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65歳から1億円!?老後の暮らし、いくら必要? [おとなスタイル]

2017年06月28日(水) 10時00分配信

Q.老後のゆとりある暮らしのためには、本当のところいくら必要? やっぱり貯金は続けていくしかないですか?

A.100万円の医療費が9万円の支払いに! デフレ時代は貯金よりも、健康保険をはじめとする、情報収集が肝心です。
「ねんきん定期便」で見込み額を事前に把握 

まずは年金の支給額を把握!

「ねんきん定期便」で見込み額を事前に把握 

「私のところにご相談に来る方の中でも、貯金についての悩みを抱えている50代女性は少なくありません」
と話す社会保険労務士の佐佐木由美子さん。企業の人事労務・社会保険についての的確なアドバイスで多くの支持を得ている佐佐木さんは、働く女性の職場環境改善のための情報共有サロンを主宰し、キャリアやお金に関する悩み相談を受けている。
「ただ、皆さんの話をよく聞くと、お金についての基本的な情報を持たないまま、なんとなく漠然と心配になっているというケースが多いことも事実。不安の大きな原因は情報不足なのです。たとえば、将来、自分がどのくらいの年金をもらえそうなのか、調べてみたことがありますか? あといくら貯めたらいいのか、と焦る前に、まずは自分の老後の収入のベースとなる年金について、押さえておきましょう。
少子高齢化によって公的年金の継続に不信感をもつ人もいますが、国の制度でもありますし、少なくともなくなることはまずありえないと私は思っています。将来、受給開始年齢の引き上げはあるかもしれませんが、大きく状況が変わらない限り、一生涯もらい続けることが保障されています」

年金の支給開始は原則65歳からだが、どれくらいの額が支給されるのか事前にチェックする方法がある。その一つが「ねんきん定期便」だ。
「毎年1回、誕生月に送られてくる『ねんきん定期便』は日本年金機構が年金の加入者に送っているものです。じつは、私の周りにも中を詳しく見ないまま捨ててしまっている人が意外と多いのですが、50歳以上になると、自分の“年金の見込み額”が表示されているので、ぜひ見ていただきたいです。それは、現在加入している年金制度に60歳まで同じ条件で加入し続けた場合に受け取れる年金の額。ただし、それはあくまでも今と同じ働き方を続けた場合の試算ですから、もしかしたら、あと何年かの間に働き方が変わる人もいるかもしれません。早期退職や、独立して起業したり……そうなれば年金額は違ってきます。でも、それも『ねんきんネット』に登録すれば、さまざまな場合の年金をシミュレーションすることができるのです」
年金の情報サイト「ねんきんネット」を利用するには、利用登録(ユーザーIDの取得)が必要。一度登録すれば、24時間いつでも利用できる。

「これだけの収入を60歳まで受け取れたら、あるいは65歳まで働いたとしたら……と試算してみると、なかなか面白いですよ。自分の分だけでなく、夫の基礎年金番号を入力して登録すれば、夫婦の将来の年金額を確認することができます」

ゆとりある老後には65歳から1億円が必要!?

老後にはいったいどれくらいのお金が必要なのか。意識調査の結果として、出てきている数字がある。「18歳~69歳の男女を対象に公益財団法人生命保険文化センターが行った調査(平成28年12月発行)によれば、夫婦2人の『老後の最低日常生活費』の月平均は22万円。『ゆとりある老後生活費』には34.9万円が必要、となっています。つまり、ゆとりある老後を実践していくと、65歳から月々約35万円で90歳まで生きた場合、合計で約1億円という計算になります」

1億円といわれると、正直、ただ唖然としてしまうばかりだが……。
「もちろん、住んでいる地域や各家庭の支出予定などによって状況は違ってきますが、あくまで一つの目安として、この生活費を年金収入と比較してみましょう。

“夫が40年間厚生年金に加入(その間は厚生年金男性の平均収入)、妻が40年間専業主婦”
というモデルケース(厚労省試算)では、夫婦の年金額は月に約22万円ですので、最低日常生活費はギリギリクリア、ということになります。ゆとりある暮らしを望むなら、年金で足りない額を貯金しておこう、ということになるでしょう。
50歳で会社員なら定年まで10年、継続すれば15年は仕事ができる人は多いのではないでしょうか。自分の働き方と合わせて、将来のお金の予定を立てていくといいと思います」

