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歌を歌うことを仕事にしている限り、自分の身体はいちばんの資本。だから、食事には気を遣っていますね。冷たいものは飲まないとか、食べ過ぎないとか。今年62歳ですが、60代に見られることはないみたい。年齢のことを考えたことはないし、人の年齢にもあまり興味はないんです（笑）。見た目の年齢がその人の身体年齢なのではないかと思います。いつもはつらつとしている人が好きですね。
聴いてくださる方あっての仕事ですが、誰のためにと問われたら、結局は、“自分のため”っていうことになるのかもしれません。他の方に曲を提供することがあっても自分が歌うことを想定して書いているので、自分にとって納得いくまで音楽と向きあうことが、ファンの方への誠実さなのだと思って努力しています。長く支えてくださっているファンの方たちは、自分を映す鏡なんです。以前、アコースティックのライヴDVDを出したとき、ロビーにいたファンの方たちの様子が収録されていたんです。普段どういう方が聴きに来てくださっているか、身近で知ることがなかなかできないので。でもそれを見て、涙が止まらなかった……。そこに映っている方がみんな、ちゃんとした“普通の人”ばかりだったのが嬉しかったし、誇らしかった。ああ、こういう方たちに支えられてきたんだと思いました。私自身、人とつるまない人生を送ってきたせいか、コンサートに足を運んでくださるお客さまも、ステージからたずねたら、なんと一人で来た方が8割もいるんです。
集団の力というのは存在しますが、つねに点という個人に戻れるということが健全な在り方だと思っています。いつも誰かと一緒じゃないとだめとか、みんなと同じじゃないと不安、という人は私のコンサートにはきっといらっしゃらないのではないかと。やっぱり客席は自分を映す鏡だと、そこでも納得しました（笑）。

＜大貫妙子さん　プロフィール＞
1973年山下達郎らとシュガー・ベイブを結成。’76年解散、ソロ活動を開始。著書に、2005年から2013年までの日々の暮らしを綴った『私の暮らしかた』（新潮社）など。バンドネオン奏者・小松亮太さんとのコラボアルバム「Tint」が発売中。10月からは全国ツアーも。

おとなスタイルVol.1 2015秋号より