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石田ゆり子さんが大切にしている「暮らしと言葉」 [FRaU]

2017年03月17日(金) 20時00分配信

ゆり子さんのライフスタイルがどんなものか気になった。ストレートに「家事は好きですか?」と質問すると、「料理は好きです。掃除は、嫌いじゃないですが、得意でもないです」という答え。今現在、猫と犬を飼っているので、掃除は、やってもやっても追いつかないのだとか。
家のものが、全部なくなったとしても平気なんだと思う

Photo: Takashi Honma

家のものが、全部なくなったとしても平気なんだと思う

「インテリアは昔から好きでした。買い物も好きだから、家にモノはすごく多いです。ただ、もしそれが全部なくなっても平気なんだと思う。今はむしろ、一回全部なくなったらラクだな、って思ってるぐらい(笑)。

洋服でも、食器でも、リネン類でも何でも、自分が可愛がれる範囲って限られてるなってことに最近気づいて……。できるだけ身の回りをシンプルにしたいと思う今日この頃です。

今欲しいものは、見えないものですね。形になっていないもの。たとえば心地いい風だったり、目に優しい光だったり、とにかくホッとできる空間だったり……。お金では買えない、自分が心から寛げる空間を、作っていく時期なのかな、と思います」
30代までは、たくさん買い物もした。石鹸、タオル、シーツに食器にカトラリー。毎日使うもの、使ってみないとわからないものに対する探究心が強かったために、買いはしたけれど、ムダにしたものも多かった。

「でも、ものすごく高いものは、あんまり持ってないんです。すっごくいい時計とかジュエリーとか……まったくないわけではないですが、そんなには持ってない。それよりも、日常使いの小物を、〝いいな〞と思ったら手当たり次第に買って、試していましたね。服もそうです。とくにショールとかの巻き物が好きで、〝この刺繡が好き!〞と思ったら迷わず買って、でも似合わなかったなんてことは山ほどあります(笑)。

そういう浪費の時期を経て、今は、洋服も、絞って買うようになりました。長く着られるいいもの、ワンシーズンだけのために買うリーズナブルもの。その使い分けの加減も、さすがにわかってきましたし……。でも、ここまできてわかったのは、私にはモノの少ない生活はできないってこと(笑)。今あるものは、すべて淘汰されずに残ったものだから、全部好き。私の人生で出会ったものたちだから、全部大事なんです。でも、何かの拍子になくなっても平気だろうなとも思うんですけどね」
誰にでもわかる言葉で、自分にしか言えないことを

Photo: Takashi Honma

誰にでもわかる言葉で、自分にしか言えないことを

厳密に言えば、今、ゆり子さんは一人暮らしではない。家に帰れば、3匹の猫と1匹の犬が待っている。「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されていた〝はなちゃんシリーズ〞を覗いてみると、ゆり子さんの、動物たちとの童話のような、長閑(のどか)な暮らしの一端を垣間見ることができる。

「ずっと前から、糸井(重里)さんが紡ぎ出す言葉が大好きで、『ほぼ日刊イトイ新聞』も、よくチェックしていたんです。それで、糸井さんとお会いする機会があったときに、『糸井さんが、毎日ちょっとずつ書いている文章が好きで』とお伝えし、『私もやりたい!』と立候補したんです。そしたら『ぜひぜひここで遊んでください』と糸井さんが仰って下さって。

小さい頃から活字が好きなんですけど、とくに、日常の中にサラッと入り込むような、自然な文章に心惹かれます。大袈裟じゃない、難しくない、ややこしくもない。理屈抜きで〝ぽんっ〞て今そこで生まれたような、そんな文章が好き。糸井さんの言葉で、すごく共感したもののひとつに、〝誰にでもわかる言葉で、自分にしか言えないことを書け〞というのがあるんですけど、それは、本当にものを書く上での真実だなぁ、と思います」
かくいうゆり子さん、何冊ものエッセイ集を上梓している文筆家としての一面もある。言われてみると、その文章はとても自然でさり気なく、実際に彼女と向き合っているときに感じられるような柔らかい空気感が、行間から溢れ出す。子供の頃の、〝絵本作家になる〞という夢――。今でも、「いつか書けたらいい」という思いはあるのだとか。

芝居のセンス、暮らしのセンス、ファッションセンス、言葉のセンス……。ゆり子さんと話したり、書いたものを読んでみると、彼女を取り巻くあらゆるセンスが、軽妙洒脱であることに気づく。そこに、ちょっとだけ抜けたところがあったり、自分のことを決して大きく見せようとしない自意識の低さがあったりして、大人の成熟と、少女の一途さのブレンド感が絶妙だ。

※フラウ 2016年12月号より一部抜粋

PROFILE

石田ゆり子 Yuriko Ishida
1969年生まれ。東京都出身。’88年、テレビドラマ『海の群星』(NHK)でデビュー。以後、ドラマ・映画・舞台・執筆活動など多岐にわたり活躍する。映画『北の零年』(05年)で第29回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作は、映画「悼む人」(15年)、『僕だけがいない街』(16年)、ドラマ『MOZU』(14年/TBS)、『コントレール~罪と恋~』(16年/NHK)。映画『もののけ姫』(97年)、『コクリコ坂から』(11年)などスタジオジブリ作品では声優も務める。2016年には、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)に出演した。

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