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酒井順子・大人が輝くための「服でないもの」とは? [おとなスタイル]

2017年01月20日(金) 18時20分配信

服を素敵に着こなすヒントが詰まってます

「何を着ていいのか分からない」と、服の着こなしに悩むおとな世代。
今回、『ユーミンの罪』『オリーブの罠』など多数の著書を持つエッセイスト酒井順子さんに、“おとな世代”だからこそ、素敵に着こなすことができるヒントを教えていただきました。

「見せる脂肪」も、一つの加齢テクニック

大人の女性を輝かせるポイントは、高価な服を買うことができる経済力でもなければ、日々のトレーニングで引き締まった肉体でもなく、そして若い頃からずっと女性誌に「磨け磨け」と言われ続けてきたセンスでもありませんでした。なんということはない服を素敵に見せるのは、それまでの人生の中でそれぞれが築いてきた、自信。

我々の世代にとって、自信とは、生きる上で必要となる一つのセンスです。中年になれば誰しも二の腕や下腹が気になるわけですが、だからといって難点を隠すための服を着ていると、その自信の無さは確実に表に出る。チュニックで下腹を覆う中年からは、「おばさんだって思われてないかしら」というおどおど感と、「これで安心」という弛緩が漂い、ますます老けて見せるのです。

反対に、柔らかな肉がたっぷりとついた二の腕をノースリーブから出していても、伸びた背筋やきちんとした髪型によって、その脂肪はかえって、リッチさを演出する部位となります。インテリア用語で「見せる収納」というものがありますが、「見せる脂肪」も、一つの加齢テクニックなのではないでしょうか。

知り合いに、とてもジーンズの似合う六十六歳の女性がいます。カジュアルファッションは、中高年になると特に難しいものですが、彼女はいつも、まるで少年のようにジーンズを穿はきこなしている。
もともと、センスもスタイルもものすごく良い女性であるからこその技ではあると思うのですが、「そんな風にジーンズが穿けていいなぁ」 と羨むと、

「ジーンズはね、昔っから穿き続けているからこそ、今も穿いていられるのよ。スーツばっかり着ていたようなおばちゃんが突然ジーンズを穿いても、絶対に似合わない」

と、彼女。

確かにその女性は、今までもずっとジーンズを穿き続けていました。だからこそ六十代の今も、皮膚のようにしっくり着こなすことができるのでしょう。年月をかけることによってしか醸し出すことのできない空気感が、そこにはあります。

私はその時、大人の女性を素敵に見せる自信とは、このような「積み重ね」からくるのではないかと思いました。長年穿いているからこそ、似合うシルエットもわかるし、また自分でヴィンテージ化させたジーンズを何本も持っている。それは確かに、突然ジーンズを穿きだした人にはできない芸当です。

自信の源となるものは、人それぞれです。長年鏡を見続けたことによって導き出された、自分の脚を最も美しく見せる丈のスカート、とか。大切な人にもらった指輪、とか。「これ」というものを身につけることによって堂々としていられることが、あるものです。

“我々の世代にとって、自信とは、

生きる上で必要となる一つのセンスです”

■Profile

酒井順子
さかい じゅんこ
エッセイスト。1966年東京都生まれ。2004年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。著書に『ユーミンの罪』『オリーブの罠』『裏が、幸せ』『「来ちゃった」』『子の無い人生』など多数。

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(イラスト/松園量介)

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