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来家恵美子『私は「居場所」を見つけたい』
リングネームはライカ。女性ながら、相手と拳で殴り合うボクシングの世界に身を置いた彼女。生きている価値がないとまで思った過去から、自分の居場所を見つけて輝き出した現在までを綴った本が出版された。



私は「居場所」を見つけたい
新潮社\1200+税

来家恵美子
撮影/村木司
ライバルを乗り越えて世界が見えた
 「よろしくお願いします」
 そういいながら現れたライカ選手は、本で見ていたよりもずっと気さくで人懐っこい雰囲気。少しはにかみながらの笑顔からは八重歯がのぞき、これが女子プロボクシングの選手かと思うと、少し意外な気もする。
 ヘッドギアもつけずに女同士が殴り合う女子プロボクシングは、3年前に協会が設立されて本格的に活動を始めた。すでにプロスポーツとして認知されているアメリカやヨーロッパに比べ、日本ではまだ始まったばかりの分野。その女子プロボクシングで、先日ライカ選手は初代フェザー級日本チャンピオンという、輝かしいタイトルを手にしたばかりだ。
「とりあえず肩の荷が下りたっていうか、ほっとしましたよね。周囲やマスコミから一番強いっていわれていて、そういうプレッシャーもあったし、今回本出したプレッシャーもあったし。そういういろんなもんがあって、自分自身にも自信がもてなかったから、この試合に勝って、やっとここまで力がついてきたんだなって実感することができました。もともとの目標は、世界チャンピオンだったわけだから、これでスタートラインに立てた感じ。その通過点として、日本チャンピオンは絶対に越えなきゃいけない壁でしたから」
 今回対戦した菊川未紀選手は、ライカ選手がアマチュア時代から目標としてきた相手だった。
「一回勝ってるとはいえ、一年前の試合では判定ギリギリだったんで、次やったらやばいんちゃうかなって不安でしたね、すごく。こっちはもう精いっぱいだったのに、向こうは力を残して終わってたのがわかってたから。今回の試合は、自分の中ではすっきりした戦い方ができたかな。これで世界に踏み出せる自信がついたっていうか」
 ひとつひとつ言葉を選びながら、誠実に話してくれるライカ選手。そこには、どこか日本チャンピオンとしての自信のようなものも感じられる。それはボクシングの世界をまっすぐに突き進んでいく自分に対しての自信でもある。
「試合デビューした頃、いつも練習の20%しか力を出せなかったんですね。リングの上でビビる自分がいたんですよ。それは相手にじゃなく自分自身に。でも、プロになってから、こういう試合じゃダメだって思うようになって。そんなとき、リングの上で戦うべき相手は、本当は自分自身なんじゃないかって思うようになったんです。自分自身に勝てたら、誰が相手でも勝てるんちゃうかな。リングの上の自分自身に勝つ。そういう戦い方をしていきたい」

ありのまま、そのままの自分でいこうと思う
 自分の夢に対する姿勢、それを叶えるための執念ともいうべきハングリー精神。わたしたちがライカ選手から学ぶべきことは、想像以上に大きいことを実感する。そんな彼女も、ここにたどり着くまでにさまざまな葛藤を繰り返してきた。未婚の若い母親から生まれ、3歳まで祖母のもとに預けられた。そしてその祖母が亡くなってから18歳まで施設で育つ。両親がいながら、顔を合わせるのは夏と冬の年2回のみ。しかも、その里帰りは、彼女にとってもっとも緊張する場面だったと告白する。両親のことを書くことに対しては、抵抗もあったという。
「両親のことは思い出したくもなかったから、無理やり思い出したって感じ。いちおう事実やし、やっぱ話さなあかんのかなって。以前は隠してたこともありましたけど、もうここまでさらけ出したら一緒か、って開き直った部分もありましたね。今はもう、どうでもいいっていうか、ありのまま、そのままの自分でいこうっていう気持ちです」
 自分の境遇を嘆くでもなく、それを受け入れながら淡々と語るその姿は潔く、そしてカッコいい。それは進むべき道を自分で模索し、努力してつかんだ人だけが放つオーラのようなものでもある。
 世界チャンピオンという目標を見つけてから、頭の中にはつねにボクシングのことだけだったライカ選手の3年半。ここへきてようやく心からの休息を得たという。
「日曜日は休みなんですけど、頭の中はボクシングばっかり。けど、本当にこの何週間かは、いままで張りつめていたものから解放されて、やっと力がぬけた。しばらくボクシングはいいや、って初めて思ったな(笑)」
 ほんのつかの間の休息を終え、ライカ選手は次の目標へと向かう。彼女の夢はまだ始まったばかり。


構成/望月リサ

1976年1月24日、京都府生まれ。18歳まで児童養護施設で育ち、高校卒業後は働きながら短大へ進学。その後、歯科衛生士のかたわらボクシングを始め、’00年にプロ入りを決意し上京、今に至る。

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