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夏木マリのまわりにポジティブな影響を与える生き方 [FRaU]

2018年03月29日(木) 20時00分配信

軽やかに、心のおもむくままに生きていくためにたいせつなことは……? そんな疑問をぶつけたいのは、美しい人生の先輩・夏木マリさん。彼女は、生きかたそのもので、私たち女性に多くのことを教えてくれる。
人生のクリエーターであれ

Photo:HIRO KIMURA(W)

人生のクリエーターであれ

スマイリーフェイスが一面にプリントされた黄色いジャケット姿で元気にスタジオ入り。ノーメイクで笑顔いっぱいのマリさんは、「おはようございます!」と、ひとりひとりの顔を見て言葉をかける。メイクルームではこの日の撮影のテーマとページ構成のラフを確認しながら、顔なじみのスタッフたちと談笑していたかと思うと、いつの間にかヘアカットが始まっていた。シャープな輪郭を際立たせる思い切ったベリーショート。続いて自らの手でパックやマッサージを施した後、メイキャップアーティストに委ねる。最後に、スタイリストとディスカッションしながら選んだ衣装を身にまとうと……。そこに “夏木マリ” が完成していた。

カメラの前に立った姿は圧巻だ。カメラマンの「ワン、トゥー、スリー!」という合図ごとに、ポージングを変えていく。そこに、ついさっきまでの気さくで陽気なマリさんはいない。妖艶な美。それはまさにアートが生み出される瞬間だった。

「撮影って、私、好きです、すごく。みんな、それぞれのパートのプロフェッショナルで、意見交換しながらできるっておもしろいじゃない?」

Photo:HIRO KIMURA(W)

撮影を終えたマリさんが心底楽しそうに言う。長きにわたってクリエーションに携わりながら、今も瑞々しさを保ち続けているのは、シンプルにその場を楽しむ姿勢を持ち続けていられるからなのだろう。そんな彼女が、この春、送り出すのは、主演映画『生きる街』(3月3日全国順次ロードショー)。東日本大震災後の海沿いの街に生きる人たちの姿をあたたかな眼差しで描き出す。榊英雄監督からの熱いラブコールを受けて、地元に残り、民宿を営みながら、津波に流された夫を待ち続ける主人公・千恵子を演じている。

「私、元気な人の役が来ますね。榊監督は、ご自身も俳優で、ロックが大好きな人。そういったところも波長が合うなと思いましたね。でも作品を受けるときの決め手になるのは、やっぱり台本なんです。今回は最初、台本をいただいたときに、“演(や)れる” と思いました。予習の段階では、役作りって、その人物を愛せたとき、好きになったときに終わるんです。この千恵子さんは、特にいいセリフを言うわけではないけれど、友だちの別荘を借りて民泊を始めて、Facebookも覚えて、いろいろな人を受け容れて……と、どんどん行動していく。行動するところは私と似ている。人前では泣いたりしないで、ひとりになったときだけ思いをあふれさせる。そういうのも、ちょっとわかるような気がして。私、外ではがんばっているけど、意外とこういう普通のおばちゃんなんで(笑)。頼りになる人がいなかったらくじけちゃうところもあるし。自分と近い役って演じにくいんですけどね。本当は、最近公開になった『星くず兄弟の新たな伝説』みたいなニューカルトムービーで、白塗りして、ヒャーッてぶっ飛んでるほうがやりやすいんです(笑)。でも、この映画には、忘れたいもの、思い出したくないもの、でも忘れちゃいけないものが詰まっている。生きていく上で、そういうことってなかなか気がつかないでいるんだけど、根っこにある大切なものなのよね。タイトルの『生きる街』のように、千恵子さんは、“生きる女” を代表したような人だから、私も一生懸命やってみようと思ったんです。ご主人と二人三脚でやっていたのに、震災をきっかけにひとりになって……。現実を見つめて強くなった、そんな女性だから」
宮城県石巻市での撮影は、約2週間。途中、実際に地震も体験した。

「警報もしょっちゅう鳴って、撮影も中断して。ロケ地の前の海がさーっと引いていくさまを見たら、本当に自然の脅威を感じました。地元の民宿に滞在していたんですけど、私も民宿のおばさん役なので、当時のことをいろいろ伺ったりして。感情面とか、本当に細かいことを教えてもらって勉強になりました。現地の方は、こちらが逆に励まされるくらい元気で。いろいろ気を遣っていただいて、お茶をごちそうになったりして。みなさん、千恵子さんと同じように、大きなことを乗り越えて、どこか腹を括ったんでしょうね」

新しい経験の中での出会いから得たものは大きかった。息子役を演じた堀井新太、韓国からの旅行者役のイ・ジョンヒョンなど、世代、国籍を超えた共演者との邂逅も。

「堀井さんは、好青年でしたよ。芝居で悩んでいたみたいで、待ち時間にいろいろ話してみたら、ふっきれたようでしたけど。ジョンヒョンさんは、同じシーンのとき、一生懸命に日本語のセリフを覚えていたから、ちょっとお手伝いしたりね」

さらりと自然体で、周囲にポジティブな影響を与えていく人なのだ。その手首には、「東北ライブハウス大作戦」と書かれたリストバンド。被災地支援活動のひとつだ。

PROFILE

夏木マリ Mari Natsuki
東京都出身。1973年歌手デビュー。『印象派』、支援活動『One of Loveプロジェクト』、清水寺奉納パフォーマンス『PLAY×PRAY』などのクリエーションを手掛け、その活動はそれぞれ周年を迎える。3/31、4/1にブルーノート東京にてON STAGE予定。

●情報は、FRaU2018年3月号発売時点のものです。

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