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自分の望む未来のための別れとは?「捨てる!」技術・辰巳渚 [おとなスタイル]

2017年01月31日(火) 09時00分配信

昔ながらの掃除道具が活躍する辰巳さんの家。

130万部を超えるベストセラーとなった『「捨てる!」技術』著者、辰巳渚さん。
郊外住宅地のサラリーマン家庭で高度経済成長期に育ち、「基本、子どもの頃からものは大好き。整理整頓は苦手で、掃除も好きではなかった」という辰巳さん。30代半ばで『「捨てる!」技術』を出版してからの16年間は、人生に訪れる変化と向き合いながら、ふたたびその命題と向き合う日々だった。
愛する家との別れは、自分の望む未来のため

およそ3分の1の量にして茅ヶ崎の家から持ってきた食器は、今も生活の友。「1つのコップが、仕事をする力を与えてくれることもあるんです」

愛する家との別れは、自分の望む未来のため

仕事をしながらの子育て。40代での離婚、再婚。もっとも大きかったのは、15年間暮らしてきた湘南、茅ヶ崎の家を手放したことだという。

「ある意味、我が子以上に手をかけて育ててきた家を処分するという決断は、本当に重かったですね。引っ越しは、ものを減らすというよりも、1回、完全にリセットする感じでした。ひとつの要素だけでは決められない人生の決断、正解なんかない状態の中で、『私はどうしたらいいんだろう?』と悩みながら」

仕事と生活の新たな拠点として選んだのは、浅草。下町情緒が色濃く残るこの街で、好きなもの、人々とつながる暮らしを愉しむ。ものは意外と多めで、掃除には昔ながらの箒とハタキが活躍している。

辰巳さんの背中を押したのは、ただただ、自分の未来への思い。

「50代をどう生きるか。大好きな仕事をするとき、湘南という場所に留まる隠居状態では、私はきっと生きていけないだろうと気づいたんです。転居にあたって、捨てるものは捨てて……それはうれしいことでもスッキリすることでもなかったけれど、すべては自分にとって意味があったと思う。つまりは“捨てる”ということが、自分の中でさらに深まっていった体験だったのかもしれません」

「生活は地域の中でなされるもの。これからの自分の課題は、近代が切り捨ててきたつながりの回復だと思っています」と辰巳さん。本棚に『サザエさん』が並ぶのも、象徴的。

苦しむ中で、整理し、見出せた真理もあった。そのひとつが「人間の一生には、そもそも一貫性はないのではないか?」ということ。

「出産する前の自分と出産後の自分は違う人のようだと思うし、茅ヶ崎の家にいたときの自分と手放した後の自分も、まったくの別人。大きな出来事が起これば、人の考えは変わりうるものなんです。体だって、同じようでいて、ちゃんと変化している。常に生まれ直しているのが、人というものなんでしょうね。だから、大変だ、うまくいかないというときは、自分の人生のあるひとつの相が終わって、次のステージに進んでいかなければならないときなんです」

 

 

 

■Profile
辰巳 渚
たつみなぎさ
文筆家・生活哲学者
1965年生まれ。お茶の水女子大学卒業後、出版社勤務を経て、マーケティングプランナー、文筆家に。近年の著書に『美しく軽やかに 暮らしを整える44の秘訣』『人生十二相 おおらかに生きるための、「捨てる!」哲学』がある。主宰する「家事塾」での家事セラピスト育成、コンサルティングなどの事業を、現在、バージョンアップに向けて再構築中。

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(撮影/相馬ミナ)

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