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齋藤薫「人は、丁寧に生きるほどに、10年ごとに別の人生を生きることになる!」 [VOCE]

2017年09月14日(木) 20時00分配信

ビューティジャーナリスト by 齋藤 薫

人気連載「斎藤薫の美容自身 STAGE2」より、“人は、丁寧に生きるほどに、10年ごとに別の人生を生きることになる!”について。

一つのことを10年でやり遂げて、ムクムク次のことがしたくなる

20代ではまだわからない。30代でもまだ曖昧なのだろう。でも40代になったら、ちょっと精査してみてほしいことがある。あなたもひょっとしたら、“10年ごとに別の人生を歩いている”のかもしれないから。そしてそれは、とても素晴らしい生き方だから。

もちろん一生涯、一つのことにこだわり続ける生き方も、それはそれで素晴らしい。でも、進化していく女は、いつの間にか10年ごとの人生を生きている。どうしても10年ごとになってしまう。そういうものだということ、今から知っておいてほしいのだ。

とてもわかりやすいケースは、やはりアンジェリーナ・ジョリーの“10年進化”。10代は思い切り後ろ向きに生き、20代では眠っていた才能を爆発させ、30代は慈善活動と家族との生活に時間を費やし、40代は女優よりも監督業に移行すると宣言している。そしてなぜか離婚もして、明快な再スタートを切ろうとしている。そういう意味で、この人の40代50代が、一体どんなふうになっていくのか、全く想像もつかない。でも、この先も10年ずつ確実に前に突き進んで行くことだけは間違いがないのだ。

また先ごろ、美容からファッション、ライフスタイルまで、幅広い提案ができるトータルブランドを立ち上げると発表した藤原美智子さんも、やっぱり10年進化を完璧な形でやり遂げてきた人。20代で、才能を開花させて、30代で大ブレイク、藤原美智子という人そのものをステータスブランドとして確立させて、40代は、生活全般へのマルチな提案を始め、50代では、結婚を経て、それを私生活でみごと実践してみせた。そして来たる60代、今までやってきたことの集大成を自分のブランドで構築し、具体的な形に結実することになったのだ。本人曰く、「10年ごとのサイクルなんて全く意識していなかった。結果としてそうなっただけ」。でも、とても不思議だ。

奇しくも、小池百合子都知事も、20 代で通訳、30代でキャスター、40代で政治家となり、50代では自民党で大臣もつとめ、60代で都知事へ。自らも、知らず知らず“10年ごとに新しい自分を作ってきた”と語っている。結果論ではあるけれど、なんだか10年同じことをしていると、ムクムクと次のことがしたくなるのだと。

いずれの場合も、“10年進化”というものを意図したわけではないよう。それでも、いつの間にか10年ごとになっている、それが人間の一つのサイクルだからだろう。日々を必死に、しかし丁寧に生きている人は、とても自然に10年サイクルで何かをやり遂げてしまう。飽きてしまうのではなく、やり遂げる。だから次に進む、それが進化につながるのだ。

年齢は背番号だと言った人がいたけど、それをいうならむしろ、年齢は、前へ前へ進むための目盛りといってもいいかもしれない。10年で10メートル進むための。だから、重要なのは年齢よりも年代なのだ。

逆に、栄光や成功から、どんどん離れていくような進化もあった!

ただ、“10年進化”といっても、ひたすらガシガシと先に進むだけではない。当然の事だけれど、出世や成功だけが人生ではないわけで、逆に栄光からどんどん離れていくような人生もあるはずなのだ。だから、こんな価値観の人がいた。

例えば、私たちがオードリー・ヘプバーンという人を振り返るとき、一世を風靡した女優というイメージしか見えてこないけれど、この人もほぼ10年ごとに別の人生を送っていたと言っていい。そもそもこの人は、バレリーナを目指していた。10代から20代前半までは、ダンサーとしてそれなりの名声を得ていたといわれる。しかし、 170センチという長身が災いして、バレエを半ばあきらめる形で舞台から映画界に入っていく。

ご存知のように『ローマの休日』でいきなりのアカデミー賞女優となり、そこからの10年は文字通りハリウッドのトップ女優となるわけで、実際に私たちがいまだに大切にしているオードリーのポートレートは、全てこの10年の間のもの。

でも意外なことに子供を持つことを人生最大のテーマとしたようで、最初の結婚で2度の流産の末に子供を儲け、30代後半からは、家族との静かな生活に入りたいと、スイスの郊外に移り住み仕事を急激に減らしていく。36歳からの10年間は、一本も映画に出ていない。もうここで、ほぼ引退状態となっていたのだ。

そういう意味での価値観が違ったのか、最初の夫と離婚。本当の意味で、子供との穏やかな生活を始め、その間、2度目の結婚して、40代半ばで2人目の子供を儲けるが、この夫の不倫が元で、やはり離婚しているのだ。ただこの人は合計、5回もの流産をしていて、いかに子供にこだわっていたかを考えるとなんだか胸が痛い。もし、この度重なる流産がなかったら、もっと別の人生を歩んでいたかもしれないから。

そして50代は、ご存知のように、慈善活動へと気持ちが動いていく。50代後半からユニセフ親善大使として活動、60代は難民キャンプに出かけていたのはよく知られている。

バレリーナを夢見る10年、女優として輝かしい歴史を残す10年、子供との生活を始めた10年、ハリウッドから遠く離れて静かに人生を営んだ10年、そして慈善活動に心を向けていった10年。ちなみに、最後の10年間は、結婚こそしなかったものの、新しいパートナーとの生活を「人生最良の日々」と言って憚らなかった。

あれだけの美貌と才能に恵まれ、世界的な人気をも誇っていたのに、野心もなく、多くを望まず、静かな幸せだけを求めていく生き方は、一見後退に見えるけれど、やはりそれはそれで10年進化の成功例と言えるのではないだろうか。つまりは、前の10年よりも、今の方が地味で静かな生き方になっていても、それは自分の潜在意識の中にある理想に向かっている形に他ならないのだ。

だからたとえ、ずっと同じ、わずかの進化も前進もせずに、平坦に淡々と生きているという人も、もう一度自分の生きてきた道を振り返ってみてほしい。日々を丁寧に生きてきた人なら、必ず何か大きな変化や前進があるはずだから。また同じ会社で、同じ仕事を、ずっと同じようにしている人にも、意識の変化というものが必ずあるはずで、それこそが実は大切だと言いたいのである。

逆に言うなら、生きているのがとても退屈という人は、意識が変わっていないから人生が退屈に思えるのに違いないのだ。 形だけが変わっても、心が変わらなければ、人生はハッキリ停滞する。つまり、飽きっぽくて次々に仕事を変えたり無軌道に方向転換していたりする人は、ただ闇雲に居場所を替えているだけで、心が替わっているわけではないから進化しない。その違いを明快にして欲しいのだ。10年進化を遂げている人たちは、最低10年規模でじっくり一つところに腰を据えている。たとえ何ひとつやり遂げられなくても、心がどんどん正され、徳を積んでいけば、それで良いのだ。それだって明快な人間の進化なのだから。

さあ、あなたは今、どんな10年を生きているのだろう。そういう風に、10年単位で自分の人生を見直してみると全く新しいことが見えてくる。どちらにせよ、一度大きな視野で人生を俯瞰で見直してみること。知らなかった自分が見えてくる。
齋藤 薫
美界のご意見番。VOCE連載のほか、美容や女性をテーマに多くの女性誌で執筆中。精神性の深さが多くの女性から支持をえている。

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