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稲垣えみ子さん「我慢の人生」と決別する方法 [おとなスタイル]

2017年01月14日(土) 10時00分配信

フリーランサー、稲垣えみ子さん

著書に『魂の退社』などを持つフリーランサー、稲垣えみ子さん。次々と家電を処分する『個人的脱原発計画』、その節電生活はメディアでも話題になりました。冷蔵庫もエアコンも、洗濯機もない、そぎ落とされたシンプルな生活は、『ない』から生活レベルが落ちる、惨め、とは違うと稲垣さんは語ります。
自分を惨めにしないための価値観の変換

1日600円で食べていけると計算した稲垣さん。

自分を惨めにしないための価値観の変換

稲垣さんが会社員になったのは、バブル景気まっ直中の1987年。
「洋服が好きだったので、学生時代には買えなかった服を買いまくっていた」というように、新人時代は人並みに浪費生活を送っていた。それがわずか5年足らずで、抱えていた「荷物」をどさっと捨てたのである。

「私もそうだったんですが、企業の宣伝で、みんな、言われるがままにぼんやりと欲望が拡大しているから、自分がどこまで持てば満足できるかがわからなくなっているんです。着るもの、住むところ、電気製品で何が必要かを含め、人によって満足できる欲望のサイズは違うのに。そこに気づかない限り、少しでも足りないと“我慢の人生”で、将来は永久に不安になります」

消費生活の狂気もこう指摘する。
「最新家電は、5年経つと粗大ゴミ扱いになって、捨てるのにもお金を払わなければいけない。5年でゴミ扱いになる最新家電って、なんだろう。それで経済を回しているって、どこか狂っていますよね。中古家具であれば何回でも売れるのに」

テーブル下には火鉢に使う炭が。

稲垣さんは、現在の家に住むにあたって1日600円で食べていけると算出した。月1万8000円。家賃は想定より高かったが、もっとスキルが身につけば、半額ぐらいの住宅に住めるはずと感じている。

「これから世の中の経済はどんどん厳しくなっていくし、国の借金が膨らんで国民ひとりひとりが貧しくなっていくことも間違いない。お金も健康も失う不安に、老後、泣きながら一生を終えたくなかったら、自分の価値観を変えるしかないんです。自分で自分を惨めにしないために」

が、稲垣さんは萎縮しているわけではない。アクティブに生きている。

「自分の欲望のサイズが小さくなれば、そのぶんほかにお金を回せますよね。素敵だと思う人の店でお金を使って応援できるし、その人たちが元気になれば自分も豊かになる。

みんなは、自分の家の中だけで完璧な世界を構築しようとするけれど、街全体を自分の家だと考えたら、どれだけの豪邸に住んでいることか! 私の風呂は銭湯だし、オフィスは近所のカフェです。こんなふうに考え方を変えれば、世界は広がるし、ずっと自由になっていくんです」

■Profile

いながきえみこ
1965年愛知県生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、1987年、朝日新聞社に入社。大阪本社社会部、週刊朝日編集部、編集委員などを経て、2016年1月、退社。
「報道ステーション」「情熱大陸」などに出演して、その節電生活が話題に。著書に『魂の退社』(東洋経済新報社)『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したからこそ書けたこと。』( 朝日新聞出版)。現在「AERA」でも連載執筆中。

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(撮影/相馬ミナ)

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