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ノリがよく、映像で遊べる映画が作りたかった 俳優としてだけでなく、アーティストとしても活躍する伊勢谷友介さんの初監督映画と聞いたときは、きっとクールなアート系映画なんだろうなあと勝手に想像していた。ところが! 完成した作品は、意外にも(?)、私たちが深く共感できる、ポップでエンターテインメントな青春映画だったのだ。 どこにでもいそうなごくフツーの若者たちの、ある一晩の出来事。彼らのとりとめもないおしゃべりに笑い、突拍子もない行動にハラハラし、観終わった後は、どんな悩みがあっても、やっぱり前向きに進んでいこうと素直に思える。 「そうですか? よかった」 インタビューの最初に感想を伝えたら、伊勢谷さんはすごくホッとした表情を見せた。 「映像を撮り始めた20歳の頃から、劇場用映画の製作はひとつの目標でした。まずテンポが速くてノリがよく、映像でいくらでも遊べる映画にしたかったんです」 才能あふれる伊勢谷さんは今回、監督、脚本、主演を手がけている。共同脚本の相手はアパレル業界で活躍し、渋谷の<PIED
PIPER>などのショップでおなじみの亀石太夏匡さんだ。映画では、伊勢谷さん演じる主人公の先輩役として出演もしている。 「知り合ってもう5年くらい。初めは遊び仲間の一人だったんですけど、彼は10代の頃から趣味で脚本を書いていたんです。それで数年前、今回のベースとなる脚本を見せてもらったことから、『ぜひ形にしてみようよ』ということになって。亀石さんって、すっごく熱くてストレートなキャラクターなんです。僕にないものを持っている人なんですよね。その違いがちょうど化学反応みたいになって、この映画につながったんです」
今が楽しければという言い訳はもったいない!
映画には、日頃明るくふるまっていても、内面には葛藤や悩みを抱えている若者たちが登場する。もちろん伊勢谷さん自身も若いのだが、客観的に見て、最近の若いコのことをどう思う? 「昔と比べると希望や目標の持ち方が違うんですよね。『ああなりたい』とか『こうやりたい』とか気軽に口に出してみるんだけど、何かしら理由をつけて自ら身を引いてしまう。『今が楽しければいい』っていう言葉にまかせて、現実を生きていこうとしている。そうさせる理由が今の社会にあると思うので、彼らだけが原因じゃないんですけど。実際、僕も世の中を斜に見ている部分があるし。でもそれって、すごくもったいないことなんですよね。何事も正面から受けとめれば、自分の次の行動を考えることができるのに……」 映画のタイトルの『カクト』は伊勢谷さんの造語で、彼が大学時代の仲間と結成したアーティストグループの名前でもある。 「カクトって、漢字では“覚人”とか“覚都”とも書くんですよ。目覚める人、目覚める都という意味で。たとえ悩みが完全に解決できなくても、自分の中の小さな変化に気づくだけでもいいと思うんです。悪くなったとしても『私、ちょっと変わったかも』と気づくことができれば、自分で改善法を見つけようとするはず。自分の力を小さなところに収めてしまわないで、もうちょっと、自分を信じてみてほしい。ひとりの人間が何か世の中を変えていくこともあるんだから」 自分のことを「世の中を斜に見ている」なんて言っている彼だけれど、話をすれば気持ちがいいほどまっすぐで、澄んだ情熱を秘めた<若者>だということが、しっかり伝わってきたのであった。 |