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筋肉や靭帯（じんたい）、関節などが少しずつ硬くなってくる50代。
腰が重かったり、階段の上り下りでひざに違和感があったりしても「この程度なら大丈夫」と放置している人が多いはず。
腰痛やひざ痛の問題点は、自己判断や自己流ケアで済ませている人が多いことです。いろいろな痛み対策を試しても、一向によくならない場合、そもそも原因の把握や対処法が間違っているのかも。
今回、女性の痛みの特徴について、順天堂大学医学部附属順天堂医院 麻酔科・ペインクリニック 教授の井関雅子さんに詳しく教えていただきました。

月経や出産を経験する女性は、男性よりも痛みに強いと言われてきました。
でもそれは、実は誤解だったのです。
「女性はむしろ、生物学的に痛みを感じやすい性質があります」と話すのは、順天堂大学医学部ペインクリニック講座で教授を務める井関雅子さん。
痛みの専門家である井関さんによると、女性ホルモンのエストロゲンは、痛みを感じやすくする働きを持っています。その一方で更年期以降は、エストロゲンの減少していくものの、骨密度や筋肉量の低下、ホルモンバランスの不調といった身体の変化で、痛みが誘発されやすい状態になることがあります。
「不調の自覚症状を見ても、女性は、腰痛、肩こり、手足の関節痛など慢性痛に悩む人が多いうえ（平成25年国民生活基礎調査）、年齢とともに骨粗鬆症や変形性関節症などの疼痛疾患にかかりやすい傾向にあります」

ただ、関節疾患などの病気が顕著に出てくるのは、もう少し先のこと。
50代では、なんとなく腰が重い、ひざがこわばるといった不調が目立ち、ここにストレスや不安感などの心理的状態や睡眠不足などが重なって、痛みが強くなっている可能性もあるのだとか。
「例えば、断眠（夜中に何回も目を覚ますこと）をしていると、痛みを感じやすい状態になることがわかっています。とかく女性は、家族の世話に時間をとられ、自分のケアは後回しになりがち。痛みに対するケアはもちろんのこと、睡眠が十分とれているか、ストレスを抱えていないかなども並行して見直す必要があるのです」
50代はまだ頑張りがきく世代ですが、無理は禁物。忙しくても、自分の時間を持ち、少しペースダウンすることが大事だと井関さんは言います。
「精神的にリラックスすることで、今抱えている痛みが和らぐ可能性があります。ヨガやマインドフルネスなどを取り入れるのも効果的です」

将来起こりうる疾患にも備えておきたいもの。今のうちに運動法や食生活を見直したり、骨粗鬆症の検査を受けておくことも大切です。

世代で変化する女性の痛み。閉経前の世代は生理痛などに悩まされますが、閉経後からは、変形性膝関節症や腰椎疾患、骨粗鬆症などの痛みを伴う疾患にかかる人が急増します。「50代のうちにしっかり予防をしておけば、10年後、痛みで悩まずに済みます。今の痛みを放置しないことです」（井関さん）

線維筋痛症は、体に激しい痛みが起こる病気。’17年秋、米国の歌手のレディー・ガガがこの病気を告白し、話題になりました。患者の8割は女性。覚えておきたい疼痛疾患のひとつです。
「線維筋痛症は、血液検査や画像検査をしても異常が見つからず、病院を転々とする方も珍しくありません。ストレスなどで痛みが強くなるのが特徴。一例ですが、幼少期に親からDVを受けたなど、精神的・肉体的なストレスがあると、新たなストレスが加わったときに痛みという形で症状が現れることもあります」（井関さん）。痛みのほかには、倦怠感、睡眠障害、抑うつ気分などを伴います。
また、更年期障害や関節リウマチなどに間違われ、発見が遅れることも。心当たりがある場合は、ペインクリニック、線維筋痛症の専門外来で、痛みの状態を細かく伝えるといいでしょう。