「この映画の出演が決まったときは、まわりから『おまえの芝居、厳しく見るからな!』と言われたり、逆に『もうちょっと仕事選んだほうがいいんじゃないの?』って心配されたり(笑)。だから公開後に、どんなリアクションがあるのかは気になりますね」
現在、大大ヒット中の異色ギャグ漫画を実写映画化。メタルなんて大嫌いなのに、いざステージに立つと秘められたメタルの才能を発揮してしまう23歳の純朴な青年・根岸崇一を演じるのは、現在、彼と同い年の松山ケンイチさんだ。
「根岸って、ふつうだったら、世の中に埋もれているタイプの人間だと思うんですよ。方向性ズレちゃってるし。でも演じてみると、なんかすごく魅力的なヤツなんですよね。少し次元を変えることで根岸のように主人公になれる人たちって、きっと世界中にたくさんいるんだろうなぁと思うと、不思議な気持ちになりました」
内面から外見まで、徹底して役になりきることで知られる彼。今回はマッシュルームカットで、ちょっぴりナヨナヨした雰囲気の根岸青年と、バンドの中心人物として額に“殺”の文字を描いた白塗りな上フェイスペイント&金髪ロン毛のクラウザーU世というキャラをとことん演じ分けている。
「クラウザーが大勢のファンに支持されているのは、それだけのカリスマがあるからだと思うんですよね。彼の『やるときはやる!』っていうカッコよさは出していきたいなと思って演じていました」
迫力のライヴシーンでは、ビジュアル系ロックの原点といわれるヘヴィメタルバンド“KISS”のジーン・シモンズが、特別ゲストとして出演。松山さんはステージ上で世紀の共演を果たした。
「すごい人だっていうのは聞いていたんですけど、僕はクラウザーとしてその場にいたので、やっぱり負けるわけにはいかない。すごく身構えていっちゃいましたね。そうしたら当のジーンさんは『今のカット、最高だったよ!』とか『今のお芝居いいね』とかほめてくれたりして。僕のほうが逆になごまされちゃいました(笑)」
いろんな選択肢の中からどう選択するかは大人になるために大事なこと
実は松山さん、この撮影に入る前、別の映画の撮影中に思わぬケガをしてしまい、3カ月間ほど現場を離れていたとのこと。
「ちゃんとまた、お芝居ができるのかなっていう不安はありましたね。ケガが治るまでの3カ月は、ずっと寝てました。本も読めなかったですね。今振り返ると、その時間をうまく使えばよかったなぁという気もするんですけど、そこでしっかり休んだからこそ、今こうやってふつうにできているのかなと。身体と頭を休ませる時間が必要だったのかなと思いますね」
撮影がないときは、何をしたらいいのか分からなくなる……と話す彼は、それだけ芝居と自分が演じる役に対して、愛情を感じ、のめり込んでいく役者なのだ。
「あの……すごく幸せなことなんですけど、今の僕は自分が好きなことと、仕事としてやらせてもらえることが一致してるんです。根岸と比べると、本当に幸せ者だなぁって、しみじみ思いますね」
ただ根岸クンのように、自分のやりたいものと、周囲から求められるものにギャップがあったときにどうするか――は、私たち誰もが、どこかで必ず向き合わなければいけない問題でもある。
「根岸には自分がやりたい音楽はこれだ! っていう夢があって、そこはぜったいに揺るがない。そんなふうに想いを貫けるっていうのは、不器用かもしれないけど、僕は彼がカッコいいなって思えたんですよね。僕自身はまだぜんぜん子供なんですが、いろんな選択肢の中からどう選んでいくかが、本当の大人になっていくことにつながるような気がしています」
|