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篠原涼子「舞台ならではの、セッション感を楽しみに」 [FRaU]

2018年07月25日(水) 11時40分配信

Photo:Akina Okada

インタビューをするたびに、「エンターテイナーだなぁ」と思わされる。撮影中も、特に指示はしていないのに、まるで、「ほら、撮るなら今だよ!」とでもいうように、次々と魅力的な表情と仕草を繰り出し、インタビューでは大人らしく、しっかりと仕事に向き合いながら、適度に自分のダメエピソードを挟み、周囲を和ませる。

武器は、ビューティとキュートとユーモア――。年齢を重ねて、妖艶さと可愛らしさという相反する魅力を、どちらも深めている彼女が、13年ぶりに舞台に挑む。

ロンドン・ウエストエンドで全公演ソールドアウトを記録した『アンナ・クリスティ』は、ノーベル賞作家のユージン・オニールの傑作戯曲。1930年に公開された映画は、ハリウッドの名女優グレタ・ガルボが主演アンナを演じ、世界的名作として知られている。
ホン読みで逃げ出したかった28歳初舞台の思い出(笑)

Photo:Akina Okada

ホン読みで逃げ出したかった28歳初舞台の思い出(笑)

――13年ぶりの舞台です。久しぶりに舞台をやろうと思ったのはなぜですか?

篠原:役者としては、映像作品を集中してやっていたからです。たまたまチャンスがなかったというのもありますが、過去に2度、舞台を経験したときに、楽しさも感じつつ、やはり舞台をコンスタントにやっていくことには不安がありました。

今回お話をいただいたタイミングが、ちょうど、自分の中に変化が欲しかった時期で……。映像作品とは違う角度から、お芝居にアプローチできる仕事に挑戦してみたい意欲が湧いてきたときだったんです。あと、「やる!」という踏ん切りがついたのは、演出が栗山民也さんだったこと。

よみうり大手町ホールという、客席数が500席に満たない小さな劇場でやれることも魅力でした。小劇場なら、お客さんとの一体感も感じられるだろうし、呼吸を合わせるような、セッション感が感じられるかもしれない。

もちろん、難しいことは重々承知していますが、不安や怖さより、「やってみたい」という気持ちが勝ちました。

Photo:Akina Okada

――13年も舞台を離れていた一番の理由は何だったんでしょう?

篠原:一観客として舞台を観に行くと、やっぱりとてつもないエネルギーに圧倒されるんですね。あれだけのエネルギーと集中力を放出する人たちを目の当たりにして、「今の私にはまだ無理だろう」という消極的な気持ちになっていたところがあったんだと思います。
――篠原さんが初舞台を踏んだのが2001年。蜷川幸雄さん演出の「ハムレット」でオフィーリアを演じています。初めて舞台に挑戦したときは、どんな心境だったんですか?

篠原:すごく勇気がいりましたね。28とかだったかな。今でもよーく覚えてますけど、ホン読み(キャストが揃って台本を読み合わせする最初の稽古のこと)ってあるじゃないですか。あれがめっちゃイヤで。稽古場に向かう車の中で、「何か事件が起きないかな」ってギリギリまで思ってました(笑)。
――あぁ、テスト前の小学生みたいな。

篠原:そう(笑)! 何か事件が起こって、今日のホン読みが延期にならないかなって。それくらいイヤで。

ちょうど、そのホン読みの日にテレビカメラが入ってたんです。なのに、私は蚊の鳴くような声で、「ムニャ&%@#$%**%$#……」みたいな(苦笑)。もう何言ってるかわからない状態で、今思うと、よくみんな許してくれたなって。

蜷川さんがまた厳しくて、ホン読みだから、台本を手に持って読むだけでいいのかと思いきや、感情がこもってないと、「下手くそ!」って言って止めちゃうんです。私よりずっと経験のあるほかのキャストの方が、「下手くそ!」って言われているのを見て、「ヤダ! 私絶対 “下手くそ!” って言われちゃうよ」って思って、どんどん萎縮していたら、ホン読みなのに本番さながらに立ち上がって台詞を言い始めるキャストの方もいらして、「ええーっ! 立った!」って(笑)。

衝撃でした。「舞台ってこういうものなの?」「聞いてないよ!」ってどんどんパニックになっていくばかりで。あれは、本当に強烈な体験でした。

――自分だけが、場違いな場所にいる感覚。

篠原:そうですよ!場違いですよ! 今すぐ「ちょっとトイレ!」って言ってそのまま帰っちゃおうかとか、そんなことばっかり考えてました(笑)。

でも、小心者なので、そんな勇気もなくて。そのうち、稽古を重ねていく中で、演劇的な空間が、どんどん楽しくなってきました。蜷川さんの舞台に対する愛情の深さも伝わりましたし、演出助手の方も、「今度こうしてみたら?」とか、いろんなアドバイスやアイディアをくださって。

同じ芝居を何回もできることが、新鮮でした。あとは、制作の方が応援してくれて、「いいよ!」なんて褒めたり煽てたりしてくれて、私も、「そうかな?」なんてちょっと調子づいちゃって(笑)。

あとは、お客様のアンケートも、怖かったですけど、見てみたりしました。もちろんいいことばかりが書いてあったわけじゃなくて、「私、まだまだだ」って思い知らされることもたくさん書かれてましたけど、でも、みなさんちゃんと観てくださっていたし、そういう反応がダイレクトに返ってくる感じも面白くて、だんだん気持ちが沸き立っていく感じはありました。そんなこんなで、何とか無事千秋楽を迎えることができたんです。

PROFILE

篠原涼子 Ryoko Shinohara
1973年生まれ。群馬県出身。1990年デビュー。94年「愛しさと せつなさと 心強さと」をリリース、200万枚を超えるヒットとなる。その後ドラマ「アンフェア」「ハケンの品格」「ラスト シンデレラ」などに主演。2001年、蜷川幸雄演出の『ハムレット』オフィーリア役で初舞台を踏む。『アンナ・クリスティ』は、2005年『天保十二年のシェイクスピア』(蜷川幸雄演出)以来、13年ぶりの舞台出演で、舞台初主演。
INFORMATION

舞台『アンナ・クリスティ』

INFORMATION

1920年代、アメリカの近代演劇を築き上げた劇作家ユージン・オニール。1921年に書かれ、ピューリッツァー賞を受賞した傑作戯曲を、これまで「夜への長い旅路」「喪服の似合うエレクトラ」「氷屋来たる」とオニール作品3作品も手がけた栗山民也が演出。客席数480席の濃密な空間で、緊迫感溢れた舞台が展開される。主役のアンナが恋に落ちるアイルランド人の火夫マットに佐藤隆太。

大阪公演:
2018年 8月3日(金)〜5日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ 梅田芸術劇場

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