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篠原涼子「舞台で鍛えられて、知らない自分に出会いたい」 [FRaU]

2018年07月27日(金) 11時40分配信

Photo:Akina Okada

ノーベル賞作家ユージン・オニールの傑作戯曲『アンナ・クリスティ』で、13年ぶりに舞台に立つ篠原さん。舞台は1920年代のニューヨーク。年老いた船乗りが、5歳の時親戚の家に預けて以来会っていなかった娘アンナからの手紙を受け取り、15年ぶりに再会する。幸せな生活を送っていると思っていたアンナは、親戚から虐待を受けたのち、娼婦に成り下がり、身も心も傷ついていた――。

45歳の篠原さんが、20歳にして辛い過去を背負ってしまった女性を演じるこの舞台。あらすじを辿れば暗くて重い内容なのに、篠原さんのキャラクターに対するアプローチは、とても客観的で、軽快だ。

20歳の役に、つい「落ち着いて!」って言いたくなる(笑)

――今回の役は、親戚から虐待され、あちこちを転々とした後に娼婦になるというつらい過去を背負った女性です。また、せっかく出会って好きになった男性も、アンナの過去を知ると失望し、彼女の元を去ってしまう……。

篠原:アンナは、感情の波がすごくある人。キレたり、怒ったかと思うと急に優しくなったり……。でも、愛に飢えているから、恋愛には固執するんです。

“恋したい” じゃなくて “恋に溺れたい” 願望が強い。そんな中でふと、過去の、親に捨てられたときの自分に戻ったり。父親も含め、自分がさまざまな男性に振り回されたことに怒り狂ったり……本当にこう……不安定な人(笑)!

20歳の役なので、45歳の私から見ると、「落ち着いて! 大丈夫だからね」って言いたくなる(笑)。でも、お芝居は、その “落ち着いてない状態” でやらないといけないので、そこが難しいですね(笑)。

――でも、人種や年齢に関係なく、ある一つの世界観の中で練り込まれたキャラクターを演じられることが、舞台の面白さでもあるのでは? 時代や年齢、人種、ときには性別だって超越できるわけじゃないですか。

篠原:それは確かにそうなんですが、台本を読んでいると、「どうして、ト書きのところで何度も “20歳” であることを強調するんだろう?」って。そこは若干戸惑ってます。「嫌がらせみたい」って(笑)。

こっちが自分の年齢に過敏になってしまっているだけで、嫌がらせであるはずがないんですけど。別に、お客様の前で「私は20歳です!」って宣言するわけじゃないし、「いいじゃん、私たちの中では37歳設定でも」とか思っちゃう(笑)。

Photo:Akina Okada

――でも、『放浪記』では森光子さんも、ちゃんと14歳に見えました。

篠原:やはり、森さんぐらいになると “ザ・女優” ですから。それこそ、役にのめり込むエネルギーが尋常じゃないと思うんです。『放浪記』は、若い頃からやられているし、その頃の感覚を忘れていないというのもあるでしょうし。

――いや、舞台に立てばきっと、篠原さんもきっと20歳に見えますよ。

篠原:もう、そこはあんまり引っ張らないでください(笑)。

――(笑)。すみません。でも、演者と観客が想像力をぶつけ合うことができることも、舞台の醍醐味だと思うので。

篠原:そうですね、演じていくうちにどんどん、自分の中で想像力を広げていけて、ちゃんとそこに演技力も追いついていければいいんですけど(笑)。

――ところで、話は前後しますが、2001年に『ハムレット』で初舞台を踏んで、その4年後に、また蜷川さん演出で『天保十二年のシェイクスピア』に出演しています。4年ぶりとはいえ、そのときは初舞台のときよりは緊張せずに臨めたんですか?

篠原:カンパニーが大人数で、私の役も全然出ずっぱりじゃないし、初舞台に比べたら、安心感はなくはなかったです。

――舞台は、一度立つと病み付きになると言う人もいますが?

篠原:私は、ならなかったですね(笑)。もちろん舞台ならではの面白さは感じましたけど、ただすごく難しいから、そう簡単にほいほいやることじゃないな、と。じっくり取り組まないといけないものだってことを再確認した感じです。

ガッて持続してやるエネルギーが、自分にはそこまでない気がして。トチったらどうしようとか、ネガティブなことばかり考えちゃってた。割りと心配性なんですよね。すぐ臆病になっちゃう。

映像って、瞬発力が試される場所なんですよ。美術さんや照明さん、大道具さん小道具さん、いろんな人たちが綿密に準備した空間に立って、スタートの声がかかると、“ドンッ” って感情を持っていく感じ。

でも舞台は、それこそホン読みの段階から、1から10まで、気持ちを変えないで進んでいく。だから、深く感情を掘り下げられるし、テンションもどんどん上がっていきます。どこまで行っても、「カット!」の声がかからないから、役になり切ってずーっとやれる。

自分でも知らない自分が出てくる可能性が高いんですよね。今回はだから、演出家さんにいろいろ教えていただきたいです。自分の知らない自分を見てみたいし、自分でも探したいと思っています。

PROFILE

篠原涼子 Ryoko Shinohara
1973年生まれ。群馬県出身。1990年デビュー。94年「愛しさと せつなさと 心強さと」をリリース、200万枚を超えるヒットとなる。その後ドラマ「アンフェア」「ハケンの品格」「ラスト シンデレラ」などに主演。2001年、蜷川幸雄演出の『ハムレット』オフィーリア役で初舞台を踏む。『アンナ・クリスティ』は、2005年『天保十二年のシェイクスピア』(蜷川幸雄演出)以来、13年ぶりの舞台出演で、舞台初主演。
INFORMATION

舞台『アンナ・クリスティ』 

INFORMATION

1920年代、アメリカの近代演劇を築き上げた劇作家ユージン・オニール。1921年に書かれ、ピューリッツァー賞を受賞した傑作戯曲を、これまで「夜への長い旅路」「喪服の似合うエレクトラ」「氷屋来たる」とオニール作品3作品も手がけた栗山民也が演出。客席数480席の濃密な空間で、緊迫感溢れた舞台が展開される。主役のアンナが恋に落ちるアイルランド人の火夫マットに佐藤隆太。

大阪公演:
2018年 8月3日(金)〜5日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 梅田芸術劇場

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