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松本千登世「生き方を変える他人のひとことの重み」 [VOCE]

2018年07月07日(土) 20時30分配信

ごみ箱のごみ、毎日捨てていますか?

美人になれるヒントがいっぱい。

ごみ箱のごみ、毎日捨てていますか?

ある女性誌でスキンケア・カウンセラー、鶴岡悦子先生のページを担当したことがあります。美しくなるには、「生き方」を変えなくては。生き方を変えるには、「習慣」を変えなくては。そんな提案を込めて、先生が行っている毎日の習慣をひとつひとつ文章にしていったのです。

中でも深く響いたのは「毎日、捨てる」ということ。ごみ箱のごみも読み終わった新聞も溜めない。環境が許せばという前提ありきだけれど、いっぱいになるまで放っておくのでなく一日一回捨てる。

はっとさせられました。実践してみると、思いのほか気持ちいい。そして気付かされたのです。ごみ箱のごみが、読み終わった新聞が、どれだけ自分を支配していたかということに。

さらなる気付き。毎日振り返ると、他人との関係や自分の思考に「負」の要素が必ずあるもの。そんな心の中にあるごみ箱のごみも、毎日捨てなくちゃ。たとえば、誰かに失礼な言動や行動をしていたら謝る。たとえば、自分がネガティブなことを考えていたら改める。とにかく、その日のうちに捨ててしまうこと。そうすると、穏やかで晴れやかに明日が迎えられる……。心がけ次第で明日はもっと新鮮になる、そう気付かされたのです。

大人になってからのほうが、伸びる能力がある

いつも自分に言い聞かせていることがあります。それは、池谷裕二さんと糸井重里さんとの共著『海馬―脳は疲れない』で知ったある事実。人は年を取ると、記憶力が落ちると言われるけれど、それは「嘘」とこの書では説いています。

積み重ねた経験を私たちは、脳の中の「引き出し」にしまう。当然のことながら引き出しが増えるほど、「中身」を探し出すのに時間がかかる。つまり、経験が多い人は引き出しが多いために、経験が少ない人よりどの引き出しに入れたかを見つけにくかったり、見つけられなかったりする。この現象が年齢とともに記憶力が弱まると言われる所以なのだそうです。

逆に捉えれば、引き出しが多い分、一見関係ないと思われること同士を結び付けて考える能力は大人になってからぐぐっと伸びる。大人のほうが「たとえ話」がうまいのはそのためなのだと言います。

そう、年齢を重ねれば重ねるほど目には見えないあらゆる感情を想像し、あらゆる経験と結び付けて、それをうまく表現したり伝えたりできるってこと。大人ってやっぱり素敵、そう思いませんか?

何よりの癒しは、共感より希望

ある友人が、人生最大の別れを決意したときのこと。私と彼女のふたりで癒そうと集まりました。

実際に聞いてみると話の内容はかなり悲惨。うん、わかる、わかる。いろいろあるよね、人生って。辛いと思うけど、いつでも聞くから。同じ立場に身を置いて、懸命に気持ちを理解する、それが癒すことだと私は信じていました。

それに対し、彼女は「よかったねーっ、また新しい恋ができるんだ。うらやましいな」。えっ? 今、この状況で? 正直、驚きました。その言葉は、傷に塩を塗り込むようなもの。もう少し傷が癒えてからでもいいんじゃない? 私はその場をどうするべきかと、ひとり焦り、何事もなかったかのようにその場をあとにしたのです。

ところが……。後日、当の本人は「ほかのどんな言葉より『あれ』が効いたの」。また恋ができる。うらやましい。そう言われて、心のベクトルが180度変わったと言ったのです。

人は最終的に、「希望」で癒されるのだと気づかされた瞬間でした。気持ちをどんなに理解できたところで、どん底に一緒にいることしかできない。這い上がる手助けにはならない場合があるのだ、と。背中を押したり、手を引っ張ったり……。そのためには希望がないと。私は今まで、人をちゃんと癒せていたのだろうかと、思案に暮れました。

ふと思い出しました。肌がコンプレックスだった私を救ってくれたのは、鶴岡悦子さんであり、佐伯チズさんであり、それぞれの「肌は一生育つ」という希望の言葉だったこと。私もいつかなりたいと思います。いざというときに、頼もしく、大らかに希望を与えられる女性に。

 

文/美容ジャーナリスト・エディター 松本千登世

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