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名インタビュアー佐野剛平の「聴き上手になる方法」 [おとなスタイル]

2017年02月02日(木) 09時00分配信

聴く技術。話し下手なら聴き上手になろう

自分のことを話すばかりで相手の話を「聴けない人」が50代に増えている!
ワンランク上の会話のレッスン、まずは人の話を聴くことから始めてみましょう。

軽薄な饒舌人よりも話し下手のほうがいい

「話し上手だと思っている人の8割は“しゃべり隊派”だと、僕は『話し方セミナー』の講座でいつも言っています。“しゃべり隊派”は、自分の話ばかりしていて、人の話なんて聴かない。そういう軽薄な饒舌人になるよりも、『自分は話し下手だ』と思っているほうがずっといいです」

話し下手にも、いろいろなタイプがあります。自分の気持ちを表せなかったり、言葉がうまく出てこなかったり。中には「自分は話したくない」という人もいる。

「もちろんいますよ。そういう生徒さんにはいつも言うんです。『じゃあ、聴き役にまわりましょう。“聴く”っていうのは面白いのよ』って。会話はキャッチボール。受け手がいないと始まりません。だからどんな人も、まずは“聴く”技術を身につける。最初の一歩はこれです」

雑談と会話は違う。“会話”の聴き役になろう

「最初にみなさんに意識してもらいたいのは、“雑談と会話は違う”ということ。日常会話は雑談でいいんです。面白おかしい話をしていれば、それでいい。でもそれだけだと、何も残らないじゃない? 時間のムダじゃない?」

何も残らないと言われると……テレビやネットの話、子供や孫の話、病気の話、噂話や愚痴……。私たちは雑談しかしていない気がします。

「雑談から一歩離れることを意識しないと、女性の世界はやってこないと僕は思う。男はつまんない理屈を言って、それで通っちゃうところがあって、理屈で通す男社会がこれまでずっと続いてきた。でも、女の人は理屈ではないよね。もっと相対的な、大きな視点で物事を見ている。

だから50代ぐらいの大人の女性には、自分たちの雑談の狭い世界にとどまっていないで、ワンランク上の“会話”をして欲しいんです。人としっかり向きあって、気持ちのやりとりをして、あなたたちが世界を広げていかないと、本当の意味で豊かな世の中にはならない。雑談ではなく、“会話”の聴き手になってください」

“聴きたいこと”があれば会話は成功する

では“会話”とは、具体的にどういうものを指すのでしょう?

「僕たちが会話をするのは、その人に聴きたいことがあるから、だから会話をするんです。友だちでも、ご近所の人でも、職場の先輩でもいいですが、何かその人に聴きたいことがあれば、それは会話なんです。 たとえば、お隣の奥さんが料理上手だとします。僕は彼女に聴きたいことがいっぱいある。『カレーのときの肉の切り方ってどうします?』『野菜の天ぷらって、どのぐらいの温度で揚げたらいいんですか』たとえ自分が包丁を使えたとしても、『包丁がうまく使えないんですよ』と僕は言うでしょう。自分のことは消すんです。自分よりも優れたものを相手が持っているという敬う気持ちがあれば、いくらでも“聴く”ことはできる。相手もいくらでも話してくれますよ。だって聴かれるのって、すごく嬉しいんだから」

聴き上手になるポイントは3つ

●相手に興味を持ち、敬う。
●職業や家族構成や出身地や趣味など、相手がどんな人であるか、ざっくりと知っておく。
●想像力を働かせる。

 

「相手がテニスのコーチだとしたら、どんな人に教えているのか、体は疲れないのか、そのための秘策は、食事は……と想像してみる。そして聴く。だから、何にでも興味を持つことです。人にも、世の中の動きにも、いろんなことに興味を持ってアンテナをたくさん立てておく。そうすれば話が途切れて、場をしらけさせることもありません」

まったく初めて会った人とも、うまく会話ができるものですか?

「できるよ! 知らない人と話すのがまた、楽しいんじゃない。だから『どういうお仕事をされたんですか』って、その一歩を踏み出すかどうかだよね。踏み出さずに雑談でその場をやり過ごせば、まったく相手のことを知らずに終わる。『横でお話を聴いていると、すごく華やかな感じを受けるんですけど、どんなお仕事をされたんですか』というふうに聴けば、相手はどんどん話してくれます。そこから得るものは絶対にあるはずだし、相手に楽しく話してもらうことができたと思うと、聴き手はそれだけで嬉しいんです。だって、自分の力が発揮できたんだから!」

話が暴走したら「さすが」と誉めてさえぎろう

聴き手にとって辛いのは、お喋りな人がいつまでも話し続けるのに付き合わされること。相手の暴走を上手に止めることはできますか?

「まずは誉める。『さすがですね』と。『そういうことはなかなか体験できませんものね』と誉めて、ひと呼吸おいてから『ところで、さっきのあの話に興味があるんですが』と切り替える。こうすると相手は『あ、それが聴きたいのか』と好意的に受け取って、方向転換してくれます」

聴きたい方向へ、聴き手がコントロールする。会話の主導権は、実は聴き手が握っているのです。

「テレビの解説者の言うことや、人の話をそのまま鵜呑みにして、自分の意見として言うような人も、世の中にはいっぱいいますよね。そういう人にはね、こっそり、呆れていいわけです。“あなた、いったい誰なのよ”と心の中でつぶやきながら、僕は『さすが。すごいですね』と誉める。そして少し間をとってから『そのお考えも大切かと思いますが僕はね……』と自分の意見を言う。 とにかく相手のプライドを傷つけないことです。『さすが』とか『あなただから……』『私にはとても……』といった言葉を、上手に使えるようになるといいですよ。『さすが』と軽く受け流して、次の話に切り替えることで、聴き手のストレスがなくなるんです」

「聴き下手」解消の5ヵ条

1:「何がお好き?」探り質問は万能選手

2:興味津々、生き生き楽しそうに聴く

3:「へ〜」「そうなの」「それで?」は真剣に、少なめに

4:相手をけなさない。「さすがですね」を上手に使う

5:上司、お客様にはいっぱい質問をしてあげましょう

 

ラジオ深夜便
NHKラジオ第1にて
毎日23:15~5:00、祝日23:10~5:00(NHK‐FM毎日1:00~5:00)生放送。
アンカーはNHK 現役・OBアナウンサー。静かで優しいトーク、さまざまな時代・ジャンルの曲、インタビューなどを流す、隠れた人気番組。

 

■Profile
佐野剛平
さの ごうへい
新潟県栃尾生まれ。1965年学習院大学経済学部卒業。元NHKアナウンサー、エグゼクティブプロデューサー。現在は『ラジオ深夜便』のディレクターで、『列島インタビュー(1:00台)』、『明日へのことば』(4:00台)の担当メンバーのひとり。取材交渉からインタビュー、構成、編集までを手がける。学習院生涯学習センターで長年続けている『話し方セミナー』も人気

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(撮影/大河内禎)

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