昔の人は五感が研ぎ澄まされていたんだと思う
ドラマでは、花形報道番組のアナウンサーや、小児科医をめざす新人ドクターなど、いろんな職業の役を演じてきた伊藤英明さんが今回初めて時代劇に挑戦した。
舞台は平安京。多くの貴族が栄華を極めた都の影には、人々の心の奥に潜む邪悪な心から生まれる鬼や怨霊、妖怪などがさまよっていた。そんな時代にあって、天皇や貴族が頼りにしていたのが、不思議な呪術を使って鬼を退治する“陰陽師”という存在である。
中でもいちばん有名な陰陽師といえば安倍晴明。伊藤さんは晴明の親友となる男、右近衛府中将の源博雅を演じている。
「最初に台本をもらったときは、“陰陽師”の読み方もわからなかったんですけど(笑)。今まで昔の衣裳をつけて芝居をしたことがなかったから、すごくプレッシャーを感じましたね。当時の人の所作や殺陣の練習に加えて、博雅は笛の名手という設定。なのに実際は僕、楽器が大の苦手で。1ヵ月くらい前から、竜笛の国宝級の演奏家の方について習いました」
晴明があらゆる呪術を駆使して闇を制するヒーローなのに対し、博雅は竜笛を美しく奏でることで人の心を癒していく。ミステリアスだけど頼りになる晴明と、純粋無垢でちょっとドジな博雅のコンビ。お互い正反対のキャラクターを持つふたりの強い絆は、見ていて何だかジーンとさせられる。
男同士の友情だけでなく、博雅が顔を見たこともない姫君へ恋心を募らせるという過程も印象的。
「一度も顔を見たこともなく、性格もわからないコにどうやって惹かれていくのかって考えると、現代人にはありえないかもしれないですよね。でも、夜の真っ暗闇の中で生きていた当時の人々は、僕たちより五感がはるかに研ぎ澄まされていたと思うんですよ。笛の音や声の調子ひとつで、相手のマインドを直観的に理解できる能力があったんじゃないかな」
休日は免許取りたてのスカイダイビングに夢中
実は伊藤さんは「歴史小説を読むのが大好き」という意外に(?)渋い一面も持っている。
「ちっちゃい頃から歴史に興味があったんですよね。人間関係がおもしろいし。特に好きなのは、戦国時代の下剋上の世界です」
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった代表的な人物ではなく、「彼らに仕えた武将たちの生き様がかっこいい」というのが、まじめで前向きな彼らしいところ。
「例えば、豊臣秀吉に仕えた石田三成のそのまた家臣に、島左近という人がいたんですね。一国の主にもなれるんだけど、義理人情に厚くて、強くて、知恵もある。すごくスマートな武将なんですよ」
熱い口調で一気にそう語ってくれた伊藤くんにとって、歴史上の憧れの武将は、そのまま彼がイメージする理想の男性像へとつながっているのかもしれない。
「せっかく役者をやっているんだから、戦国時代の武将の役をいつかぜひやってみたいですね」
多忙な日々の合間には、スポーツをおもいきり楽しむのが習慣。スキューバーダイビング、乗馬、スキー、スノーボードなど、得意スポーツがいくつもある彼だけれど、最近「スカイダイビング」という新たな種目も加わった。
「1ヵ月前に免許を取ったんですよ。周囲には、危なくない? ってよく言われるんですけど、みんなが思うほど危険なスポーツじゃない。緊張感や怖さを超えて飛んだときはドーパミンが出て、なんか悪いものがすべて抜けたような感じになるんですよね」
役者という仕事を始めて4年。めざす目標については「まだ探している段階ですね。ま、腹はくくってますけど(笑)。今あるものだけにすがることなく、新しいものにどんどん挑戦していきたい」
新作に出るたびに、今までとは違った表情を見せる。伊藤さんの今後の活躍からは目が離せない。
撮影/玉置順子 取材・文/石塚圭子
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