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哀川翔さんに変身ヒーローをやらせた理由
『GO』、『ピンポン』、『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』、『アイデン&ティティ』、『ドラッグストア・ガール』etc、宮藤官九郎さんが脚本を手がけた映画を、ここ数年でどれほど紹介してきたことか。宮藤さんご本人を目の前にしたとたん、しみじみと感慨にふけってしまう。
最新作の『ゼブラーマン』は、『木更津キャッツアイ』でおなじみ(?)、Vシネの帝王・哀川翔さんの主演100本目。監督は哀川翔さんと長年タッグを組んできた鬼才・三池崇史さんだ。
「ドラマの『木更津〜』でお会いしたのがきっかけで、哀川翔さんとは年賀状のやりとりをしていたんですよ。そしたらある日“三池監督と主演100本目を企画中なんです”というハガキがきてビックリしました。三池監督とは何か機会があったら一緒にお仕事したいなぁと思っていましたし、しかも翔さん主演ですし、ね。スケジュール的にはきつそうだったんですけど、これはちょっとやるしかないんじゃないかと思って」
意外性が楽しみなクドカン作品の中でも今回の驚きは格別。ヤクザもののイメージが強い哀川さんが、なんとシマウマのかぶりモノのヒーローを演じちゃうのだ。
「三池監督が『変身ヒーローものにしたい』と言っていたのと、翔さんご本人がタイガーマスクや仮面ライダーが好きだっていう話を聞いていたので。それじゃ、コスプレが趣味の学校の先生が、本当にヒーローになっちゃう話がいいんじゃないかなぁと。シマウマは本当になんとなく、ふっと思い浮かんだんですよ。ゼブラ柄っていう言葉もあるし。豹じゃあ、トラとあんまり変わらないから(笑)。それにシマウマって、本来気が弱くて、敵と戦うというよりは自分の身を守るために逃げる動物。そのへんのキャラクターも、あ、なんかうまいことつながりそうだと思って。で、ゼブラーマン(笑)」
作品自体よりも役者さんがほめられると嬉しい
アイデアもさることながら、哀川翔さんが今までになく、フツーっぽくて、かわいらしく、愛すべきキャラに見えるのが新鮮。
「僕は翔さんの大ファンで、映画もいっぱい観てるんですよ。軽いのに重い、みたいな両方できるものを持っているところがすごくいいなぁと思って。で、翔さんが書いた自伝『俺、不良品。』とか哀川翔語録を読んだときに、やっぱりこの人は他の人と違う! って決定的に思ったんですよね。だから今回は、今までの映画の集大成的なものになっちゃうより、やったことのないものに挑戦してもらったほうが主演100本目にふさわしいんじゃないかなぁと」
宮藤さんが書くドラマや映画を観ていていつも感じるのは、本当にイヤな悪役とか意地の悪い人間は出てこない、ということ。物語の笑いや涙の中に
「自分たちの町にいらない人間はいない」という精神が一貫して流れている。
「うん、たとえば原作が主人公の男女ふたりが中心の話だったとしても、やっぱりそのふたり以外の人たちのこともちゃんとフォローしたい。むしろ脇役の人たちの話をふくらませて、どっちもおもしろく見せられるのがいちばんいいなぁと。主人公のために、他のキャラクターが都合よく動かされるのはちょっと……役者さんに申し訳ないって思うんですよねぇ。役者さんにはなるべく楽しい思いをして帰ってほしい(笑)。だから作品をほめられるのもうれしいんですけど、役者さんをほめられるのはもっとうれしいんですよ」
この細やかな気づかいとやさしさ。だから役者も自分の役が好きになるし、その想いが伝わって私たちも自然とそのキャラが好きになる。クドカン作品の人気ぶりはいわば当然の話、なのであった。
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