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中山美穂「人を本気で愛した記憶は、いつまでも消えない」[FRaU]

2018年06月01日(金) 19時00分配信

Photo:Akina Okada 

病魔に冒され、自分の余命がわかったとき、人は、残されたわずかな人生をどう生きるのか――。遺伝性アルツハイマー病を宣告され、自らの余命を知る女性小説家・涼子は、人生の最終章で、自分の尊厳を守り、残る人たちに美しい記憶を残すために行動した。

『蝶の眠り』は、中山美穂さんの5年ぶりの主演映画。メガホンを取ったのは韓国のチョン・ジェウン監督だ。
作品との出会いに、 運命的なものを感じます

Photo:Akina Okada 

作品との出会いに、 運命的なものを感じます

――1999年に韓国で公開された『Love Letter』(岩井俊二監督)の大ファンだったチョン監督は、この映画の制作が決まったとき、シナリオとともに、熱い思いを伝える手紙を、中山さんに送ったそうですね。

中山:『Love Letter』は、日本で公開されたのは1995年でした。韓国では、日本文化開放の直後に上映されたので、興味を持ってくださった人が多かったんだと思います。韓国に行くと、みなさんがいまだに私を見て、「お元気ですか?」と言ってくださったりして、そのことが不思議でもあり、有り難くもあります。

『Love Letter』は、私にとってひとつの転機となった作品です。それまでは、ルーティンのようにドラマに出演して、シングル曲をリリースしていて、目の前のことに取り組むだけで精一杯なのに、でももっと成長したいという思いが自分の中で空回りしていました。

何か新しいことをやってみたいという思いが、今にも爆発しそうだった。そのタイミングでの出会いが嬉しかったですし、結果的に素敵な評価もたくさんいただいて。自信がついたというよりは、その後の私が俳優業に軸足を置いていくきっかけになりました。
――相手役のキム・ジェウクさんは、『Love Letter』の中に、日本人独特の情緒や美意識を感じたと話していました。その、日本独特の情緒や美意識は、『蝶の眠り』にも通底しているように思います。

中山:シナリオを読んだ段階では、「こういう作品に出会いたかった」とか、「こういう役を演じてみたかった」というわけではなかったのですが、涼子という役を演じてみて、結果的に、この作品との出会いは何か運命的なものを感じています。

とくに、今回は実年齢より年上の設定だったので、そこは有り難いし、やり甲斐もありました。今までは、なぜか実年齢より若い設定の方が多くて、段々やりづらくなるんじゃないか、いつまで実年齢より若い役を演じ続けられるのだろう、という不安もあったので(笑)。
――監督は、本作について、「お互いの愛が詰まった記憶自体がかけがえがなく、意味があることを描きたかった」と話しています。

中山:涼子という女性は、強くて、自分を持っていて、最後まで潔く生きたかった人です。でも、演じているときはそうやって、役柄のキャラクターを俯瞰で見る余裕はなくて、ただ目の前のことに必死で食らいつくしかできない。でも、あとになって、この映画のテーマについて深く深く考えてみたとき、この役をやって本当に良かったと思いました。
―― “遺伝性アルツハイマーに侵された女性小説家” など、設定だけ聞くと、難解で暗いイメージを持たれそうですが、映画自体はとても美しく優しく、蝶の舞いのような儚さも切なくて。ロケーションも含め叙情的なのに、甘すぎず、哀しすぎず。とても長い余韻が残る映画でした。涼子という役に、共感した部分はありますか?

中山:『蝶の眠り』の場合、物語としては哀しいんですけども、その哀しさが薄っぺらくない。単なる喪失の哀しさとは違うんです。哀しさが優しさや強さ、愛しさに繋がるのは、涼子の中に、純粋に、一途に人を想う気持ちがあるからです。

一つの命が失われていく哀しさ、でも、そこには強く人を愛することの豊かさがある。その辺のバランスがすごく絶妙で。私も、ただ哀しいだけでもただ強いだけでもない、バランスのいい女性になりたいなと思いました(笑)。
――作品の中で、“余命” と向かい合うことは、死生観を考え直すきっかけになったりもしましたか?

中山:なりましたね。でも、だからといって具体的に何かを準備したりはしないけれど、日々、生きていることを大切にしたいと思いました。当たり前のことなんですが、その当たり前のことを、再確認しました。

でも、私の喜びは、こうして素敵な作品に出会って、素敵なスタッフや共演者の方と一緒に時を過ごして、作品が出来上がると、感想を聞ける。一番嬉しいのは、最後の “感想を聞く” ことだったりするので、それを聞くことを楽しみに、励みにしながら、日々生きていきたい。そんな思いを強くしました。
――完成品をご覧になって、いかがでしたか?

中山:いつものことなんですが、初めてのときは、客観的になれない。「あ、この日は暑かったな、汗大丈夫かな」とか、そっちのほうに気が行ってしまって(笑)。まともに観られないので、みなさんから感想を聞いてから、2回目に観るのがいつも楽しみです。監督からは、出来上がった瞬間に、「すごくよいものに仕上がりましたよ」というメールはいただきました。
――演じる仕事は天職ですか?

中山:結果的に、この仕事が好きなんだなと思いますね。若い頃は、何でも、続けていくことが大事だと思っていて、その中でも、とくに演じる仕事はこれからもずっと続けていくんだろうな、と。ただ、20代の頃は、自分を変えていかなければならないなって焦りはありました。

 

PROFILE

中山美穂 Miho Nakayama
1970年生まれ。東京都出身。1985年ドラマデビュー。歌、ドラマ、映画、CMなどで幅広く活躍。歌手としてはNHK紅白歌合戦に1988年から1994年まで7年連続で出場した。1995年、ヒロインを演じた岩井俊二監督『Love Letter』がアジア各国でも公開され大ヒット。アジア全域では抜群の知名度を誇る。

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