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栗原類が自閉症スペクトラムや発達障害について知ってもらいたいこと [VOCE]
2017年12月04日(月) 21時00分配信
世界的な問題に発展しつつあるのに、いまだ認知度の低いASDの啓蒙活動に立ち上がったのは、166年の歴史を持つスキンケアブランド『キールズ』。1951年NYでアポセカリー調剤薬局として創業した当時から、地域社会や人々のよりよい生活に貢献することを使命として掲げ、これまでにも早い段階でエイズや環境保護に取り組んできました。その精神のもと2017年のグローバルチャリティーとして、アカデミー俳優・マシュー・マコノヒーが代表を務める世界有数の自閉症支援団体『AUTISM SPEAKS』への支援と、自閉症スペクトラム(ASD)の意識啓発と寄付をすることになりました。
日本では、自身も発達障害であることを告白し、モデル、タレント、役者として幅広い分野で活動する栗原類さんがこの活動に賛同。ASDに対する日米の理解について、そして自身のADDについてのお話を伺いました。
「機会のフェアを重んじるアメリカと結果のフェアを重んじる日本」
栗原類さん(以下栗原):アメリカと日本では、発達障害の生徒に対する学校のシステムや教育方針が、大きく違います。発達障害はひとりひとり違った脳のクセがあって、そのクセによって日常生活にさまざまな困難なことが起こるんです。
僕の場合は、注意力散漫、集中力が低い、記憶力に問題がある、手先が不器用などの弱点があります。その弱点を補うために、アメリカにいた時にはよく電子辞書を使って、わからない単語を調べました。日本に戻ってきて、学校で同じようにわからない単語を電子辞書で調べようとしたら、それはダメだと言われたんです。日本の先生からは、みんなと同じように辞書を使わないとフェアじゃないからと言われて、電子辞書を使わなければならないことを理解してもらえませんでした。視力の低い子が眼鏡を使うのと同じように、発達障害児にとっての眼鏡が、電子辞書やパソコン、スマートフォンなのです。
アメリカでは、発達障害の生徒もそうではない子も、同じ内容を同じペースで勉強できることが最重要。だから、手先が不器用な生徒は電子辞書を使うことが理解されていました。日本の学校は、みんな同じ条件、同じ道具を与えないとフェアじゃないという、機会のフェアより結果のフェアを重んじます。そこがアメリカの学校と日本の学校の大きな違いです。
また、アメリカでは担任の先生が、自分のクラスの生徒が発達障害ではないかと感じたら、保護者に診断を促す義務があります。でも日本で、そんなことを先生が保護者に伝えたら、保護者に不快に思われてしまうかもしれません。日本では、先生も保護者も、子どもが発達障害かもしれないと感じたとしても誰にも言うことができません。それも大きな壁だと思います。
「自分自身も周りにも弱点を知ってもらえれば、生活がラクになる」
栗原:自分自身は感じていませんでしたが、僕の弱点を周りが知っていることで、担任の先生もクラスのみんなも僕のことをわかって対応してくれていました。それによって苦手なことがあっても、少しのアシストがあればみんなと同じペースで勉強に追い付くことができました。自分自身も周りも僕の弱点を知っていてくれていたからこそ、そういう環境を作ってもらうことができたんだと思います。
でも実は、自分自身が発達障害だと認識したのは中学2~3年生の頃。それまでは母や主治医から「あなたは発達障害よ」と言われても、僕は短期記憶が苦手だったので、すぐに忘れて、何度も失敗を繰り返してきました。でも、同じ失敗を繰り返すことで、時間はかかりましたが、少しずつどんなことが苦手でどう直していけばいいのかな、という考える力がついたと思います。
「発達障害は理解ある第三者の存在がとても大切」
栗原:僕の主治医の先生から聞いたんですが、日本の教育はアメリカより40年遅れていると言われているそうです。発達障害に関しても学校側に理解されたことは残念ながらあまりありませんでした。でも学校には趣味や好きなことを話せる友だちもいたし、母に相談したくないことは、主治医の先生に相談することができていました。
保護者以外の第三者、学校の先生や、主治医の先生など、発達障害の子どもとその保護者を客観的にみて、アドバイスをしてくれる人が必要だと思います。僕の場合は親子そろって主治医の先生にアドバイスを頂いていましたが、僕らを冷静な目で見てアドバイスくれることがとてもありがたかったです。
「僕の存在が発達障害を知る入口になってくれれば!」
栗原:自閉症スペクトラムをはじめとする発達障害は、まだまだ多くの人に知られていません。キールズさんのように認知度の高い大きな企業が支援をすることによって、多くの人に知って頂くいい機会になります。自閉症スペクトラムや発達障害の人たちは、ひとりひとりそのタイプが違い、弱点も違います。多少の知識はあっても、実際にそういう人たちとどう接していいのかわからない人も多いと思うんです。チャリティーという機会があれば、1人でも多くの人にこういう問題を抱えた子どもたちのさまざまなタイプや弱点を知ってもらえます。
こういう機会があれば、学校で、社会で、どんな接し方をすれば自閉症スペクトラムや発達障害を抱えた人たちが、生活しやすくなるのか探ってもらえるのではないでしょうか? 僕がこのチャリティーに参加することによって、僕の存在が発達障害を知る入口なってくれたらいいなと思います。
1994年、東京生まれ。8歳の時、NYで発達障害と診断される。11歳で帰国し、中学時代にファッションモデルとしてデビュー。現在はモデル、タレント、役者としてさまざまな分野で活躍中。