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現代人が失くしかけているもの、それは“勘”なんじゃないかと思います。ふと思うこと、それも実は大切なことかもしれませんよ。私も、引っ越しを決めるときや、新しいアルバムを作るときは直感が頼り。面倒くさいことは考えない、誰かに考えてもらおう、という風潮が最近目立ちますけど。たとえば誰かが走り出したら、同じ方へ一緒に走る人いますよね。でも、そういうときにはたと立ち止まって、“自分はどうする？”って判断することが大事。そういうことの経験を繰り返すうちに、だんだん自分の直感を信じられるようになるんです。人が導き出した答えじゃない、自分の答えを生み出すこと。

ちょっとじゃなくて、よく考える。しばらくするとまた考えが変わるかもしれない。そうやって四方八方から自分の中を整理していくことが、心の風通しをよくすることだと思いますね。

ネット上に溢れる情報は、何が本当かウソかわからないですよね。結局、自分が体験して得たものだけが、自分にとっての真実なんですよね。

葉山での暮らしには、“実”があります。隣の畑の持ち主が、とれたての野菜を置いていってくれたり。地域ぐるみで野良猫の面倒を見たり。モノだけじゃなく優しさも、ぐるぐる循環している気がします。
＜大貫妙子さん　プロフィール＞
1973年山下達郎らとシュガー・ベイブを結成。’76年解散、ソロ活動を開始。著書に、2005年から2013年までの日々の暮らしを綴った『私の暮らしかた』（新潮社）など。バンドネオン奏者・小松亮太さんとのコラボアルバム「Tint」が発売中。10月からは全国ツアーも。