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【親の認知症】やる気がない、暴力、妄想…どうしたらいい? [おとなスタイル]

2017年11月30日(木) 10時00分配信

イラスト/添田あき

親が認知症になると、昔とは違う言動や行動に戸惑い、傷ついてしまうことも。でも、受け止め方や対応を変えることで、親との関係性を改善できる例もあります。専門医のアドバイスを紹介しましょう。

お悩み1.母の様子がおかしい、認知症?

久しぶりに実家に帰ったのですが、母が最近、物忘れが多くなったと嘆きます。ひょっとして認知症かな?と心配です。

A.早く気づいてあげることも必要です
認知症は治療法のない病気。しかし早期に発見すれば、進行を遅らせる薬を使うことや先の生活の準備もできる。自分自身または家族から見て、違和感が高まり不安が伴うようなら、医療機関を受診してください(木之下さん)。

お悩み2.少しでも進行を食い止めたいのですが、何もやる気がない父。どうしたらいい

軽度認知症の父に、記憶テストを勧めたり、散歩に連れ出したりしています。でも、「頑張ろうね」と言うと、「いじめるな!」と機嫌が悪くなります。

A.やりたくないことをあなたはやりたいですか?
認知症になると「進行させないこと」を優先しがち。でも、例えば温泉に行くのは行きたい人と行くから楽しいのに、温泉に行く練習ばかりやらされて、いちいちできないことを指摘される。機嫌が悪くなるのは、自分を理解してもらえていないことに対する“ 抵抗”だろうなあと、僕は思います。認知症の人同士で集まると、仲よく話をしてますよ。『娘が脳トレをやれとうるさい』なんて言いながら、当事者同士だから話が合う。大事なことは関係性なんです。親のことを思うなら、本人が本当に好きなことをやったほうがいい。関係性を深めて仲良く暮らしたほうが、よっぽど幸せだと思いますよ(木之下さん)。

お悩み3.物を投げたり、暴言を吐いたりします。怒ってもやめません

数年前から物忘れが始まった母。最近は、家族を叩いたり、物を投げるなどの行為も。せめて暴力だけでもやめさせたいのですが。

A.行動には理由がある。本人なりの苦痛があるのかもしれない
現実には、家族と話しておとなしくなる薬を「飲ませる」という治療の選択をすることもあります。でも、認知症の人の暴力や暴言は、病状ではなくてリアクションだと、僕は考えます。食べたくないものを食べさせられたり、お風呂に入りたくないのに服を脱がされたり。それを嫌だと上手く伝えられなかったら、払いのけたり暴言を吐くこともあり得ると思うのです。生きる支えは、人との関係性から生まれるもの。近しい人が優しくしてくれたら救われます。暴言やいらだちの原因はどこにあるのか、本当にしてほしいことは何かを考えて接することも必要ですね(木之下さん)。

お悩み4.盗られ妄想がひどくなる母、同居がつらいです

認知症の母が「お金を盗られた」「化粧品がなくなった」と騒ぎます。違うと言っても聞きません。どうしたら止められますか?

A.一番つらいのは本人。記憶することが苦手になったと理解しよう
認知症の人は、昔の記憶を鮮明に持っているし、引き出すこともできます。だけど新たに記憶すること、つまり脳に情報を「入れる」ことが苦手になっている。物忘れと言われる症状も、記憶しづらいだけで、忘れているわけではないのです。盗られ妄想の背景には、「自分は老いてきている」とか、「お金を失くしたらどうしよう」といった不安があるもの。家族が叱ったり、詰問したりすれば、追いつめられ、自尊心も深く傷つきます。本人の悩みをまわりが少しでも理解できると、行動や心理状態が軽減することも多いのです。自分の事実とは違っても相手の事実に目を向け、聴く耳を持つことです(木之下さん)。

私は認知症をこう考えます

自分がなったら……と一度真剣に考えてみよう
年をとって白髪が増え、シワができても、みんな、それなりに受け入れて生きている。でも脳の問題となった瞬間、「ほら忘れた」「さっき言ったでしょう」と指摘し始めます。毎日「そのシワをどうにかしろ」と言われるような状況が生まれているわけです。これって、つらいと思いませんか?
だから、認知症への、いまあるありきたりな偏った考え方はよくない。認知症になろうがなるまいが、人は人です。たとえ言葉が出てこなくても、そのせいで人として何かが損なわれるわけではない。
人は多かれ少なかれ、誰かに迷惑をかけて生きている。お互い様。本当に心配すべきは、認知症になったら何もできないと決めつけられ、人生を奪われることです。
50 代のみなさんが今できることは、人との関係性を濃くする技術を身につけること。悪口を言ったりケンカしたりする暇があったら、周囲と仲良くしてください。人とのいい関係は、生きる支えになります。よい人間性を持ち続けて死ねたらいいと僕は思うのです。
■Profile
認知症の専門医 木之下徹さん
認知症の人の在宅医療に15年携わった後、認知症外来「のぞみメモリークリニック」を開院。認知症に対する偏見と日々向き合いながら、認知症の人やその家族に親身に寄り添う外来診療に尽力している。

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