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割れた器が蘇る「金継ぎ」を知っていますか? [おとなスタイル]

2017年02月01日(水) 09時00分配信

器に新たな命を吹き込む 「金継(きんつぎ)」で器を長く愛おしむ

「金継ぎ」の歴史は室町時代まで遡り、茶道の世界では欠けた碗の繕った部分を「景色」と呼んで、その美しさを楽しんだとか。自分の手で思い出深い器をいたわり、美しく蘇らせる楽しさを、伊藤和江さんが語ってくださいました。
まずは自分の手で何かを表現する喜びを知ることから

器はたとえ割れても、金継ぎを施すことで、何度でも蘇ります。人生と同じね」と伊藤和江さん。 すっと伸びた背筋に漂う凛とした佇まいが素敵。

まずは自分の手で何かを表現する喜びを知ることから

大切にしていた器をうっかり割ってしまった……あの、胸にずんとくる痛みを経験したことのある人は多いはず。でも割れたかけらを繋ぎ、その器に新たな息吹を宿す方法があるのです。

「『金継ぎ』とは、漆(うるし)と金を使って、割れた器を修繕する日本の伝統的な修復技術です。私が金継ぎと出会ったのは、20年近く前。当時はお教室も見つからなくて」
職人さんがやるような本格的な金継ぎは手間も技術も必要で、とても難しいもの。そこで伊藤和江さんが採用したのが、パテや新漆、瞬間接着剤を活用する方法でした。

器の「欠け」や、「にゅう」と呼ばれるひび割れ、あるいは「割れ」を、 「金継ぎ」で上化粧することで、器に新たな魅力が生まれます。

「お教室では、最初はアレンジされた簡単な手法から始め、慣れたら少しずつ、本格的な技術習得へと移っていきます。まずは、『自分の手で直す喜び』を知っていただきたいから。私は金継ぎを『器の身だしなみ』と捉えていますが、割れや欠けをただ直すだけではなく、以前とは趣の違う、素敵なものに蘇らせてあげることを常に考えながら、お教えしています。

伊藤さんが物心ついた頃から、家で使われていたという器。 思い出の品を自分の手で金継ぎすることで、「やっと自分のものになった」という実感がもてるそう。

思い出のある品を長く使っていると、たとえ高価な器でなくとも、『自分にとってのいい器』になっていくものです。そして欠けてしまったときに金継ぎで上化粧をしてあげると、それまでは作家さんのものだった器が、『本当に自分のもの』になる。こうした遊びがもたらす喜びは、とても大きなもの。

「TUMUGU」で行われる教室。

お教室では、たびたび作品展を催していますが、生徒さんは皆さん、とても楽しみになさっています。自分の手で何かを表現したい欲求って、多分誰の中にも眠っているもの。お友達に、『私、金継ぎをやっているので、今度、作品を見にきてね』と、ご招待できることが、とても嬉しいようです。

何かを始めるのに、『手遅れ』なんてことはありません。時間に余裕ができる50代、60代は、むしろ何かとじっくり向き合うには、ちょうどいい年代ではないかしら」

 

 
■Profile
伊藤和江さん
いとうかずえ
フードコーディネーター・金継ぎ講師 69歳。
2001年~2007年、表参道に玄米を中心にした自然食の飲食店「Kuh」を開店。現在は料理教室・金継ぎ教室などを開催し、食文化のインストラクター・コーディネーターとして活躍中。

 

おとなスタイル(NHK団塊スタイル)より
(写真/大坪尚人)

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