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【大和和紀×武内直子 初対談】超人気漫画の誕生秘話 [FRaU]

2017年11月16日(木) 20時00分配信

昨年画業50周年を迎え、この秋映画化や宝塚でも上演されるなど話題が続く『はいからさんが通る』の大和和紀先生と、大和作品の大ファンである『美少女戦士 セーラームーン』の武内直子先生。

対談は初めてという、歴史に残るスーパーヒロインを生み出した超人気漫画家であるおふたりの、貴重なトークをお届けします!
武内先生、バブルの頃に 大和先生のアシスタントへ

©Waki Yamato/KODANSHA

武内先生、バブルの頃に 大和先生のアシスタントへ

武内 先生は覚えてらっしゃらないかもしれないんですけど、私一度だけ先生のアシスタントをしたことがあるんです。

大和 ごめんなさい、覚えてない(笑)。

武内 当時私はデビューしたばかりの頃で、アシスタント経験なしでしたが「人手が足りないのでとにかく行って」と編集部の人に言われて。

大和 それ、ちょうどバブルの頃だったでしょう?

武内 ‘86~’87年あたりなのでそうですね。

大和 当時は新人さんがどんどんデビューしていたから、アシスタントはつねに取り合い。結構入れ替わりが激しくて、武内先生のように一度だけという方もいっぱいいました。

武内 私は『あさきゆめみし』の原稿をお手伝いしました。チーフアシスタントの方に、カラス口(※製図用のペン)を使って原稿に枠線を引いてほしいと言われたんですけど、使ったことがなくて、線を引いた瞬間に、インクがジワーッと(笑)。

大和 入れすぎたんですね(笑)

武内 もう凍りつきました。修正するから大丈夫と言われたのですが、そのあとどうなったのか、記憶がありません(笑)。

大和 それは大変だ(笑)。

武内 静かなマンションの窓の外に降る雪をながめていたのを色濃く覚えています。

大和 そうでしたか。
武内 大和先生の作品は小学生時代に読んでいて大好きだったのですが、それがきっかけになり、単行本を本格的に集め始めました。『私の兄はヌードロン』という作品が手に入ればコンプリートなんですが……。

大和 わあ、すごい! ありがとうございます。

武内 コミックスだけでなく、イラスト集も宝物です。先生のカラー作品も大好きです。

大和 昔の少女漫画誌って、カラー作品がたくさん掲載されていましたね。イラストポエムなんていうのもあった。

武内 そうそう、人気作家の先生は必ずかかれていました。

大和 ポエムも自分で作らないといけなかったんですよ! ポエムがとにかく苦手で、適当なことを書いて無理矢理くっつけてね(笑)。

武内 先生のカラーで、「ペンの主線の上からホワイトで描く」という手法にすごく憧れて、実際にやったことがあります。それと、以前幕張のブックカフェで『あさきゆめみし』のカラー原画を見せて頂き、トレーシングペーパーに描いているのを知り「こんなに面白い効果が出るのか!」と感動して、それもすぐに真似しました。

大和 トレーシングペーパーは、小沢真理さん(※漫画家。代表作に『世界でいちばん優しい音楽』『銀のスプーン』など)に教えてもらったんですよ。肌の色がきれいに出るんです。

武内 真似してみてよく分かりましたが、先生のカラーはどれもすごく時間がかかっているなと。

大和 1週間かかるなんてこともありますよ。

武内 濃密なカラーが大好きで、かなり影響を受けました。
大和 ありがとうございます。『セーラームーン』はパソコンを使って描いていたんですか?

武内 連載当時は使っていません。

大和 そうなんですか。とても手描きとは思えない背景や画面なので、これはもうパソコンが使える世代なのかと……。

武内 まだまだアナログです。当時漫画の同人誌が爆発的に流行り、それに合わせて、低価格のトーンが出始めて。アシスタントさんが同人活動をやっている子が多く「先生、また新しいトーンが出ました!」とよく教えてもらい使いまくりました。

大和 安くなったし種類も増えてね。

武内 はい。新しいトーンを使うと「見たことがないトーンが貼ってある!」と同業者や読者が話題にしてくれて。嬉しかったですね。

大和 『セーラームーン』は異次元に行ったりするお話だから、トーンを多用しないと表現しきれないところがある。形にならない雰囲気を出すわけだから。これは大変なことですよ。

武内 トーンワークだけは目新しさを目指してがんばりました。小学校の頃先生の作品を見てペンタッチの細さややわらかさ、「どうして主線が白いのか」とか「こんな背景の描き方は見たことない」とか、「こんなの初めて」という驚きがいつもありました。ですから自分もそういう表現がしたい、と心のどこかで思っていたのかもしれません。
高校生の恋愛ものを描くのに 飽きていたふたり

©Naoko Takeuchi

高校生の恋愛ものを描くのに 飽きていたふたり

大和 『セーラームーン』はデビュー作ではないんですよね?

武内 初めは普通の恋愛ものを描いていたんですけど、歴代の担当さんに「作品がつまらない」「もっと違う方がいい」と言われていました。でも、おさぶ(※武内先生の担当編集者の愛称)が担当になって「あなたの好きなものはなんですか?」と改めて聞かれて、いろいろ話していく中で『セーラームーン』が生まれました。大和先生は『はいからさん』のお話をずっと温めてらしたんですか?

大和 そんなことないんです。私も武内先生と同じで、高校生の恋愛ものを描くのに飽きていた時期だったので「違うのにしませんか?」みたいな。私は違うことがしたい、でも編集者としては、描いてほしい……。

武内 そこで大正時代の女学生が出てくるんですね!

大和 そうです。大正時代に16〜17歳っていうと女学生だね、だったら袴にブーツだね、って感じでした。武内先生はどうしてセーラー服にしようと思ったんですか?

武内 担当の好みでもありますが(笑)、制服の出てくる漫画が好きだったので『スケバン刑事』も面白かったなとか、あの路線にピンときていたのかもしれません。
大和 女の子の戦隊ものっていまでこそ結構ありますけど、『セーラームーン』は、そういう作品が生まれるきっかけとなった、親みたいなものじゃないですか。戦隊ものとか、変身ものは以前から好きだったんですか?

武内 小学校時代、少女漫画と特撮戦隊物にハマっていました。

大和 日曜日の朝から(笑)。

武内 はい(笑)。『魔女っ子メグちゃん』『魔法使いサリー』『魔法使いチャッピー』『花の子ルンルン』などの魔法少女物も大好きでした。

大和 どれも変身ものですね。

武内 『デビルマン』(※人間の心と悪魔の力を併せ持つデビルマンの物語。永井豪による同名漫画が原作。’72〜’73)も強く印象に残っています。母が「あなたは幼稚園から帰るとだまって、デビルマンのアニメをよく見ていた」と言っていました(笑)。

大和 あれは本当は悲しいお話よね。

武内 すごく悲しくて激しい。衝撃を受けました。そういう要素が『セーラームーン』にも入っていると思います。

大和 背中から羽根が生えるところなんか、ちょっと『デビルマン』っぽいかも。

武内 そうかもしれないです!
※FRaU2017年12月号より一部抜粋

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