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ドミニック・ローホー流「小さな家」で贅沢に暮らす [おとなスタイル]

2016年12月21日(水) 09時00分配信

シンプルなのに素敵な空間。

フランス人著述家で、世界中に多くのファンを持つ、ドミニック・ローホーさん。
彼女の京都の家は、たった18平米のワンルーム。
究極の「ものを持たない」暮らしは、これまでたくさんのものを選んできた経験を持つおとなだからこそ、掴み得たスタイル。

疲れない。ストレスもない。 毎日をいきいきと過ごせる。 ミニマリストは実は 一番、贅沢な生き方なのです。

昔の日本人の身軽さに憧れます。古い映画や小説の中に、男性が着物のたもとに“マイお猪口(ちょこ)”を忍ばせて居酒屋へ行くシーンが出てきて、「おぉ、かっこいい。よし、私ももっと減らそう。“マイお猪口”がひとつだけあればいい」と。土色の古備前の猪口がそれです。
自分にとって、これ以上素敵な猪口は現れないと思う。
大好きな京都の料理屋のお膳でいつも、このお猪口が待っていてくれて。
「ああ、私、このお猪口が好き」と言っていたら、ある日、お店のおかあさんがくださった。そのお店で200年使っていたそうです。

ね、これ以上のものは現れないでしょう?

「 これ以上のものはない」と思える、ひとつだけのものと暮らしましょう。 間に合わせのソファを手に入れてしまえば、 結局は、自分がその程度のものになじんでしまうことになる。

普通のワンルームマンションを、宮大工さんにリフォームしてもらった住まいです。装飾品は何もないですが、床の間に見立てた壁には掛け軸が一幅。掛け軸はみんな、人にあげてしまって、手元に残ったのがこの風景画でした。夜、ろうそくを灯して(掛け軸は蛍光灯の光で見るように作られていませんね)、お酒を呑みながら絵を眺めるのです。「あそこに住みたい」「こっち側にも住んでみたい」と、絵の中の世界に入りこんで、心を遊ばせます。掛け軸の中でならいくらでも遊べます。テレビではこうはいきません。

「小さい」「少ない」「軽い」は快適です。

ワークスペースは押し入れを改造したもの。ドールハウスのような小さなスペースが、イメージとしてありました。デスクの天板は低めにし、子供用の学習椅子に手製の布カバーをかけています。天袋は残して、毎日使う布団の収納場所に。上げ下げが大変? いいえ、まったく。愛用しているのは冬でも夏でも快適で、雲に包まれているみたいに軽い、アイスランドのアイダーダックダウンの掛け布団です。極めつけの贅沢品ですが、これはもう永遠に使えるのです。敷き布団も一般のものは重たいし、大きすぎる。

私は小柄なので、長さも幅も短いものをオーダーメイドして、最高級の軽い布団を使っています。実はミニマリストは高くつきます。

ものが少ない=貧しい暮らし、ではないのです。

なぜ、読み終わった本を持っているんですか?   これからもたくさん、読みたい本が現れるのに。

ソファの上の棚に、これから読む本を背表紙をうしろにして並べています(こうすれば目にうるさくないのです)。持っている本はこれだけ。本は1冊を持ち歩くのは重いので、バラバラにして、そのときに読む分だけを持ってカフェへ行きます。書き込みやメモもOK。自分にとって大事な箇所を小さなノートブックに書き写したり、帰宅後にパソコンに入れたら手放します。
本は「自分の中」に入ればいい。ものとして残しておく必要はないと思う。
もののない、お茶室みたいな小さな家。住んでみると、これが最高に気持ちいいんです。大きな家、大きな車……「大きいことはいいことだ」は欧米の価値観では?
日本人は昔から、小さなものに宇宙を見ていました。今もそう。小さな小さなマイクロチップを作って、日本は経済的に強くなった。

大きいより、小さい。

多いより、少ない。

重いより、軽い――を選びましょう。

価値観をチェンジすれば身軽になれる。

羽根がはえたように自由になれます。

■Profile
ドミニック・ローホー
著述家。フランスに生まれ、ソルボンヌ大学で修士号を取得。イギリス、アメリカ、日本の大学で教鞭をとる。禅の修行などを通して日本の精神文化への理解を深め、シンプルな暮らしを提案。『シンプルに生きる』(幻冬舎)、『「限りなく少なく」豊かに生きる』(講談社)など累計250万部のベストセラーを持つ。

 

『おとなスタイル』Vol.5 2016秋号より
(撮影/大河内 禎)

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