老後のお金を大まかに把握したら、次は公的な社会保険制度からもらえるお金についての情報もぜひチェックしてほしい、という佐佐木さん。
「公的な社会保険とは、健康保険、年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険などで、病気やケガ、介護、失業など人生のリスクに対して、国が保険給付を行うことで助けてくれる制度です。困った時にもらえるお金の制度なのに、利用の仕方を詳しく知っている人が意外と少なく、しかも、自分から請求をしないともらえないものもあり、知らないと損をすることになりかねません。会社員や公務員は給料から天引きで、フリーランスの人は自分で加入する形で、長年、保険料を払っているのですから、いざという時に活用しないのはもったいない。
“お金を貯める”ということに直結はしなくても、制度の存在を知っておけば、貯金の心配もかなり取り除かれるはず。特に、病気になる心配が増えてくる50代には、とてもお得な健康保険の高額療養費制度をご紹介したいです」

手厚くなった介護休業給付金で、不安も解消

高額療養費制度は入院や手術などで医療費が高額になっても、自己負担は少額で済むという制度。年齢や所得に応じて自己負担の上限が決まっていて、それを超えると超えた分のお金を払い戻してもらえるのだ。
「分かりやすい金額を例にとってみると、たとえば52歳で年収約500万円のAさんが、ひと月で入院や治療代、薬代などに総額100万円の医療費がかかったとします。病院の窓口で健康保険証を出すと通常3割負担でいいので、Aさんはまず30万円を支払います。ここまでは、いつもの健康保険の制度ですが、その後に高額療養費制度を申請すれば、Aさんは自己負担の上限が8万7430円と決まっているので、最終的に21万2570円が戻ってくることになる。とても心強い制度です」
70歳未満の場合の所得区分とその所得に応じたひと月あたりの自己負担の上限額を、下の表に一覧にしたので、ぜひ確認を。

また、50代からは親の介護に直面して仕事と介護の両立に悩むというのもよく耳にする話。そんな場合にも助けになってくれる保険がある。
会社員の方であれば介護休暇を取った時に『介護休業給付金』がもらえます。介護休業は、施設やケアマネージャーの選定など、主に介護の支度を整えるための休業として考えられ、法律では通算で93日までと決まっています。給付金は、これまでは平均賃金の40%でしたが、昨年改正されて、67%まで支給されることになりました。気分的にも、以前より安心して介護準備に専念できるのではないでしょうか。
日本にはこのように手厚い保障の制度が整っていますので、過度に怯おびえることはありません。今から少しずつでも情報収集をして、不安要因を潰していくことをお勧めします」
急な出費への基礎知識 年収別・高額療養費早見表

※ 同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えないときでも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担を合算することができます。

急な出費への基礎知識 年収別・高額療養費早見表

例:年収500万円の人が100万円の医療費で窓口負担30万円の時
負担の上限額 80100円+(1000000円-267000円)×1%= 87430円

本文中に出たAさんのケースを計算してみましょう。
Aさんは所得区分の「年収約370~約770万円」に当てはまり、ひと月あたりの自己負担上限が80100円+(医療費-267000円)×1%となり、負担は87430円となる。
参考:厚生労働省保険局資料

上の表は、70歳未満の人の場合をまとめたもの。年収は目安で、健康保険加入者(会社員等)は「健保」欄の標準報酬月額を、国民健康保険加入者(フリーランス等)は「国保」欄の年間所得をチェック。その右の欄にある計算式を使うと、ひと月あたりの自分の負担限度額がわかる。会社員や公務員の扶養家族である専業主婦の場合は、夫の所得区分のところを見て計算を。

 

■Profile
社会保険労務士
佐佐木由美子さん
グレース・パートナーズ社労士事務所代表。企業を中心に就業規則や社会保険面をサポートし、親身なコンサルティングで支持を得ている。働く女性のための情報共有サロン「Salon de Grace」を主宰。

 

 

『おとなスタイル』Vol.7 2017春号より
撮影/大河内禎

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