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マルチな活躍、ミュージカル俳優「井上芳雄」のルーツを探る [FRaU]

2017年11月30日(木) 20時00分配信

今回のゲストは俳優の井上芳雄さん。小学4年生で『キャッツ』に心を奪われて以来、ひたむきにミュージカル愛を育み、いまやミュージカル界のプリンスとして多くの人々を魅了する彼の原点に迫ります。

井上芳雄さんのCHRONOLOGY

1979 年
福岡県出身

1998 年
東京藝術大学音楽学部声楽科入学

2000 年
ミュージカル『エリザベート』ルドルフ役でデビュー

2002 年
『バタフライはフリー』主演(パルコ劇場)

2003 年
亜門版『ファンタスティックス』主演、『ハムレット』ほか

2004 年
『ミス・サイゴン』(帝国劇場)ほか

2005 年
『モーツァルト!』、『エリザベート』、ウィーン『MITSUKO』ほか

2006 年
『アンナ・カレーニナ』、『ミー&マイガール』ほか

2007 年
『マリー・アントワネット』、『ロマンス』ほか

2008 年
『ウェディング・シンガー』、『ルドルフ』ほか

2009 年
『組曲虐殺』(銀河劇場ほか)、『シェルブールの雨傘』ほか

2010 年
ミュージカル『キャンディード』、映画『おのぼり物語』主演ほか

2011 年
ミュージカル『三銃士』ほか

2012 年
ミュージカル『ルドルフ ザ・ラスト・キス』ほか

2013 年
浦井健治、山崎育三郎とのユニット「StarS」デビュー

2014 年
『ダディ・ロング・レッグズ 足ながおじさんより』ほか

2015 年
『井上芳雄 シングス・ディズニー ~ワン・ナイト・ドリーム!』ほか

2016 年
『ナイスガイ in ニューヨーク』、TBS『情熱大陸』ほか

2017 年
NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』、TBS 日曜劇場『小さな巨人』、 テレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』、ミュージカル『グレート・ギャツビー』ほか

2018 年
『黒蜥蜴』(日生劇場ほか)、『1984』(新国立劇場小劇場)予定
ミュージカルを愛し ミュージカルに愛された男

Photo:Ryohei Tsukada 

ミュージカルを愛し ミュージカルに愛された男

クリスチャンの両親のもとに生まれ、お腹の中にいた頃から教会へ通い、物心つく前から賛美歌を聴いていた。

「気がついたら子供の聖歌隊に入ってましたね。なので、歌が好きになる以前に、もう歌ってました」
やがて10歳にして、その後の人生を決定づけるような、大きな経験をする。

「小学4年生のときに、福岡で劇団四季の『キャッツ』を観たんです。『なんてドラマティックなんだ!』と感動して、すぐに『僕にはこれしかない!』と。それからはミュージカルのことばかり考えていました。職業としてプロになるという具体的なものではなく、とにかくミュージカルをやりたいと」
人前に立つことは好きで、小学校と中学校では生徒会長に。中学の1年間をアメリカの学校で過ごし、帰国後、歌やダンスのレッスンをはじめる。

「東京藝術大学在学中に劇団四季の『オペラ座の怪人』でデビューした石丸幹二さんにすごく憧れていました」
福岡の高校に通いながら、東京藝術大学を目指し、月に1度、日帰りで東京でのレッスンも受けるようになる。

「普通の高校だったので、まわりにミュージカルの話で盛り上がれる友だちはいなかったですね。ネットも今ほど発達していなかったので、とにかく情報に飢えていて、勝手に焦ってました。東京にはもっとすごいやつがいるに違いないって。放課後は、天神という福岡の繁華街に行き、ひたすらCD屋さんや本屋さんをチェックして、ミュージカルの雑誌や本が出てないか、一人でパトロールしてましたよ」
結果、見事現役で東京藝術大学に合格。念願の藝大生になったはずが、思い描いていた場所とは少し違っていた。

「声楽科はクラシックを勉強するところなので、基本はオペラなんです。ミュージカルに関係する授業はほとんどなくて、基礎的な声楽の勉強にはなりましたけど、ちょっと違うな……と。しかも、自分より歌が上手い天才がゴロゴロいて。本当に日本中から天然の名器が集まっていました」
しかし大学2年生のとき、数少ないミュージカルの授業に舞台演出家の小池修一郎氏が講師としてやって来る。そこでオーディションに誘われたのが、デビュー作となるミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役だった。

「小池さんは大抜擢が好きな方なんです。それに『エリザベート』はもともと好きで、もし自分がやるとしたらルドルフ役かなという妄想もしていたので、歌も練習していました。オーディションで3人が残されて、『1時間後にこの曲を歌って』と言われた曲が、2人はそのとき初めて聴いた曲なのに、僕はずっと練習していた曲だったんですよ。完璧に歌えた手応えはありました。ずっと好きでよかったって」
20歳の大学生にして、初舞台が帝国劇場。まさにミュージカルのような、ドラマティックな人生が動き出す。

「人生は何があるか分からない、夢って叶うんだ、本気でそう思いました。ただ、10歳からずっとミュージカルのことばかり考えていたので、1年目なのに意識だけはやたら高かったですね。当然、演出家の先生方や共演者の方々の名前も全部知っている。なのにパフォーマンスは1年目。そこで現実とのギャップに苦しんだりもしました」
当然、いつかは主役をやりたいと願っていたが、鮮烈なデビューによって、その目標もすぐに叶えることができた。

「段階を踏んでたどり着くものだと思っていたのが、いきなりやってきたわけですから、実力がついていかない。それに苛立ってしまい、待望の主役なのに『なんでこんなことやらなくちゃいけないんだ』って。浅はかですよね」
デビューから17年、いまや名実ともにミュージカル界を背負う俳優になり、より大きな視野を持つようになった。

「10周年のコンサートで自分の活動を振り返ったときに、少しでもミュージカル界に恩返しをしたいなと思いました。イヤでも自分のことばかり考える仕事なので、意識としてはなるべく広く、ミュージカル界や演劇界全体のことを考えていきたいんです」
最近では、ドラマやバラエティ番組にも積極的に出演している。

「バラエティ番組からミュージカル俳優に声がかかることなんて今までなかったですし、何年か前の自分だったら急にスタジオで『歌ってよ』と言われても、できなかったと思います。ミュージカルの世界では “プリンス” なんて呼ばれることもありますが、別の世界に行けばまったく知られていない。そういうことに向き合えるようになった今は、すごくいいバランスなんです」
●情報は、FRaU2017年12月号発売時点のものです。

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