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松本千登世「その肌のくすみ、噂話や陰口のせい?」 [VOCE]

2018年07月22日(日) 20時30分配信

講談社VOCE

美容ジャーナリスト・エディターとしてVOCEでも出演、取材、編集、執筆と活躍中の松本千登世さん。その美しさと知性と気品が溢れる松本千登世さんのファンは美容業界だけにとどまらない。こちらの美容エッセイ『結局、丁寧な暮らしが美人をつくる。』(講談社)から、「綺麗」を、ひとつ、手に入れてください。
その肌のくすみ、噂話や陰口のせい?

講談社VOCE

その肌のくすみ、噂話や陰口のせい?

まだ、会社員だったころ。同僚のひとりにある噂が浮上し、周りは「ちょっと、聞いた?」、「本当なのかなあ?」と大騒ぎ。本人の前では何事もなかったかのようににこにこふるまっているのに、陰では……。私は後ろめたさや不快感を覚えながら、イエスともノーとも言わない、ある意味いちばん「卑怯」なスタンスで、その場に身を置いていました。

そんな中、ある女性がきっぱり。「本人に訊いてみれば?」。一瞬、空気が凍り、時間が止まったように感じました。「気になるなら本人に訊く、訊けないなら気にしない。でしょ?」。それまで雄弁だった全員が急に押し黙り、三々五々、仕事に戻って行きました。

後日、彼女は事の真相を本人に問うたのだと私に教えてくれました。根も葉もない噂だったこと、周りが騒いでいるのを察知し、悩んでいたこと、そして、たったひとりでも出まかせだと信じてくれた、それが救いだと言われたこと……。

一部始終を聞くうち、彼女の真っ白な心と晴れやかな表情が眩しくて、自分がとてつもなく恥ずかしく情けない、ちっぽけな存在に思えたもの。私はその場にいて心地よかったんだろうか? 席をはずすことも否定をすることもできたはずなのに。

同時に、痛感させられました。こうして大人はくすんでいく。無意識のうちに心が曇り、濁り、肌までくすんで、存在ごとグレーになっていくのだ、と。真っ白でいるためには周りに左右されない、揺るぎない自分を持たなくては、と……。
大事なのは、ルールか、優しさか

講談社VOCE

大事なのは、ルールか、優しさか

東京・恵比寿駅でJRから地下鉄に乗り換えようと歩いていたときのことです。

小学1~2年生くらいの女の子がふたり、何やら真剣に話し込んでいました。よくよく見ると、ひとりが泣いていて、もうひとりが慰めている様子。時計を見たら、打ち合わせまでにはまだ少し余裕がある。気になって「どうしたの?」と声をかけてみました。

泣いていないほうの子が語ってくれた事情は、こう。友だちが母親と駅で待ち合わせをしていること。ずっと待っているのに、時間を過ぎても母親が来ないこと。不安になって友だちが泣いてしまったこと……。

そして彼女は、こう続けたのです。「私、塾が始まる時間だからもう行かないと。遅刻すると怒られちゃうから。友だちを置いて行って、いいですか?」。正直、言葉を失いました。友だちが困って泣いている。それなのに塾のほうが大事なの? それが私の本音。

近くには交番があるから、いざとなれば、駆け込めばいい、そう思った私は「いいよ、早く行って」と促しました。彼女は焦りの表情を浮かべながらも「よろしくお願いします」と礼儀正しく頭を下げ、バス停に向かってそそくさと走り去って行ったのです。

その後、泣いている子にどうにかこうにか待ち合わせ場所を聞き出し、結局、地下鉄のホームにいた母親に、無事、引き渡すことができました。これで一件落着。でも……? 打ち合わせに向かう道すがら、何度も繰り返し自問しました。友だちを助けること、遅刻をしないこと、本当に大事なのは、どっちなのか、と。

ある友人のエピソード。「娘が忘れ物をした友だちを待って、一緒に遅刻したらしいんです。学校ではこっぴどく怒られたらしいんだけど、私は彼女の行動を褒めたんですよね。あなたのしたことは正しかった、って」。

遅刻をしないというルールをきちんと守った冒頭の女の子は、間違いなく正しい。一方で、たとえ遅刻をしても友だちを待つという行動も正しいと私は思うのです。そのうえで、できることなら、目の前で困っている誰かを助ける気持ちを優先できる、人間らしい自分でいたい。それを評価する周りでありたい、とも。

ただ、未だに見えません。どちらが正解なのか……?
「天然」に宿る、圧倒的な磁力

講談社VOCE

「天然」に宿る、圧倒的な磁力

「彼女」はその日、中村さんと食事の約束をしていた。これからの仕事にきっと役立つはずだからと、中村さんは彼女に何人かの仲間を紹介してくれることになっていたという。

当日、初めての出会いにわくわくしながら、少し早めに着いた彼女は、中村さんの名で予約された席に案内される。すると肝心の中村さんはまだ着いてなくて、先にその友人ふたりが座っていた。

もともと人懐っこく社交的な性格の彼女は、笑顔で「初めまして」と自ら名乗り、すぐに名刺を交換。「先に始めましょうか」と促してさっそく乾杯し、互いの自己紹介を始めた。

どのくらい時間が経っただろう? いい感じになじんで盛り上がっていると「中村様がいらっしゃいました」の声。あれっ? 誰、この人。現れたのは、私の知ってる中村さんじゃない……ってことは、この人たち……? そう、彼女はまったく知らない中村さんの席に紛れ込んだだけ。じつは彼女の勘違いで、本当の約束は、その翌日だった……。

彼女とは、真摯なルポルタージュや著名人のインタビューからOLの本音レポートまで幅広い記事を手がけ、多くの著書を持つ敏腕ライター、池野佐知子さん。それなのに、天然。会うたび「こんなことがあったの」と話してくれるのは、ありえないエピソードです。そして、ひとつひとつ聞くと、それらはどれも、彼女がピュアで誠実、人が好きで人に優しいから、起こることばかり。だから、彼女がいる席では中核となり、いない席では噂に上る。

彼女自身に圧倒的な「磁力」があるから、何もかもがこの人に吸い寄せられ、思わぬ展開になるのでしょう。彼女に会うたび、こんな女性になりたいと思います。話しても話しても、話し足りない。会っても会っても、会いたくなる。そんな女性に。

 

文/美容ジャーナリスト・エディター 松本千登世

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