されているが、基本的には船の中で過ごし、戻る。例えば福山駅から厳島神社に行くなら車で3時間ほどの距離を、3日かけて航海するのである。

とはいえ、2泊3日で40万円から(スタンダードルームで2名1室利用時の1名の料金。食事やアクティビティはオールインクルーシブ)というお値段は夢のまた夢……と思いきや、幸運にも乗船切符を手に入れてしまった。一体どれほどゴージャスな船旅なのか、くまなく見させてもらいます。

ガンツウとは瀬戸内海の漁師たちが仕掛ける網に時折かかるカニの呼称。地元の人たちからも愛されるようにと名付けられた。

出航地であるベラビスタマリーナから見えるガンツウは堅牢な建物で、流線型でもなければ派手な装飾もない。正直、それは豪華客船にも、いや船にすら見えなかった。

グランドスイート(約80㎡)の客室。広いテラスが特徴。

促されて緊張気味に中に入ると、飛び込んできたのは漆喰の白の世界。自然光が入り明るく、アートギャラリーのようだ。2階の客室に入ると、柔らかな木の匂いに包まれる。ナラの家具とベッドに、アルダーの天井、客室テラスは杉の壁に松のベンチ。シンプルで上質なインテリアに格式張った風情はなく、穏やかな静寂が訪れた。大きな窓が外の海を絵画のように美しく縁取る。絶え間ない波を見ていると、普段、陸から見る海とは違うものと気づく。

3階のラウンジ。日本人の肌を美しく見せるというサワラの木材がここ以外でも多用されている。国産家具や障子が和モダンな雰囲気。民芸や建築にまつわる蔵書もあり、ライブラリーとしても。

3階には縁側、大きな木のテーブルと椅子が並んだオープンデッキ。たっぷりとした空間の中で刻々と変わる多島美を眺められる特等席だ。「素」の気持ちよさってこういうことを言うのだろうか。

ガンツウを設計したのは住宅建築で知られる建築家の堀部安嗣氏。船の設計は初めてだった。当然ながら、船の安全基準に則った耐火性のある材料しか使えないなどの制約も多い。しかし堀部氏は、瀬戸内の風景をフレームする素材は、金属でもコンクリートでもなく木が一番だとして、木に不燃処理を施して使うほどにこだわった。大切にしたかったのは肌触りの心地良さ。それはつまり “時間のデザイン” だ。豊かな気持ちでゲストが過ごせる空間を作ることが、真の贅沢だと。
心地良く心身をリセットするアメニティとスパ。

全部屋共通の<THREE>のアメニティ(写真はその一部)。バランシング クレンジング オイルからローション、エマルジョンなど全10種類。期間限定でUVプロテクターも。

心地良く心身をリセットするアメニティとスパ。

口に入れるもの、肌に触れるもの、それらは全て、徹底してスタッフの目利きによって選ばれている。それはアメニティがTHREEであることからもわかる。これにテンションの上がらない女性はいないです。シャンプーやコンディショナーなどだけではなく、クレンジングに化粧水、乳液などのフェイシャルラインから、ボディローション、ハンドクリームまで全室に揃っているのだ。基礎化粧品のみ当初は価格帯の高い部屋のみだったが、全てのお客様に使っていただこうとした結果なのだとか。うーむ、なんて太っ腹。

エステで使用している化粧品はガンツウのために開発された逸品。

陶酔の時間はまだ用意されている。瀬戸内のニガリを含む入浴で、ミネラルを取り入れ老廃物を排出する彫刻リンパ(R) エステコース「ガンツウスペシャル スパトリートメント」(※)。ここにゴッドハンドがいたのだ。船上でしか弾かない伝説のピアニストを描いた『海の上のピアニスト』という映画があったが、担当の高橋さんはまさに「海の上のエステティシャン」。タッチすべてに極上の気持ちよさと“効いている”確信があった。もっと意識して味わっていたかったけれど、たちまち悦楽の沼に沈み込む。この船でしか味わえない伝説となりそうだと思いながら……。
(※)スパは別料金。

2階に位置する大浴場はサウナも完備。

朝日を部屋から見てぼーっとし、バスタブにお湯をためてぼーっとする。ポツンとある島や、豊かな島並みを見るともなく見る。朝も昼も夕も、選び抜かれた地産のものを使った、極上の食事をいただく。ちょっと体を動かそうと思ってジムにいき、そのあとは大浴場でサウナに入る。小腹がすいたらお茶とお菓子をいただきにラウンジへ。日が落ちていく様子を、コーヒーを飲みつつ眺める。

海を赤く染める幻想的な朝焼けは、早起きして見る価値あり。

どこにいても瀬戸内の海がそこにある。ゆったりしたスピードで進む船の上にいると、はじめは自分がどこにいるか気になった位置も、2日目には全く気にならなくなっていた。ただその場にいることが心地良いからだろう。動き続ける非日常の中の日常なのだ。

リラックスさせてくれるスタッフの笑顔。

3日もいると、自然と船の中にコミュニティが生まれる。ガンツウは、乗客38名定員に対してクルーの数が最大46名。みんな同じ空間を共にする仲間だ。彼らのサービスとはマニュアルではなく、思いやり、気遣い、柔らかさである。

6席しかない鮨カウンターでいただく、淡路島の名店「すし屋 亙」が監修する鮨。

豪華というと、ゴテゴテと飾り立てたものを想像するけれど、むしろガンツウは徹底してミニマルだ。自分らしく、等身大のままで最上の心地良さを得られる豊かさ。お金とともに時間を使う贅沢というものがあることを知った。例えば三つ星ホテルに滞在するのとも違う。豪華列車での旅ともまた違う。小さな海を浮遊する喜びを教えてくれる、船のファーストクラスの旅なのである。

guntû(ガンツウ)
東京都千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテル本館中2階

 
●情報は、FRaU2018年7月号発売時点のものです。
Photo:Kazuho Maruo

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