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人気スタイリストに聞く、“自分基準”の幸せの探し方 [mi-mollet]

2017年12月20日(水) 14時00分配信

撮影/目黒智子

ただオシャレに着飾ったりたくさんの物を手に入れたり、というだけでハッピーになれていた若い頃と違い、何かもっと本質的な幸せの必要性を感じ始めるのがアラフォーではないだろうか。でもその探し方が分からずモヤモヤしている読者は多いよう。そこでこのたび、スタイリストである伊藤まさこさんにインタビュー。同じ毎日の中でもちょっと食べるものを工夫したり、使うものにこだわってみたり。そんな、肩の力を抜いたままで自分らしい幸せを手に入れている伊藤さんに、“自分基準の幸せの探し方”を伺った。

伊藤まさこ 

1970年生まれ。横浜市出身。料理や雑貨といった暮らしのスタイリストとして、多数の雑誌や書籍で活躍中。自他ともに認める食いしん坊で、美味しいものを求めて各地を飛び回っていることでも知られる。『夕方5時から お酒とごはん』(PHP研究所)、『おいしい時間をあの人と』(朝日新聞出版)など著書も多数ある。
気持ちいいことしかしない

撮影/目黒智子

気持ちいいことしかしない

美味しいものが大好きで、今年7月には、自分が幸せでいるための“美味しい”を追求した著書『おいしいってなんだろ?』(幻冬舎)を刊行した伊藤まさこさん。とてもオシャレでお綺麗なのに圧倒される感じは全くなく、お話ししているとこちらまで肩の力が抜けるような、どこか飄々とした幸せオーラを放っている。ご自宅も、物が少なくスッキリと片付いているが、温かみがあってとても居心地がいい。40代からの、いわば“第二の人生”をどう送るか悩んでいる読者は多いが、どうしたら伊藤さんのように頑張りすぎず、でも毎日を丁寧に生きられるのだろうか?

「私も同じですよ。40代に入った頃、娘に『今が踏ん張り時だよ。このまま冴えないおばさんになっていくか、輝いていくか……』と言われましたから(笑)。それで考えた、というほどでもないんですけど、私は、幸せでいるためにはとにかく自分が気持ちいいことをするしかない!と思っているんです。部屋を綺麗にするのも、決して頑張っているわけではなくて、そのほうが自分が気持ちよくいられるから。最近人から『伊藤さんて快楽主義者だよね』って言われたんですけど、その通りだ!と思いましたね(笑)」

その“気持ちいい”を一番カタチにしたものが、伊藤さんの場合は“美味しい”だったと言う。著書『おいしいってなんだろ?』は、コーヒー焙煎家のオオヤミノルさんや作家の吉本ばななさんなど、様々な人との対談の中で、伊藤さん自身の“美味しい”を掘り下げていった1冊だ。

「オオヤさんと雑談しているときに、『おいしいって一体何なんだろうね』という話になったんです。たしかに私がいつも考えていることでもあったので、見つめ直すためにも本にしたらどうかしら?と思いました。そのことを幻冬舎の担当の方に話したら、『ぜひ!』と言ってくれて。原稿を書いているうちに、『“美味しい”は私の人生そのものなんだ』とあらためて気づいたんです。小さい頃から食いしん坊で、今ではそれが職業になって……。思えば、私の人生の節々の思い出には必ず“おいしい”があったんです」
“美味しい”のスタイリストになって……

撮影/目黒智子

“美味しい”のスタイリストになって……

最初はインテリアのスタイリストアシスタントをしていた伊藤さん。その軸を食まわりの暮らしに置くようになったのは、ある料理撮影がきっかけだったと言う。

「その時についていたスタイリストの師匠が、料理本のスタイリングを一冊手がけることになったんです。それまではスタイリングに使う家具や小道具をトラックいっぱい借り、部屋を作って撮影、というのが当たり前だったのですが、料理の世界はあくまでも料理が主役。器などの小道具は引き立て役です。『この料理に、このお皿』というような、料理が主役となって撮影が進んで行くその様子は、とても新鮮でした。器の質感、テーブルの光の陰影、全体のバランス……、様々な要素が重なって、ひとつの料理をおいしそうに導くその仕事に興味を持ち、『独立したら料理のスタイリストになろう』、そう決めたんです」

しかしいざ仕事にしてみると、大事にしたいことと現実との間で葛藤したと言う。

「私は美味しそうで、それを見た人が幸せになれるスタイリングがしたいと思っていたのですが、そこに“売る”が入ってくるとそうはいかなくて……。いろいろ考えましたが、自分が気持ちよくない仕事を受けるのはやめようと、広告の仕事はやめることにしたんです。でも人生って不思議なもので、何かを止めて空きができれば、シュッとそこに入ってくるものがある。気持ちに添わない仕事を止めたことで、結果的に私がやりたかった方向のお話をいろいろいただけるようになって。そして今に至る、という感じです」
自分の“気持ちいい”が分かっていれば、迷わない

撮影/目黒智子

自分の“気持ちいい”が分かっていれば、迷わない

とは言うものの、伊藤さんは決して「自分が納得できる仕事しかしたくない」といったようなストイックな性格ではない。むしろ「自分に甘いんです」と語る。

「ただ単に私は、“気持ちいい”が最優先なだけ(笑)。周囲の40代の方を見ていると、皆さん家事も仕事も完璧にやらなきゃってすごく頑張られている気がするんですけど、もっとワガママになっていいと思うんですよ。たとえば私はお金の計算が苦手で、確定申告など毎年四苦八苦していたのですが、見かねた友人が税理士さんを紹介してくれて。今はすっかりその方にお任せしています。できないことはできる人に任せる。時には開き直ることも、幸せでいるためには大切ですよ、……なんてこじつけてみたりして(笑)」

人のことは気にならないし、日によって気分の波もないという伊藤さん。今はSNSによって、多くの人の華やかな暮らしぶりが目に入ってくる時代。そのため「自分も皆と同じようにきちんと暮らさなくては……」と頑張り、逆に疲れている読者も多いようなのだが、どうしたらそんなふうに「自分は自分」と毅然としていられるのだろう?

「今ってそれこそ、自分の“気持ちいい”をすぐ発信できますものね。それで楽しいならいいけど、人と比較してしまうと辛くなってしまいます。私が自分の本の中で伝えたいと思っているのは、『こういうことすると気持ち良くない?』ということ。出汁をきちんととったり、部屋を整えたりすることで、それぞれの“気持ちいい”を見つけてもらうきっかけになれば、と思っているんです。だから、散らかった部屋が落ち着くならそれでいいと思うんですよ。大事なのは、ありきたりですけど、頑張ることじゃなくて自分を信じて好きになること。そうするとおのずと、人と自分を比べることはなくなると思うんです」

“自分基準の幸せ”がハッキリ分かったうえで、40代を過ごしてこられた伊藤さん。それが周囲の人も巻き込むような、柔らかい幸せオーラにつながっているのだろう。

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