まだ一部の人しか携帯電話を持っていなかった頃のこと。当時、私が通
学で利用していた列車は、全席指定のちょっとリッチ感のある電車でした。その日も降りる駅までノンストップの30分を何に使おうか、などと考えながらうとうとと眠ってしまったのが、そもそもの悪夢の始まり。しばらくすると「ピピピピ・ピピピピ」と心地よい眠りの中で聞き慣れた電子音が。これは妹の部屋の目覚まし時計の音。いつもつけっぱなしなんだから……。「ピピピ……」まだ消えない。もう、人がせっかく気持ちよく眠っているのに! 今日はキレた! 「T子! うるさいよっ。いい加減目覚まし切って!!」……
と怒鳴った自分の声の大きさで目が覚めました。ハッと周囲を見ると、必至に携帯電話をごそごそ探している企業戦士のおじさんが、申し訳なさそうに「すみません」と小声で一言。周りからはクスクスと笑い声が……。私は顔から火が出そうになりながら「こちらこそすみません。目覚ましの音と同じだったので……」と声細に謝りました。できることなら電車から飛び降りてしまいたい。でも超快速特急の全席指定電車。車両を替えることもできず、小さくなって揺られていたのを昨日のことのように思い出します。
(神奈川県・市原祐子・30歳)
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