• > 五代目中村雀右衛門さんと京都でおあつらえ旅【扇子編】 [おとなスタイル]

五代目中村雀右衛門さんと京都でおあつらえ旅【扇子編】 [おとなスタイル]

2016年07月12日(火) 09時00分配信

現在進行形で息づく伝統の手わざ。

京都のメインストリート、烏丸通に建つモダンなビルに「十松屋福井」はある。創業は元禄十六年。300年以上生き続けてきた老舗が、現在と当たり前に融合しているのも京都という街である。夫妻は配り物の扇子をこちらであつらえた。
「能の扇がご専門ですが、こちらにお任せすれば間違いないとお薦めいただき、ご相談したらご快諾くださったんです」(玉緒さん)
「今は骨に用いる竹も外国製がほとんどだそうですし、煤竹も薬品で染めることが少なくないそうですが、十松屋さんは日本の一番質のいい竹を選び、きちんと燻(いぶ)していらっしゃる。長い年月のこだわりが醸し出す重みは、よそにはないもののように感じますね」(雀右衛門さん)
人間国宝であった父上(四代目雀右衛門)は“歌舞伎役者も職人”とおっしゃっていたそうである。
「我々の仕事は25日間、休みなく続きますが、それでも毎日、確実なものをお見せできなければということだったのだと思います。そういう点でも京都の職人さんには大いに触発されますね」(雀右衛門さん)

パッと目を引く色彩も美しい。

近代的なビルの扉を開けると、タイムスリップしたかのような老舗が現れる十松屋さんの店先。今回、雀右衛門さんが注文なさった扇面の絵は、日本画の重鎮・松尾敏男氏が描いた一対の雀に桜。天色の地が鮮やかで美しい。
「素晴らしい絵を損なわないようにと、熱が入りました。扇子は開閉の滑らかさと閉じたときの納まりが大切なのです。そのために地紙と扇骨をいかに調和させるか。絶えず勉強ですが、その手わざは今の若い職人にも引き継がれています」とは当代の福井藤次郎さん。

ビルの中にあるとは思えない店先。

DATA
烏丸三条・十松屋福井
当代の福井藤次郎さんで十一代目。創業以来、観世流舞扇調進所と称し、五流舞扇を業とする。現在では舞踊扇も手掛けている。能楽扇で培われた高度なわざで作られた一般のお扇子も評判が高い。
<中村芝雀改め 五代目中村雀右衛門さん プロフィール>
1955年11月20日、東京都生まれ。屋号・京屋。’64年9月歌舞伎座で七代目中村芝雀を襲名。女方として、時代物、世話物、新歌舞伎、舞踊などで数々の役を演じる。2008年、日本芸術院賞。’10年、紫綬褒章。’16年3月歌舞伎座より五代目中村雀右衛門を襲名。襲名披露公演は3月の東京・歌舞伎座に続き、6月博多座、7月大阪松竹座以降、順次行われる。妻・玉緒:和小物作家であり、押絵教室を主宰。


おとなスタイルVol.3  2016 春号
(撮影/三浦憲治)

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