変わる時代の中で“ほんとうの自分”を見直す、作家・吉本ばななの「幸福論」 [おとなスタイル]
2017年01月08日(日) 11時30分配信
一時的にお金が入ることよりも、
それで失うもの、ことを自覚する。
一つの出来事には、いいことと悪いこと、必ず半々あるんです。
父・吉本隆明さんが存命中、あることに気がついたという。
「水が有料になってそれがあたりまえになったときに、何かが変わったと言うんです。時代が変わったと」
何がお金になるか考えて、人が動くようになったこの世の中。
「一時的にお金が入ればいいのかもしれないけど、それで失うものの多さを考えたことはないのかな。代わりに取り戻せないものを失っちゃったら、よくない気がする」
変わる時代の中で、“考える土台”を持っていないと、目先のお金に流されてしまいがちだ。そんなとき、一歩引いて物事の本質に気づかせてくれるのが、ばななさんの幸福論。「どんな状況にも、物事にはいいことと悪いことが必ず半々あるもの。その中でどっちに目を向けるかの違いだけです」
今の社会、自由になるお金の少ない人も増えているけれど、「国外に行くと、お金があまりなくても当然という顔をして、幸せそうな人もよく見ます。お金がない若い人が工夫して、センスが磨かれたのがフランス人だと思う。人は考えようで幸せにも不幸にもなれます。
私にはいろんなライフスタイルの友達がいて。億万長者の友達もカツカツで暮らしている友達も、みんなに共通しているのは、たとえ収入が変わっても、その生活は変わらないということ。急に、それまでとは違う趣味にはならない。それこそがライフスタイルですよね」
“「裕福ではないが生活を楽しみ、アート寄りではあるが薄汚くはない」というゾーンに自分をはっきり位置づけたら、いろんなことがうんと楽になったと思う。”
(吉本ばなな著『小さな幸せ46こ』より)
50歳の節目に、ほんとうの自分を見直すことの大切さを、ばななさんは教えてくれた。
■Profile
よしもとばなな
1964年、東京都生まれ。’87年『キッチン』でデビュー。以降『うたかた/サンクチュアリ』『TUGUMI』『アムリタ』などで数々の文学賞を受賞。作品は30ヵ国以上で翻訳・出版されている。近著に『イヤシノウタ』(新潮社)など。『白河夜船』の映画化(若木信吾監督)も話題に。noteにてメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」を配信中。現在、夫と息子、犬2匹、猫2匹、亀、メダカたちと暮らしている。
『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(撮影/若木信吾)
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