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ジュリエット・ビノシュ「人生にトンネルは必ずある。でも怖がらずに進んで」 [mi-mollet]

2018年07月16日(月) 10時00分配信

『イングリッシュ・ペイシェント』(97)をはじめとした作品で、世界三大映画祭すべてにおいて女優賞を獲得したフランス屈指の名女優、ジュリエット・ビノシュさん。河瀨直美監督の最新作『Vision』では奈良・吉野の山深い森に、ある目的を持ってフランスからやってきたエッセイスト、ジャンヌ役で永瀬正敏さんや岩田剛典さんらと共演し話題を集めています。公開に合わせて来日したビノシュさんに河瀨作品に参加した印象や第一線を歩み続けてきた映画人生についてインタビュー。年齢を重ねることにより弱気になることもあると本音を語りつつ、その対処法についても自然体で話してくれました。
ジュリエット・ビノシュ

写真/アフロ

ジュリエット・ビノシュ

1964年生まれ、フランス・パリ出身。父はフランス人の舞台監督、母はポーランド人の女優。12歳のとき舞台デビュー。『Libery Bell』(83)で映画初出演し、『イングリッシュ・ペイシェント』(97)などの作品で世界三大映画祭すべてにおいて女優賞を獲得。一男一女の母。
『Vision』によって得たもの

(C)2018 "Vision" LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC. 

『Vision』によって得たもの

「これまで映画のプロモーションやランコムのミューズの仕事、ダンスのパフォーマンスで日本に10回ほど来たけれど、東京、大阪、京都といった都市部のみを訪れていたので、日本人が大事にしている森や自然との関わりについて知る機会はなかったの。今回、奈良の吉野に2か月半滞在し、中世の古都の歴史や神話なども含めて日本を内側から知ることができて、本当に幸せだったわ。吉野の森では光や風、色彩、小さなディテールの虫などを感じて、私自身“ああ生きているなぁ!”と実感して、穏やかな気持ちになれた。自分がどれだけ自然とのつながりを忘れていて、そこに回帰したいという欲求を抱いていたかということも再確認したの。そうした思いを河瀨監督や俳優の方たちと一緒にシェアできたことはとても有意義だったし、国や文化は違っていても目と目が合うだけで一瞬にして通じるものがあることを強く感じたわ」

(C)2018 "Vision" LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC. 

今回の河瀨監督とのコラボレーションは、昨年のカンヌ映画祭での出会いをきっかけに実現。監督と女優と立場は違うものの同じ映画人として共鳴するものとは。
「河瀨監督はとても個性的で独立した女性。東京でなく奈良に住み、男性社会である映画界で作品を撮り続けて、それを守るために闘っている。彼女は幼少時代、親に棄てられてしまうという寂しい経験をしたのですが、そのネガティブな体験をポジティブな行為として映画というアートに昇華させているところにとても惹かれます。自然界や人とのつながりというものを大切にしていて、仕事に対する志がとても高い方だわ」
トンネルは必ずあるけれど、怖がらずに進むこと

(C)2018 "Vision" LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC. 

トンネルは必ずあるけれど、怖がらずに進むこと

『Libery Bell』 (83)の映画デビューから始まり、『存在の耐えられない軽さ』(88)、『ポンヌフの恋人』(92)、『ショコラ』(01)、『トスカーナの贋作』(11)など数々の名作でヒロインを演じ、35年間トップであり続けたビノシュさんが映画人生を振り返り思うことは。
「やはりコツコツとコンスタントに積み上げることこそが、人との違いを生むと思うの。もちろん運もあるけれど、体を気遣い、知識や教養を身に付けて、地道に努力を続けることが大事ね。ときとして精神的に迷子になったり、周りからそんなのは無理だと反対されることもあるかもしれない。でも自分が感じたことに正直に進むこと。女優の道でも他のどんな道でも、一歩前に進むということが必ず次の一歩につながるから、怖がらずに動くべきだと思うの。トンネルは必ずある。でもときどき“ああ、嬉しい!”“なんて幸せなんだろう!”と思えるなら、選んだ道は間違っていないはずだわ」

時間の犠牲者になってはいけない

『アクトレス~女たちの舞台~』(15)など近年の作品では、大人世代の女性たちの生きづらさや憂いなどを表現しています。ビノシュさん自身は、避けられないエイジングとどう向き合い、女優としてどう乗り越えているのでしょう。
「映画はクリエイションの世界なので、今いる空間や時間を超えた自由さというものを体験できるの。ただ現実には“年を取るなんて全然たいしたことじゃない! そんなの関係ないわ”と思えるときとそうでないときと、日によるのよ(笑)。人間だから。最近ちょっと一目惚れをした人がいて……それが年下の男性だったんだけど、“ああ、私、さすがにダメかな!?”と年齢の限界を感じてしまったわ(笑)。そんな風に限界を感じるときは、なおさら自分を磨かないとね! 時間の犠牲者になってはいけないの。エクササイズをして体を整えたり、本を読んだり、外出したり、友達と会ったり……自分を外側と内側から磨くことね。そうして魂に肥やしを与えてあげると、過ぎ去る時間の重さを感じなくなるの。外側から磨くという意味でエステは有効だけど、整形したり顔をいじったりするのはNG。後からブーメランみたいに自分に戻ってくるので(笑)」
『Vision』をきっかけとして、日本をより身近に感じるようになったというビノシュさん。気さくにガールズトークにも応じてくれました。そのしなやかな生き方にこれからも注目です。

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